オッドタクシー 第10話感想 小戸川の誤算について。

この記事は約9分で読めます。
スポンサーリンク

それどこに需要がある?誰が見てる? 金になる? 一体何を背負ってるの?

「俺たちに明日はない」

気になったポイント

馬場は漫才をやる気がない

 あの人、芝垣の才能に惚れているだけであって、自分のお笑いセンスは全然信じてないから・・・。
 それにしても長嶋といい、モテモテだな芝垣。

今井の宝くじ画像

 私でももうちょいきれいに加工できるわ! 謎の汚れ(ノイズ?)とか数字の角度くらい整えろ!
 もっとも、現実の宝くじ券は偽造防止としてバックに幾何学模様が入っているので難しいだろうけれど。私ならテキトーにもう1枚くじ券買ってきて番号欄丸ごと合成するかな?

工事現場での凶行

 白川が居合わせたのは・・・? 山本マネージャーがミステリーキッス抜きで小戸川を呼んだ時点で交渉目的=人気のないところに向かうことまでは想定できるが、それを白川がどうやって知ったのかがよくわからない。(※ 重要な話ではないのでたぶん劇中で説明もされない)
 それにしても小戸川。もう少し生きようとする気概を見せろ。拘束が解けた時点でタクシーから出ろ。意識がもうろうとしていたのはわかるけれども。私もたぶん気力が萎えて動かないけれども。ヒーロー演じる気があるならもう少し足掻け。

割れ窓理論タクシー

 整備工場もよくぞ毎回修理に応じているもの。どれもこれも明らかに故意の襲撃だとわかる痕だし。前回なんてカーチェイスで車体全体べこべこだったし。

小戸川宅に銃弾が撃ちこまれた件

 タクシーの窓ガラスが割られたのはコインパーキングでのことなので関係ないような。

「お世話になった人に恩返しできればそれでいい」

 子どものころから大恩を感じていて、しかもそこまで生活に困っていなかった子が、個人タクシーなんていう一生かけても返しきれるかわからないペースの上がりで恩返ししたいと考えるものだろうか? 前話の剛力先生の発言ももっともなことで、モチベーションが高い人物なら相応の職に就くまで努力を重ねるものじゃなかろうか。

作戦名:オッドタクシー

 やけに2人コンビなのを強調するじゃん。ところで大門兄の分け前が話題に上がらなかったけれど、彼も“山分け”の一員? “オッド”なのに?

校長室の生け花

 ここにきて第4話以来再びのツバキ。花言葉は「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」「誇り」。ピンク色の場合はニュアンスとして特に慎み深さが強調される。

「・・・違う」

 頬の毛束が現在の三矢と異なる。過去の三矢と一致。
 ちなみに次回予告ライブシーンと会議室の三矢は現在のほう。バストアップで微笑んでいるのは過去の三矢。

背負っているもの

 「コメンテーター気取りと言われるが、オファーされて需要があり、お金を貰ってこの座に座っている。頼まれもしないのにニュースの見出しにコメント付けてる君たち素人は何気取り? それどこに需要がある?誰が見てる? 金になる? 一体何を背負ってるの?」

 露骨に炎上狙いな性格の悪さはさておき、まったくもって笑風亭呑楽の言うとおりです。

 誰のために、何のために行動するのかという視点はとても大切なものです。
 誰かに求められていること。報酬が発生しうる行為であること。スタンスを示せること。守るべき立場があること。それら広い意味での利害関係が発生していること。必要なことです。そういったものを背負っている人には責任があります。自分の言動ひとつひとつで利益も損害も発生します。生活がかかっています。人生がかかっています。簡単には逃げられません。(自分の置かれた状況を理解できない大バカ者でもないかぎり)彼らは真剣に考えて筋道立った行動をするでしょうし、どういう選択をするかある程度予測可能だからこそ信用されます。
 “第三者”は自由です。彼らは何にも縛られず、心の赴くままに行動します。利害関係者と違って目的がない、すなわち自分の行動に対する中長期的な展望を持たないため、往々にして誰も得をしない結果をもたらすことがあります。彼らは自由で、すなわち無責任です。くだらないことで安易に意見を翻したり、常識的に考えるなら誰もやりたがらないはずの行為を平然と選択したりします。彼らが真剣にものを考えている可能性は何にも担保されることがありません。予測不能。遊び半分で他人の生活や人生を脅かしうる理不尽な蝗害。だから、信用できません。

 もっとも、これは私がそもそも中庸の視点というものを信用していないからこんな考えかたに至るのであって、語り部に中立性を期待する人にしてみればまた違った視点があるのでしょうけれど。

 「そう、戦友だったよ。昔はな。ボスの前に咲く二人花。人間・カネ、教わったよ使いかた。street 育ちの片田舎から出てきた俺にとって慈悲深いかただったけど愉快でなあ。十以上離れた先輩。尊敬してたけど、今じゃ糖衣錠のように甘ったるさ全開。ドブさんの価値問う、いつ show? まるでこの drop みたく足りない punch-line。俺が欲しいのは常にハッカ。なのに出てくるのは甘いのばっか。そろそろ見たいぜデカい爆破。刺激が足りねえ俺に着火。なあ、関口。お前が負けたのは経験不足。だから伝えとけ、宣戦布告。『例の10億奪ったもん勝ち! 争奪! 負けたら即刻この世界から drop!』」

 「わだかまり、仲違いしてきたが、バカ騒ぎにはまだ早い。俺を草食系だとあざ笑い、油断してるドブさんの化けの皮剥がし、俺の全身の針で一刺し! big money 掴み、高らかに笑う! 俺まるでヤマアラシ!」

 「――こんな入れ知恵するやつはひとりしかいない。ヤノって男だ。俺の後輩にあたる。・・・俺はボスへ上納金を納めるために働いてる。この辺はお前に話してもしかたないから言わないが、“恩義”とか“スジ”ってやつだ。しかしヤノは俺の上納金を上回ることしか考えていない。恩義やスジで動いてない。つまり、ヤノは俺を嫌ってるんだ」(第3話)

 だいぶ豪快にすれ違っていますが、いや、それにしてもドブのこと大好きだなヤノめ。書き起こしている最中は「慈悲深いかただった“けど”」って言いまわしに困惑したものですが、つまりそういうことかよこのヤンデレ野郎。
 ドブはドブで自分がヤノを嫌っているわけじゃなくて、ヤノのほうが考えかたの相違から自分を嫌っているんだって認識だし。仲よしかよ。

 銀行強盗計画の進捗について、ドブとヤノは非常に正確にお互いの狙いを読みきっています。お互い考えかたが合わないと思っているくせに、お互いの思考が手に取るように理解できています。それも、自分がそれを理解できていると確信したうえで次の策を練っています。
 これもまた一種の信用のかたち。お互いにそれぞれの手口を知りつくしていて、きっと今回も同じ手で来るだろうと確信しています。
 そりゃあまあ、仕事のやりかたなんて過去の成功体験を組み合わせて自分で洗練させていくものですしね。人生がかかっているんですからそうそう毎回やりかたを変える気にはなりません。実績大事。信頼性大事。奇策なんてものは通常の段取りで失敗することを確信したとき初めて検討する余地が生じるものです。“いつも成功しているやりかた”と“もしかしたら成功するかもしれないやりかた”を比べて後者をありがたがる人がいるとしたら、それはただのギャンブル中毒でしかありません。
 だからこそ、感情的な好き嫌いを脇に置いてもなお、人間の行動というものは案外予測可能なもの。
 その人が真剣であるならなおさらです。失敗できない場面であればあるほど、実績ある、その人にとって常道の手段に頼るもの。鉄火場でこそ人は落ち着いて筋道を通そうとする。たとえ誰かに先読みされるリスクがあったとしても、よほどのことでもないかぎりは奇策に頼るリスクよりずっといい。

 「最近思うんだ。ドブってそんなに悪いやつじゃないかもなって」
 「うん・・・。あの人はあの人なりの正義で動いてるんだ」
 「でも、思ったんだ。これが洗脳か、って。白川さんはまだ解けてないんだな」
 「たしかにあの人は良くないことをたくさんしてるけど、『ボスのため』っていうスジはブレてないんだ。だからドブさんも洗脳状態にあるというか」
 「ああ決めた。今決めた。やっぱあいつら懲らしめる」
 「なによ急に」
 「お前がドブのフォローするからだ!」
 「フォローじゃない! でも世のなか勧善懲悪ってわけにいかないじゃない!」
 「うるせ。俺に関わるなって言っただろ」

 彼らの常道を、小戸川は“洗脳”の一言で切って捨てます。彼らが重ねてきた歴史と経験に理解を示さず、ただ自分が一般的だと思う価値基準に鑑みて一面的に評価します。
 小戸川は世にはびこる理不尽を嫌う、正義の人です。彼の過去に何があったのかは知りませんが、どうやら彼にとって何よりも優先されるべき判断基準はそこにあるようです。理不尽を許さない。理不尽に抗う。世のなかに理不尽はあるべきじゃない。かわいそうな白川を理不尽の魔の手から解放しよう。そのために、彼は自分が何か得をするわけでもないくせヤクザ組織を潰そうなどという大それた計画にのめり込んでいます。

 ドブは悪党で、白川さんを理不尽な目にあわせている――。
 小戸川にとってドブに対する理解はそれだけで充分で、それが世間一般からドブに下されるべき評価でした。

 だからこそ、小戸川の思考は浅い。
 いまや銀行強盗計画における第三勢力となった小戸川の計画は他の2勢力に比べて主体性がありません。情報的優位こそありますが、ドブとヤノがお互いの思考を読んだうえで自分の作戦を組み立てているのに対して、小戸川が考えているのは彼らの計画を崩すことだけ。崩したあとのことは何も考えない、とてもシンプルなものばかりです。
 もちろん、それは小戸川がこの計画の先に何の利益も求めておらず、しかも自分が逮捕されてもいいという半ば捨て鉢な思いでいることも理由として大きいのですが。それにしたって思考の範囲が狭すぎです。ドブかヤノのどちらかからフェイク情報を握らされていたらどうするつもりなんでしょうか。

 「あいつ友人なんだ。柿花。もちろんどうしようもないバカだよ。柿花が悪い。でもそれなりの報いは受けたはずだ。じゃあそっちはどうだ? それなりの報いは受けたか?」

 小戸川は人を見ていません。もっと大きなものに思考力を奪われています。
 大きなもの。世の理不尽。運命の帳尻合わせとか「吉凶はあざなえる縄のごとし」などと表現される根拠不明の平等論への憧憬と、それが果たされないことへの怒り。
 柿花が報いを受けたことと、ミステリーキッスやヤノたちが同じように報いを受けるかどうかは本来関係ありません。白川とドブの件にしたってそうです。けれど、小戸川にとってそれらは無関係じゃありません。辻褄が合うべき関係性だと信じて、あるいは願っています。

 極論、小戸川にとってドブやヤノの存在はどうだっていいんです。
 彼が戦おうとしている相手は“理不尽”。概念です。プリキュアとかでよく見かけるやつ。
 だからこそ、彼は人を見ない。ドブやヤノの思考を自分で読もうとしないし、剛力に止められても、白川に説得されても、彼は話を聞こうとしない。人を相手にするときなら当然あるべき思考が、彼の戦いには必要ないから。

 「――三矢ユキさんはアイドルグループ・ミステリーキッスのメンバーとして活動しており、突然の訃報にファンから驚きの声が上がっています」
 「・・・違う」

 違う、じゃないんですよ。
 もっと焦りなさいよ。

 この報道によって、現在三矢として活動している謎の少女と、彼女を受け入れていたミステリーキッスは世間から疑惑の目に晒されることになるでしょう。CDやライブどころか活動自体が立ちゆかなくなります。
 そうなれば、ミステリーキッスのためにがんばってきた今井や山本マネージャーが小戸川に協力する理由は失われますよ。彼らが仇討ちや八つ当たりのために立ち上がることでも期待してみますか?

 ちなみに、前話でドブは樺沢に何らかの密約を持ちかけています。
 「全ての計画を話す」と言いながら、彼はこの件に限って小戸川にまだ説明していません。何が「オッドタクシー」だ。

よろしければ感想を聞かせてください

    記事の長さはどうでしたか?

    文章は読みやすかったですか?

    当てはまるものを選んでください。

    コメント

    スポンサーリンク
    タイトルとURLをコピーしました