オッドタクシー 第6話感想 みんなお互いにひとりで気持ちよくなってる。

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今日のその収録のあとは? ほな明日は? 明後日は? 明明後日は? やの明後日は? ごの明後日は?

――打ち上げあんねん。――一日拘束のロケ。――朝からドラマ撮影。――地方ロケ。――特番収録。――海外ロケ。

「なんでやねんが聞きたいよ」

気になったポイント

高額当選くじ

 換金するときその後の身の振りかたについてアドバイスをもらえるそうなので、さっさと窓口に持って行ったほうが身のためなんじゃなかろうか。まあパンフレットをくれる程度とも聞くけれど。

田中襲撃

 自宅を突き止めているにも関わらずわざわざキャバクラで仕掛けるあたり、ヒーロー願望が抜けていない。いわゆる劇場型犯罪。未だに彼は自分がドードーのつもりでいる。小戸川への恨み以上に、世間への妬み憎しみを発散したがっているのだろう。

タクシー破り

 発信器代わりのスマホを回収したものと思われる。
 ちなみに、調べてみたところ今どきのドライブレコーダーは駐車中もイベント録画できるらしい。というかコインパーキングならそもそも普通に監視カメラがあるはず。果たして田中は車上荒らししているときもあの悪目立ちする仮面を被っていただろうか?

白川・ザ・ストーカー

 小戸川が自宅に入れるのを拒んでいるということは、本人から直接住所を聞いたわけではないと思われる。情報源は患者リストか。

患者リスト横流し

 ドブが小戸川の名前に目を留める→白川が彼がタクシードライバーだという情報を話す、の流れなので、ドブの目的は銀行強盗のための足ではない。ドブは以前から小戸川を知っていた。

300万円の借金

 額面からして十中八九奨学金。よしんばそうじゃなかったとしても、こっちの借金を積んだまま先に奨学金だけ完済する合理的理由なんて無い。
 つまり、白川は金に困っていたのではなく、ドブに借金することそのものが目的だったと思われる。

ホモサピエンスのラジオ

 売れっ子になっただけあって馬場のトークに余裕が感じられるようになった。世論を味方につけると人はお手軽に強くなる。

金銭感覚ブッ壊れた柿花

 むしろこの小料理屋はなんで尾頭付きのお造りなんてものホイホイ出せるんだ。

「この世の罪が全部俺のせいにされてる気がしてなあ」

 正解。ネットリンチは後続を出さないための見せしめという大義名分で行われるものであり、たくさんの人がそれぞれの意図で多方面を巻き込もうとするせいで、ろくな検証もなしにあらゆる疑惑が一極集中しがち。悪人に罰を与えること自体が重要なのではない。これが罪であると(まるでついでであるかのように)世間へ訴えかけることこそが彼らの本懐。

ハロウィン仮装計画

 田中が接触してくる前にインターネット正義マンに囲まれるだけでは? 彼らにとっては拳銃男=ドブなわけで、実質変装にもならないわけだし。

「そっか。じゃあ調整するんで。ちょっとだけ」

 来年はお休みいっぱいもらえるね!

自慰

 「私はたしかにドブさんと付きあってた。4年くらい。逆らえなかったの」

 ひっでえ女もいたものです。

 「・・・どういうこと? 『俺に関わるな』って」

 仮にも好意を抱いている男性がマイカーに大穴開けて帰ってきたのを見たうえで、第一声がそれ?

 「車、どうしたの? 車上荒らし?」

 もしかして見えていなかったのかなと思いきや、もちろんしっかり見ていました。
 で、ケガとか心配しないの?

 「早く直さないとアレになっちゃうよ。ほら、アレ。壊れたものを放置したら余計壊されるみたいな」
 「割れ窓理論?」
 「そうそう。割れ窓理論。心だってそうなんだからね」

 あげく、アドバイスのフリして糾弾してみせる。徹頭徹尾自分の心配しかしていない女。
 どうやら「俺に関わるな」以前からアルパカさんの心は壊れていたようです。知っていたけど。どうせ本人はそう思っているんだろうなって。

 「もう知ってんだよ。相手の出かた次第ではまだ挽回可能かもって考えてる今のお前の態度も鬱陶しい」
 「待って」
 「正直ほんの少し、いや、かなり浮かれてたよ。そんな自分が恥ずかしくてしょうがない」
 「お願い」
 「女を出すな、卑怯者。お前のせいで剛力は――」
 「わかった。全部話すから。小戸川さんはどこまで知ってるか話さなくていい」

 殊勝なように見えて、実際は会話の主導権を握るために相手の発言を封じたかっただけ。
 言葉の暴力で傷つけられたくないから優位に立っておきたかっただけ。

 だから、直後に継ぐ言葉も相手の度肝を抜くとっておきの核爆弾。
 他にパートナーがいた。精神的童貞のオッサンならこの一言だけでもれなく打ちのめされる。自分はやっぱり恋愛弱者だったんだって勝手に身の程を思い出してくれる。

 「待って。お願い。わかったから。ドブさんに大金を借りて、それを少しずつ返してたから逆らえなくて」

 まったく。蓄膿症の鼻水よりも汚らしい涙。

 きっとその涙にウソはないんでしょう。本心から悲しんで、本心から反省して、本心から小戸川に縋りつきたいと思っているんでしょう。
 好意を持たれていたはずの人に嫌われるのって、傷つきますもんね。

 今話は縋る物語。
 自分が汚れていることを自覚している人々が、自分よりも清らかな誰かに救いを求める物語です。

 「かわいそうな私」を演じつづける白川は、清廉な小戸川に。
 劣等感の塊で大人の卑しさ全部盛りな柿花は、少女のような市村に。
 後ろめたさにつけ込んでくる理不尽に追い詰められたドブは、理不尽を屁とも思わない小戸川に。
 向上心が強すぎて同僚にすら敬遠される二階堂は、そもそも競争相手になりえない馬場に。
 売れっ子になって大衆に迎合することしか言えなくなった馬場は、あくまで我流を貫く柴崎に。
 不器用すぎて夢を叶えられずにいる柴崎は、誰からも愛され喝采を浴びる馬場に。
 そして小戸川も、結局のところ自分と鏡写しの影を持つ白川への未練を断てずにいます。

 共依存ですらない。
 一方的な依存。
 自慰。

 「いつも何かを探していたように思う。それと同時に、いつも何か満たされない人生だった。その何かを死に物狂いで手に入れて、得られるものは一瞬の快楽だ。それは幸運とはほど遠い、ただドーパミンが放出されるだけの一瞬の快楽」(第4話)

 自慰には、清潔なティッシュが必要ですね。

 別にそれで人生が豊かになるわけでもないけれど。

 「ちなみにドブへの借金はいくら残ってるの」
 「300万」
 「4年もいてまだそんなに?」
 「利息があったから、元本が全然減らなくて」
 「そんな暴利なら余所で借りたほうがマシだったろう。犯罪の片棒まで担いで」
 「殴られるから。あの人、本当は弱い人だから放っとけなかったし」

 そうね。弱い人でしょうとも。
 強かな白川に比べたら、大抵の人はきっと、ずいぶん弱い。

 「あんたは何か後悔してるのか?」
 「看護学校行くのに奨学金借りたことかな」
 「なんで後悔?」
 「あのころは意地張って親に頼りたくなかったけど、頼ってみればよかったなあって」
 「まだ返せてないのか?」
 「ううん。返せた」
(第2話)

 だから彼女は返さなかったんです。

 「――もうひとつだけ条件を追加させてくれ」
 「なんだ?」
 「白川さんを解放してくれ。借金をチャラにしてくれ」
 「・・・わかった。約束する」

 小戸川。たぶんですけど、それは間違っていると思いますよ。
 彼女の心を本気で手に入れたいのなら、借金をチャラにするのではなく、むしろ債権を買い取るべきでした。ドブの代わりに彼女を金で縛ってあげるべきでした。
 まあ、絶対しんどいと思いますけどね。他人様の自慰に巻き込まれるのって。

 “人”という字は明らかに片方が楽をしています。
 楽をしているのは、見るからに大きくて強そうなほう。

 もっとも、小戸川たちは今のところまだ“人”ではないように見えるけれども。

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