超人女子戦士ガリベンガーV 第115話感想 ワームチューバー再び。

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面白すぎて忘れちゃった。いや、相変わらずVTuberさんたちイイですね!

生徒役:電脳少女シロ、ヤマトイオリ、花京院ちえり

 今回すごく面白かったので、今回限りで久しぶりに感想文を書きました。

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

 バーチャルYouTuber文化が始まった黎明期から活動を続けている最古参のひとり。ストリーマー型の配信を行いながらテレビにライブに活躍の舞台を広げ、YouTubeに留まることないバーチャルYouTuberの広がりを第一線で切り拓いてきました。
 性格は思いやり深く仕事に真摯でイタズラ好き。ほとんどのバーチャルYouTuberから一目置かれがちな自分の立場をよく理解し、事前に共演者の来歴を調べて会話や紹介の糸口を考えておいたり、カッ飛んだ無茶振りをぶちかまして見せ場をつくってあげたりと、この立場だからこそできる立ち回りに上手に活用しています。ちょいちょい言動にパンチが効きすぎているのはそれはそれ。ほら、ファーストペンギンやるような人たちって頭のねじが6、7本外れてるから・・・。

 ゲストが緊張していることが多いガリベンガーVにおいて、彼女たちに細かく声をかけ、タイミングを見計らって活躍の機会をつくってくれる電脳少女シロは小峠教官と並ぶ屋台骨です。
 それとは別に、今回のように共演者のフォローが必要ないときは電脳少女シロ本来のフリーダムな一面が発揮されることもあります。段取りを無視して自由なタイミングで喋り、膨らませられる話題を片っ端から膨らませ、収拾をつける役割は周りの人に丸投げするのです。いざとなったら教官がなんとかしてくれますし。

ヤマトイオリ

 かつて“光”と称えられたバーチャルYouTuber。今は光属性のバーサーカー。一見してわかる強烈すぎる個性に、視聴者からも配信仲間からもリピーター希望者が絶えません。人呼んでアオリン。これで全てを察していただきたい。
 天真爛漫、純真無垢という言葉がよく似合う子です。底抜けに明るくいつもプラス思考で、誰よりも好奇心旺盛。間違いなく天然ボケの類いではあるのですが、時たま意図的にやっているような知性のひらめきも感じます。決して世の中の酸い苦いを知らずに育った箱入り娘というわけではありません。ただ、辛いことを言い訳にして変わるべきではないと考えているだけです。私たちがヤマトイオリに期待するヤマトイオリらしさは、ヤマトイオリが全身全霊で叶えてくれます。
 好きなものは体臭と、痛いモノと、脚。

 ガリベンガーVでは毎回よく質問する子として目を惹く活躍をしています。あふれる好奇心と斜め上の感性から繰り出される数々の質問は『子ども科学電話相談』ばりに奇想天外なものばかり。その質問を見識豊かな一流の研究者がたが捌くのですから、番組が盛り上がらないわけがありません。

花京院ちえり

 唯一無二のかわいいバーチャルYouTuber。
 リアルに縛られることなく誰もが自由に演じたいキャラクターを演じられるのがバーチャルYouTuberですから、見た目や性格がかわいらしいバーチャルYouTuberなんて他にも星の数ほどいます。けれど彼女は自分がかわいいと信じつづけ、かわいいとは何か考えつづけ、かわいくあろうと努力しつづけ、そして自分はかわいいのだと訴えつづけてきました。今や誰もが「今日もちえりちゃんはかわいいなあ!」と喜んで認めます。花京院ちえりのかわいさとは生きた証であり、ファンや仲間たちとの絆そのものです。
 緊張しいでやたら生真面目、急に大喜利を振られるとはじゃはじゃしちゃう。だけど言ってることは立派な奇人。かわいいかわいい言っててもどんな子なのかわかりにくいでしょうが、かわいさだけは保証します。

 ガリベンガーVでは“かわいい”で雑にゴリ押しする芸、すごくどうでもいい話を意地でも曲げない芸の2本立てで独特のキャラクターを確立しています。これで根はリアリストなので、大喜利していないときは案外鋭い考察を見せることも。

超難問:クマムシの謎を解明せよ!

特別講師&授業テーマ雑感

 長沼毅先生は広島大学の生物学教授です。世界中を駆け巡るフィールドワーカーで、自称「吟遊科学者」、あるいは「ホモ・エブリウス(酔っ払ったヒト)」。特に辺境生物を専門にしています。
 第43出演時点では地衣類を研究していましたが、今はチョウザメ研究に取り組んでいるそうです。キャビアですね。チョウザメは成長が遅いため、採算性の面で商業養殖が行き詰まっています。長沼先生自身はメタボロミクスと呼ばれる代謝物研究のアプローチを進めていますが、他の研究者によってゲノム解析まで試みられている研究テーマだとのこと。今回遺伝子に関する話題が多く出ましたが、それもこのチョウザメ研究からの連想だったのかもしれませんね。
 ガリベンガーV初回~第6話、第11話で教鞭を振るい、この番組のフォーマットを確立してくださった先生でもあります。その後もイベントやガリベン大学で出演が続き、この番組の名物講師筆頭としてファンから愛されています。

 “地上最強生物”との呼び声高いクマムシ。その仰々しい肩書きと裏腹、手足をパタパタと懸命に動かす愛くるしい見た目に少なからずコアなファンがついている生きものです。たとえば番組未出演のLiLYPSE 暁おぼろが脈絡なく今回だけリツイートしていたように。・・・そういやえるすりー2でも『もってけ!セーラーふく』を華麗に歌いながらクマムシについて熱く語ってたな、あの子。
 ちなみに湿り気があるところなら地球上たいがいどこにでも生息しています。街中だろうと、海のなかだろうと、砂漠だろうと。すごいところだと雪の上で暮らす種なんてのまでいます。

 体長0.1~1mm、人間が指で潰したらあっさり死ぬうえ、動きもトロく、鋭い牙を持っているわけでも毒針を持っているわけでもない、実は通常状態では環境の変化に弱くて意外に飼育が難しかったりする、このか弱い生きものがどうして“最強”などと呼ばれるのか。その理由をつまびらかにするのが今回の授業の目的です。

トピック1:クマムシの特殊な状態ってどんな状態?

 「ごはんを食べて、すごいパワーを蓄積した直後、ごはんを食べた後は何かの色になって、特殊変異みたいのして、強くなる! そのときは! かな?」

 ヤマトイオリの回答。

 カタツムリかな? とかちょっと思いましたが、どっちかというと星のカービィですねこれ。
 あるいはイナゴの相変異。群れの栄養状態が良すぎると体の構造が変化して蝗害を起こすようになるやつ。

 「苦しくて苦しくて口から泡を吹いて、その泡で身体を守るのかなって思いました」

 電脳少女シロの回答。

 苦しいとき泡を吹くというとカニがそういう生態をしていますが、泡で身を守るという話ならアワフキムシのほうがイメージに近いでしょうか。そこらの植物の茎によくへばりついている泡の塊の犯人です。ゴキブリに洗剤をかけると即死するように、一般的な昆虫にとって界面活性剤は禁忌なので、見た目ただの泡に見えても、泡だからこそ強力な防壁たりうるんですね。

 キーワードは「クリプトビオシス」
 アルファベット表記だと「cryptobiosis」。「crypto」が“隠された”、「bio-」が“生命”、「-sis」が“活動”で、合わせて“隠された生命活動”という意味になります。

 このトピックの正解は「仮死状態になることで驚異的な耐久性を手に入れる」
 クマムシの仲間はコケや表面など、湿った環境でしか生きられません。しかも歩みが遅く、短時間で長距離を移動することができません。(※ ちなみに泳ぐことはできません。水中で暮らす種も藻の表面を這って生きています)
 そうなると何に困るかというと、急激な環境の変化に対応できないんですね。ちょっと晴れの日が続いたり、夏とか乾期とかの季節に入ると、それまでクマムシにとって居心地のよかった環境があっという間に干からびちゃうとか、そういうことがよく起こるわけですよ。
 当然クマムシは逃れることもできず、環境の変化をモロにくらってコケや藻と一緒にカラカラのミイラになっちゃうわけですが、クマムシのすごいところはこれから。体がミイラ化しても死なないんですね。そして周囲の環境が回復して体に水分が戻ると、何事もなかったかのように活動を再開するんです。

 「干物みたい」と、電脳少女シロが呟きますが、まさにそれ。クリプトビオシスのメカニズムは干ししいたけに似ているという説があります。
 クマムシの体にはトレハロースという糖の一種が含まれています。水分が抜けてスカスカになった細胞の間にこのトレハロースが入りこむことで、細胞間の空隙が潰れることなく保たれ、元のとおり水分が入りこみやすくなっているんです。

 「先生、先生! お水が来たとき復活するっておっしゃってたんですけど、自分から仮眠状態のときに『今ボク仮眠状態だから水探さないと!』って動けて、水を求めて行ったりするんですか?」

 ここでヤマトイオリの質問。こうやって生徒から質問が出てくると、講師があらかじめ用意していたものとは別角度の視点からも学問することができて、授業テーマが一気に立体的になりますね。

 クリプトビオシス状態のクマムシが自分で動くことはできません。再び水を得られることを待つのみです。ただし、クマムシはクリプトビオシス状態のまま10年ほど生きながらえることができます。超低温下など条件がよければさらに何十年も。
 なぜなら、上記のとおり本来水分が入っていた細胞の空隙を強固に保ちつづける仕組みがあるからです。だから体が硬くて動けないし、何十年と経ったあとでも水さえ得られれば速やかに復活できるというわけですね。

 ほら、意外なところが繋がった。学問はだから面白い。

トピック2:オニクマムシの変わった産卵方法とは?

 「卵が入ってる自分の皮膚ごと分離させて、生まれるまで自分の皮膚で守ってあげる。強そうだから」

 ヤマトイオリの回答。まさかの大正解。よっぽど驚いたのか長沼先生がすごい目で見ていますね。

 「うーん、そうだなあ。下だと普通だから、上の口から出るほうが多少変わってるかもしれないと思いました」
 「ピッコロみたいってことね。はあ。なるほど。口からばーって卵出す」
 「そう。そうそうそう。かわいい。あ! 似てますねそういえば! すごい! 今すごいひらめいちゃったと思って、ちえり!」

 花京院ちえりの回答。ちなみに小峠教官とピッコロが似ているというネタは昔からイジられてきたネタだそうで、2017年にはコスプレもしています。
 花京院ちえり本人は大喜利に苦手意識があるといいますが、こういう意図していなかった結びつきに後付けでもしっかり気がつけるというのはセンスがある証拠ですね。ぱっと見のイメージに囚われずその場で瞬発的に視点を変えるというのは案外難しいものです。思い込みを制する者が大喜利を制するのです。

 それはともかく。ユニークな回答によってまたしても授業が膨らみます。
 オニクマムシの話ではありませんが、実は胃袋で子どもを育てるイブクロコモリガエルというカエルが存在します。(※ 正確には「存在していました」。絶滅種です)
 このカエルは一度産んだ卵がある程度成熟した頃合いで、おもむろに卵を飲みこみ、6週間ほどかけて孵化→オタマジャクシ→変態の過程が終わってカエルの姿に育つまで、子どもを胃袋のなかで育てます。一度に6~25匹ほど産むのだとか。胃袋どうなってんだ。

 さて、キーワードは「産卵と脱皮のシンクロ」
 クマムシは外骨格の生きものです。外骨格最大の弱点として、定期的に脱皮をしなければ自身の硬い殻に阻まれて体を大きく成長させられないというものがあります。
 そんなわけで他の外骨格生物と同様、もちろんクマムシも脱皮をするわけですが・・・。ユニークなのは、この脱皮と同時に産卵もしてしまうところです。こうすることで脱皮殻が卵鞘代わりになり、うまいこと生息域であるコケに引っかかってくれて流れていかないんだそうな。かしこい。

 ちなみにクマムシのうち結構な割合の種が単為生殖で子孫を残しています。(※ 有性生殖する種もいます)
 特にクリプトビオシスができる種類はほとんどが単為生殖なんだとか。よくよく考えれば納得ですね。いつ水分がなくなるかもわからないような過酷な環境下じゃパートナーを見つけだすのも一苦労ですし。

トピック3:DNA解析で分かった脅威の能力は何?

 「クマムシは宇宙でも生きられるよ、みたいな。すごい強いよっていうのを見て。だから時間をワープできる能力があるんじゃないかなって思ったり」
 「クマムシ、ワープしてどこ行くんだよ」
 「異次元に行く」
 「クマムシが?」
 「あっ。だから世界中にいるんだよ!」
 「跳んでいくのか! うん。クマムシがワープする。ワープ!」

 ヤマトイオリの回答。
 ワープといっても最初は時間移動の話をしていたので、たぶん「死ぬ前に過去に戻れば実質無敵だ!」みたいな考えだったんだと思われます。それが教官と電脳少女シロの横槍を受けていつの間にか空間移動になっていますね。
 特に電脳少女シロの、クマムシの生息域が広いことに絡めた発言がとてもクレバーですね。ヤマトイオリも最終的にこれを採用することにしたようです。

 「あれだ。ゾンビみたいになるんだ、人に寄生して」
 「わあ、すごーい!」
 「脳に入ってくるの!?」
 「クマムシが? ゾンビ?」
 「そう。ゾンビ!」
 「クマムシが?」
 「クマムシが!」
 「ゾンビに?」
 「なる!」
 「ほーん。ゾンビになってどうすんの、クマムシが」
 「そしたら人間たちがみんなゾンビになる。今徐々にその準備をしてる」
 「クマムシから? ゾンビが派生して? 人間がゾンビに?」
 「うん」

 ホラー大好き花京院ちえりの回答。
 花京院ちえりと小峠教官の謎の押し問答もすっかりおなじみになりましたね。花京院ちえりが絶対に折れないので、一度スイッチが入るとお決まりの流れになってしまうというか。そういえば初出演回から「5時間くらいできる」という触れ込みのかわいい合戦をしていましたっけ。
 何かに寄生されてゾンビになる設定の映画は少なくないので、ゾンビはフィクションだというところに目をつぶれば悪くない発想です。クマムシ、ちっちゃいですしね。DNAの書き換えとかできちゃいそう。

 「クマムシは目に映った人物になることができるんです」
 「クマムシが? 人物に?」
 「そう。だから、芸人のクマムシさんはあれ本当はクマムシだったんです」
 「クマムシが? 元々クマムシがクマムシ! はー。そんで人間の化身をしたクマムシがあのワタナベエンターテイメントのクマムシ!」
 「・・・で、しかもシロたちに笑いを届けてくれたんで人間の好みを熟知して――」
 「なるほどねえ! そんで蘇生するときはお湯かけられて『あったかいんだからぁ』って生まれた!」
 「そうそうそうそう! やったー!」
 「はー。なるほどねえ。それが誕生秘話なわけね。『あったかいんだからぁ』の誕生秘話!」
 「全部わかったー! すごいねえ、クマムシさんって」

 ヤマトイオリ、花京院ちえりときてテンションが上がりきった小峠教官によるテンドンの流れ。ステージイベントのほうでもよくやっていますね。電脳少女シロにだけ異様に当たりが強いやつ。

 というわけで電脳少女シロの回答。
 でもなんだか最後のほう教官主導で設定補完しちゃっていますね。先ほどのヤマトイオリのときの電脳少女シロといい、今回は出演者同士のやりとり(※ 討論? 茶番?)が活発で、見ていて楽しいです。
 初期のガリベンガーVが面白かったのもこういうところでした。生徒同士じゃなくて特別講師と生徒とのやりとりでしたが、対話によってどんどん授業が深まっていき、講師の先生から意外な知識が引き出されるところが本物の授業風景っぽくて。
 そういうライブ感、生きた学問っぽさが、他の教養番組にはないガリベンガーVだけの特別なところでした。

 さて、このトピックのキーワードは「Dsup」です。そして正解は「放射線耐性」
 「Dsup」はDamage suppressor(損傷抑制遺伝子)の略で、クマムシをゲノム解析した東京大学の橋本琢磨特任研究員率いる研究チームによって発見・命名されました。クマムシに固有の遺伝子のひとつで、その名の通り高線量放射線によるDNA損傷に対して強い軽減作用を示します。

 放射線耐性を持つ生物は他にもそれなりにいるのですが、クマムシのそれは際立って優れています。
 クマムシを宇宙に連れて行った実験を知っている人はそれなりに多いでしょう。あれはクマムシが宇宙線に耐えられるかどうかを確かめたものです。それどころか、(※ 人間なら確実に死ぬ!)オゾン層に遮られていない太陽光線を直接浴びせても、クマムシは特段後遺症もなく生き残ったといいます。
 人間のX線致死線量が500レントゲンとされるのに対して、クマムシの場合は57万レントゲンまで耐えられるんだそうな。はあ。単位がいまいちピンとこないところにこの文字通り桁が違う数値差。ドラゴンボールか?

 で、先ほどのゲノム解析の結果ですが、Dsup以外にもクマムシの遺伝子は41.1%ほどがクマムシ固有のものだということがわかりました。
 参考として、人間とチンパンジーの遺伝子を比較すると96%が一致します。人間と猫ですら90%の一致。そう考えるとクマムシの遺伝子がいかに特殊なのかわかると思います。

 そしてもうひとつ面白いことがわかりました。クマムシから抽出したDsupは、培養した人間のDNAに組み込んでも変わらず放射線耐性を発揮するようなんです。
 これは画期的な発見でした。長沼先生が言うように、人間の宇宙進出に欠かせない技術になるかもしれません。さすがに人間の遺伝子を組み換えるのは倫理的にどうよ?という話になっても、他の動物ならどうだろうか。月や火星であるとか、あるいは原発事故地域の環境改善に役立つのではないだろうか。・・・といった具合で、これだけでも可能性が無限に広がるわけです。
 さらに、これまで学んできたとおり、クマムシには放射線耐性以外にも過酷な環境への耐性を様々に持っています。そしてそれを実現しているであろうクマムシ独自の遺伝子が、まだまだ数千個単位で見つかるかもしれないんです。

 「先生! 先生! 先生はDsup入れたいですか? 自分のなかに」

 チューブワームのエキスを直接注射するよりは本当に効果が出る見込みがある話です。
 夢があると感じるか、マッドだと感じるかはあなた次第。

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