物語考察用キャラクターシート

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1=A+C【誰の役に立ちたいか】

2=B+D【誰に支えられているか】

3=B+C【嬉しかった想い出】

4=A+D【傷ついた出来事】


A=1+4【がんばっていること】

B=2+3【任せてほしいこと】

C=1+3【よく気がつくこと】

D=2+4【恥ずかしいこと】


α=1+2+3+4【守りたいもの】

β=A+B+C+D【変わるべきこと】

γ=α+β+1+A【なりたい自分】

目的

 このキャラクターシートは、主要登場人物の描写のされかたを拾い上げていくことによって、物語全体のテーマを考察する目的でつくったものです。物語をより深く読み込むことによって、面白い作品をもっと味わいつくしましょう。
 実は2、3年くらい前に一瞬だけ公開したことがあり、そのときはなんとなく恥ずかしくなってすぐ引っ込めたのですが、その後も感想記事を書くにあたって裏ではずっと使用しつづけ、バージョンアップを繰り返してきました。
 このキャラクターシートでは相互に関連しあう8項目について適当だと思う描写を劇中から拾っていき、さらにそれらを組み合わせて3項目を考察していくことで、最終的にそのキャラクターがどういう意味を与えられて物語上に配置されているのかを検討します。

 物語というものは人と人との関わりあいのなかに紡がれるものです。従って、登場するキャラクターたちの心の動きを中心に考察することによって、物語のテーマが見えてきます。
 特に読者(視聴者)と視点をともにする主人公キャラクターは重要です。主人公が何を見て、何を感じ、何を考えるのか。そこに、物語にとって一番重要な(面白い)部分を見出すことができます。それが物語のテーマと呼ばれるものだと私は考えます。

 なお、ここでいう“物語のテーマ”とは、必ずしも制作者の意図そのものとは限りません。
 私たちには制作者の頭のなかを直接覗いて見ることができないからです。そこを考察することに意味はありません。そもそも必ずしも製作者が私たちにお説教じみたメッセージを伝えるつもりで物語を描いていたとは限りませんしね。(※ それでも創作活動である以上、物語には製作者の経験してきたこと、人生観、思想などの一端が必ず表れるものですが)
 極端な話、多少製作者の意図から外れていようと、読者(視聴者)が物語から何かしらのかけがえのないものを感じとることができたらそれでいいとすら、私は考えています。私たちは製作者の頭のなかに踏み込むため物語を読むのではなく、あくまで物語自体を楽しむために物語を読むのですから。
 もっとも、極端に製作者と考えかたが合わないとかでもない限り、しっかり考察すればそうそう大きく製作者にとってのテーマ性から乖離することはないと思いますが。

 なんにせよ、物語をより楽しむために考察しましょう。

↓具体的な考察例は以下の記事にて↓

適用可能範囲

 フィクションの物語の登場人物のうち、特に主要なキャラクター。
 ただし、ある程度キャラクター像を細かく掘り下げられている必要があります。

 端役に適用しようとしても、表を埋めきれなかったり、物語テーマから逸れた面白くない考察結果になってしまいがちなのでオススメしません。
 作品テーマの考察までやる前提のキャラクターシートなので、適用出来る範囲は割と狭めです。

 例として、プリキュアシリーズであればプリキュアメンバーと、まれに妖精や協力者の一部が該当します。意外と敵幹部を考察するのには役立ちません。(※ 敵幹部はあくまでプリキュアと思想対立する存在というだけであって、どうも個別のキャラクター造形は物語テーマに絡んでこないようなんです)
 だいたい12話くらいまでに最低限の情報が出揃います。ただし、最終回まで適宜情報更新していく必要があります。

 深夜アニメの場合は物語様式によりますが、ボーイ・ミーツ・ガールなら主人公とヒロイン、バトルものなら主人公とライバル、群像劇なら特に中心的な活躍をする人物たちが該当します。
 1クールアニメでもまともに情報が出揃うのが第6話とか第8話とか中盤以降になりがちなので、のんびり気長に作業してください。

 長期連載マンガだとなかなか扱いが難しいのですが、物語全体を考察するときは主人公+絶対に外せない重要キャラクター2~3人に限定したほうがいいと思います。
 マンガの場合、長期連載になると連載時期ごとに作品テーマ自体がダイナミックに変遷しがちなので、もしかしたら「○○編」などある程度期間を区切って考察したほうがいいかもしれません。

 小説なら人物描写が細かいので割と広い範囲のキャラクターに適用できます。
 ただ、候補選びがものすごく大変なので付箋必須ですね。

 実在の芸能人やバーチャルYouTuberなどには使わないでください。
 表を埋めるだけなら割とそれっぽく埋めることもできちゃうのですが、根本的な話、彼らは物語上の必然性があって存在しているわけではないので、あんまり筋道通った考察ができないんです。
 人間の人生は数えきれないほど多くの物語の文脈が複雑に絡みあって構成されているようなものと考えてください。これが物語のキャラクターなら好きな食べものひとつとっても人間性の根幹に直結する重要な要素であることが少なくないんですが、生身の人間だとそんなのめったにないわけで。そういうことです。

使いかた

上段、中段

 まず、上段と中段それぞれのキーワードにふさわしい劇中描写をひとつずつ拾い上げていってください。
 私の場合は自分のブログに重要そうなセリフをたくさん書き出してあるのでこれを使っていますが、いちいちこんな面倒なことをしなくても「こういうことにこだわるキャラだよなあ」「こういうときカッコいいキャラだよなあ」みたいなざっくりした拾いかたで大丈夫だと思います。

1=A+C【誰の役に立ちたいか】
2=B+D【誰に支えられているか】
3=B+C【嬉しかった想い出】
4=A+D【傷ついた出来事】

 上段はそのキャラクターが自分の外側にあるものをどう見ているかです。どういうとき人と関わることになるのか、どういう出来事に心揺さぶられるのか。

A=1+4【がんばっていること】
B=2+3【任せてほしいこと】
C=1+3【よく気がつくこと】
D=2+4【恥ずかしいこと】

 中段はそのキャラクターの内面がどういうありかたになっているかです。どういうことにこだわりを持っているのか、どういうことが得意なのか、あるいは苦手なのか。

1=A+C【誰の役に立ちたいか】

 各項目の左側に付記されている数字やアルファベットを見て、関連する項目同士に何かしらの関連性を感じられるように表を埋めていってください。
 例えば1=A+C【誰の役に立ちたいか】であれば、Aの【がんばっていること】Cの【よく気がつくこと】の2つと相互に関連します。
 どうしても関連性が見いだせない箇所がある場合は、いずれかの要素がそのキャラクターの劇中の活躍においてそこまで重要なものになっていないという意味です。少し考え直してみましょう。

 参考までに、以下に私が想定した要素間の関連性を示すキーワードを列挙しておきます。必ずしもこれに準拠する必要はありませんが、どうしても要素が見つからないときのヒントとして使ってみてください。

1-A【信条】
1-C【世界観】
2-B【コネクション】
2-D【絆を求める理由】
3-B【諦めたくない理由】
3-C【成功体験】
4-A【強迫観念】
4-D【トラウマ】

下段

α=1+2+3+4【守りたいもの】
β=A+B+C+D【変わるべきこと】
γ=α+β+1+A【なりたい自分】

 下段はそのキャラクターの物語上の立ち位置です。こういうキャラクターとして物語に登場しなければならなかった必然性と言ってしまってもいいかもしれません。
 これを考えるために上段と中段を書き出しました。

 【守りたいもの】は、物語全編通じてそのキャラクターらしさを最も象徴するものになるでしょう。もしこれが失われるとそのキャラクターは精神的に不安定になるはずです。
 例えばプリキュアシリーズの場合、大抵はこれが初変身するきっかけになります。
 何かを守るにしろ奪われるにしろ、それは周りにいる人々や世界との関係性のなかで発生する重大な事件になるので、シート上段全てに関連します。

 【変わるべきこと】は、そのキャラクターが成長していく方向性となるでしょう。多くは宿敵や挫折というかたちでそのキャラクターの価値観を揺さぶってきます。
 プリキュアシリーズの場合、当番回全てに何かしらのかたちで関わってきます。また、新幹部登場以外でバトルに敗北する展開があれば、ほぼ間違いなくプリキュアメンバーの誰かがこれを達成できずにいることが原因です。
 物語においてキャラクターの成長は劇的な価値観の変化として描かれるものなので、こちらはシート中段全てに関連します。

 【なりたい自分】は、そのキャラクターが物語を通して最終的に成長するべき理想像です。物語ごとに実現されるか実現されないかは様々ですが、実現できた場合、そのキャラクターは満足そうな笑顔で物語を終えられるでしょう。
 プリキュアシリーズの場合は割と初期から本人が自己申告していることが多いのですが、そんな彼女たち自身はまだまだぼんやりと夢見ている段階です。彼女たちがどんな理想を胸に抱いているのか正確に読み解くためには、「どうしてそうなりたいのか」に注目しながら夢の本質を見定める必要があります。
 過去と現在と未来には常に相関性があります。過去に得た大切な【守りたいもの】と、今まさに【変わるべきこと】の両方を踏まえて、はじめて未来に目指すべき【なりたい自分】が見えてきます。そのキャラクターの自他に対する基本的な考えかたである【誰の役に立ちたいか】【がんばっていること】を改めて振り返ってみることも大きなヒントとして役立つと思います。

 特に主人公の場合において、【守りたいもの】とは物語を通じて描き出される、大きな価値があるもののことです。
 【変わるべきこと】は、その価値あるものを大切にするために必要になるであろう精神性。
 そして【なりたい自分】は、価値あるものに出会って自分も価値ある存在になれた場合の、希望に満ちた理想像です。

 最後に、これら3つが物語全体を通してどのように描かれていたかを改めて考えてみてください。これは“主人公の物語”という他人事を“自分の読書(視聴)体験”という自分事に置き換えるための作業でもあります。
 きっとそこに込められていたテーマ――、すなわち、キラキラしていて、ワクワクできて、愛おしくてたまらなくなる、その物語ならではの普遍的な価値を見いだせるようになると思います。

 あなたの大好きな物語をもっと好きになるためのヒントになれたらいいなと思っています。

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