HUGっと!プリキュア 第1話感想 フレフレ私! フレフレみんな!

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ここで逃げたらカッコ悪い。そんなの、私のなりたい“野乃はな”じゃない!

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(主観的)あらすじ

 野乃はなは大人っぽいイケてるお姉さんに憧れる元気いっぱいの中学二年生! フレフレ私! 前髪を切りすぎても転校デビューに遅刻しちゃっても、未来キラキラ! 元気パワフル! がんばれがんばれオー!
 そんなはなの前向きさに惹かれたのか、夜空から不思議な赤ちゃん・はぐたんが飛び込んできました。はぐたんはとっても温かくてとっても可愛いかったけれど、けれどはながこれからどうやって面倒を見たものかと不安に思うと、とたんにどこかにいなくなってしまうのでした。
 はなが次にはぐたんと再会したのは、みんなの未来を奪おうとするクライアス社の怪物・オシマイダーが暴れる学校の校庭。そこではぐたんは勇敢にもひとりで怪物に立ち向かっていたのでした。はなは怪物の恐ろしさに足をすくませながらも、そんなことでは理想の自分になれないと勇気をふりしぼり、身を挺してはぐたんを守ります。
 そのときです。イケてる未来を目指すはなのハートからミライクリスタルが生まれ、はなは元気のプリキュア・キュアエールに変身するのでした。いっくよー! なんでもできる! なんでもなれる! はぎゅーっと輝く未来を抱きしめて、新しいプリキュアがはじまります!

 開始1分で好感度MAX! せっかく転校デビューに向けて前髪を伸ばしていたのに自分で切って失敗するわ、そもそも遅刻しかけているわ、このダメっ子感ときたら! それでもフレフレ元気! ただでさえこんななのに、前作でも宇佐美いちかの言動を全力で不穏に仕立てていた坪田文さんの筆が乗るんですから、もうムテキですよね。えっさ、ほいさ。めちょっく!
 久しぶりに初回から他のプリキュア候補とガッツリ絡んでいきましたが、これが物語の導入として素晴らしい効果を上げていますね。はなのステキな魅力が内側から外側から、両面の視点でこれでもかとたっぷり描かれています。主人公の“らしさ”は、ひいてはそれが物語全体のテーマにもつながるわけでして。
 なんでもできる! なんでもなれる! 輝く未来をつくるため前向きにがんばるパワフルさがはなの魅力です。前髪を切ったらいつもより空が高く見える。朝の光がいつもよりいっぱい瞳に飛び込んでくる。明日を信じてフレフレ! 野乃はな!
 ・・・ところで、あの・・・ケロちゃん・・・?

フレフレ私! がんばれがんばれ私!

 冒頭、はなの部屋に生けてあった花をガーベラといいます。花言葉は「希望」「常に前進」。オレンジ色にはさらに「冒険心」という花言葉も託されています。
 鏡にデザインとしてあしらわれているのはクモマグサでしょうか? こちらの花言葉は「活力」「自信」。
 ・・・ああ、また毎週感想を書く前にアレでもないコレでもないと草花を画像検索する日々がやって来た! (そのボヤキはどうでもいい)

 そんなステキな花言葉に囲まれて颯爽登場した今年の主人公は・・・そんな花言葉がぴったり似合いの、とびきりアホの子でした。
 「バイバイ、子どもっぽいはな。大人っぽいイケてるお姉さんに――、へんしーん!」
 この時点で「オマエにゃムリだ」と言ってやりたい。すっごい言ってやりたい。きっと世界中76億人が同じことを思ったはずです。先走るな。気づけ。もっと似合いの髪型があるはずだ。ちゃんと床に敷物を敷いてあるのは評価するけど、なんでオマエわざわざ制服に着替えてから髪切ろうとしてんの。・・・ああ、制服とのバランスを見たいのね、たぶんだけど。まったくこのアホっ子ったら。
 きっと世界中みんながこの愛らしいアホっ子の未来を祈りました。一部は自ら行動を起こしました。工作ばさみさんと朝の日差しさんです。陽光を反射して眩しく輝くはさみは・・・はなの前髪を切りすぎました。
 光降りそそぐ新しい朝へようこそ、野乃はな。私たちは未来へ臨むあなたの瞳を祝福します。
 爽やかな朝のそよ風さんが“イケてるお姉さん”へのページをそっと閉ざしました。そっちはいつか、またあとで。なんでもなれる、なんでもできる。いつかはね。

 女の子として割とクリティカルにやらかしちゃったはずですが、我らがはなさんってば意外とへこたれません。オムレツ(と見せかけてオムライス)食べれば早くも元気りんりんです。さすがは「元気だけが取り柄のお茶目なはな」
 私はこの子のこういうところを非常に好ましく思います。

 「フレフレ私! がんばれがんばれ私!」
 キュアエールとなる彼女のYellは、まずは自分に向けられます。
 この物語は未来志向です。なりたい理想があって、そのために日々がんばっています。その意味ではGo!プリンセスプリキュアに近いかも。
 けれどその一方で、この物語の視点はむしろ現在に向けられています。“どんな未来を夢見るか”ではなく、“未来のために何をするか”が焦点となっています。その意味では魔法つかいプリキュア!に似てるかも。
 そして具体的に何をキーとしているのかといえば、自分に向けたエールです。何よりも優先してポジティブな思いが自分を強くしていくのはキラキラプリキュアアラモードの要素ですね。

 「ばっちり自己紹介キメちゃうんだから! ――『野乃はなです。よろしくお願いします。(キリリッ)』 みんなはなちゃんの登場に話題騒然、大人気! フレフレ私! がんばれがんばれオー!」
 「前髪は失敗するし、自己紹介も失敗するし、大人デビュー大失敗。でも負けない! フレフレ私!」

 はなの元気っ子ダメっ子アホの子っぷりは、たくさんのプリキュアたちが築いてきた土台の上に立っています。
 HUGっと!プリキュア。今年もまた新しいプリキュアの物語が幕を開けました。
 何この主人公。最初っからやたらプリキュア性高い。

その前髪、イケてる。

 イケてる未来の自分を思い描き、いつも自分が前を向くため自分をフレフレしているはなのあり方は、ぶっちゃけメチャクチャ自己完結的です。
 今のところはなの視点は常に自分に向けられていて、お母さんを応援したりお婆さんを助けたりする善人性以外では誰かのためを思って働きかけるということをしていません。
 けれど、そんな彼女の行動原理とは関係なく、そんな彼女のあるがままのふるまいに心動かされる人たちがいます。

 「野乃さんってステキだね。自己紹介のとき転んでもすぐ立ち上がって、夢話して、カッコいいなって思ったよ」
 劇中ではまだ語られていませんが、公式サイトによると薬師寺さあやは目指すべき夢に迷いを感じている子のようです。
 そんな彼女からすると、何があってもへこたれずに「イケてるお姉さんになりたい!」と言い放つ、はなのそんなまっすぐさは憧れを覚えるものでしょう。

 「その前髪、イケてる。よく似合ってんじゃん」
 劇中ではまだ語られていませんが、公式サイトによると輝木ほまれは夢破れて挫けている子のようです。
 そんな彼女からすると、キラキラ輝く瞳に似合いの極端に短い前髪をした、はなのいかにも前向きそうな雰囲気は眩しく見えるものでしょう。

 はながただ自分らしくあるだけで、たったそれだけで彼女を好ましく思う人たちがいます。
 キラキラプリキュアアラモードのプリキュアたちがそうであったように、自分に素直に、自分“らしく”あるというのは、本当はとても難しいことですから。

 はぐたんとハリハム・ハリーも、おそらくはそういうはなの“らしさ”に惹かれたひとり。
 「これはお前の未来のためやで!」
 とかなんとかワケワカンナイことを理由に居着こうとした彼らでしたが、はなの困った様子を見て早々に見限ります。
 ・・・いやホントはえーよ。一言だけハリーさんにツッコミ入れさせてください。よし。満足。

 「全然わかんない。てか突然すぎるよ。いきなり赤ちゃん。なんで?」
 突然の事態にどうしたものかと途方に暮れる。そういうのは未来志向じゃありません。自らの手でイケてる未来をつくっていこうという気概が感じられません。未来をつくる力・アスパワワの担い手として明らかに不適切です。だからはぐたんは泣きだしてしまいます。

 「でも、ウチに住むのは・・・」
 ネガティブな思いに囚われて建設的な思考を止めてしまう。そういうのは未来志向じゃありません。自らの手でイケてる未来をつくっていこうという気概が感じられません。未来をつくる力・アスパワワの担い手として明らかに不適切です。だからハリーは「違ったか」と言い残してはなの家を去ってしまいます。

 ・・・いや、さすがにここで後先考えずに彼らを受け入れるのは、ドキドキ!プリキュアの相田マナくらいの無茶無謀がなければ不可能だと思いますけどね。(二言目)
 けれど事実として、このときのはなは、さあやの憧れたまっすぐさ、ほまれの目を惹いた前向きさがどこかに引っ込んでしまっていました。
 そんなの、はな“らしく”ない。身勝手な話なのは重々承知ですが、今話全編を通じてこのときだけ、はなは私たちの期待するはな“らしく”ありませんでした。

 きっとはぐたんとハリーは、どんなときでもへこたれずにイケてる未来を臨む、はなの“らしさ”を期待して彼女を頼ったんだと思います。そこには自分の手で未来をつくっていこうとする、力強い未来志向があったから。
 重ね重ね身勝手な話ではありますが、もしはながみんなを応援していく「元気のプリキュア」であろうと願うのなら、彼女はまず、どんなときでもまっすぐ前向き、彼女“らしく”あり続けなければなりません。それが何よりも周りのみんなに勇気を与えてくれるからです。

 これはキラキラプリキュアアラモードが到達した答えの応用です。
 宇佐美いちかたちの「大好き」が、誰の都合に合わせずともみんなの「大好き」と響きあったように。
 はなの“らしさ”は、はなの意図とは関係なしに、ただそれだけでみんなに元気をくれるステキなものです。

 こういう、誰もから“らしさ”を期待される存在のことを何と呼ぶか、あなたは知っているでしょうか?
 客観的な定義は知ったこっちゃないですが、たとえば私ならこう呼びます。

 “ヒーロー”。
 私が世界で一番嫌いな存在です。

フレフレ私! = フレフレみんな!

 キュアエールの頭を飾っている花の名前はマーガレットといいます。第1話放送前まではカモミールと迷っていたのですが、オープニングでピンク色の多重花弁も映っていることを考えると、やはりマーガレットの方でしょう。花言葉は「真実の愛」「心に秘めた愛」「信頼」。

 「フレフレ私・・・。どかない! 絶対にどかない!」
 自己愛と他者愛は連続します。
 自分の夢を大切にすることと、命がけで誰かを守ることは、矛盾しません。
 なぜなら野乃はながそう定義したからです。
 「ここで逃げたらカッコ悪い。そんなの、私のなりたい“野乃はな”じゃない!」
 目の前にガレキを飛ばされてすくむ足。命の危機をまざまざと突きつけられて、それでもすくむ足を奮い立たせたものは、はなの“らしさ”でした。
 イケてる夢。目指す思い。がんばる私。きっとなれる私。フレフレ。
 “らしさ”がさあやに憧れを抱かせたように。
 “らしさ”がほまれを眩しく照らしたように。
 はなの“らしさ”が、はな自身にも勇気をくれました。

 “らしさ”を期待され、その“らしさ”によって私たちに勇気を与えてくれる存在を、私はヒーローと呼びます。
 はなはイケてる夢、理想の自分にヒーロー性を見いだしました。
 夢に向かってまっすぐ前向きなはなにはそれが可能でした。

 私はヒーローというものが大嫌いです。
 現実として、生身の人間が誰かの理想どおりの“らしさ”を維持しつづけることは不可能だから。
 どんなに高潔なスポーツ選手であっても、プライベートでまで生涯にわたってスポーツマンシップを発揮しつづけられる人はまずいません。
 どんなに優秀な政治家であっても、あらゆる未来の可能性を想定して確実に達成できるマニフェストを組むことは不可能です。
 私は現実に存在する人物にヒーロー性を見出す行為が嫌いです。それは絶対にいつかどこかで綻びを生じさせ、私たちの心に失望を生んでしまうからです。その身勝手な心の動きが大嫌いなんです。
 はぐたんとハリーがはなに勝手に期待し、勝手に失望していったのも、きっとはなが生身の存在だったから。

 けれど、はなは違いました。
 彼女のヒーローは理想の自分。非実在の存在でした。
 であるならば、もしかしたらはなはヒーローになれるのかもしれません。
 Go!プリンセスプリキュアの春野はるかが、永遠に叶わない夢を抱くことで永遠の努力を行う力を得たように。
 はなは理想の自分に憧れつづけるかぎり、そのために彼女はいつでも自分にフレフレして、結果としてみんなにもフレフレしつづけることができるかもしれません。

 「めっちゃイケてる!」
 「はぎゅ!」
 「いったれー! キュアエール!」

 いつもよりちょっぴり大人びたプリキュア姿は、はなの憧れていたイケてる大人のお姉さん像そのものです。
 変身したはなは強くなれるし、みんなの瞳を輝かせることもできます。
 キュアエールのYellは、まずは自分に向けられます。それはとてもステキなことです。
 だって「フレフレ私!」とはすなわち「フレフレみんな!」と同じ意味なんですから。
 自己愛と他者愛は連続します。
 自分の夢を大切にすることと、命がけで誰かを守ることは、矛盾しません。
 なぜなら現実の野乃はなにとって、理想の野乃はなとはそういう存在だからです。

 「『叶えたい』より『叶える』私なんだ!」(OP)
 魔法つかいプリキュア!の朝日奈みらいは、特別な魔法の言葉などではなく、大切な友達との再会を望む素直な言葉によって奇跡の魔法を顕現させました。
 新しいプリキュア・野乃はなは、みんなを守れる理想の自分となる未来をつくるために、自分をフレフレしてプリキュアに変身します。

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