作り手が・・・想像できるんです。この作品にかけた想い、それまでの人生・・・。それが・・・見えるような気がするんです。
(主観的)あらすじ
トレサ・コルツォーネは町商店の一人娘として生まれました。両親から商人としての才覚と愛情を存分に与えられ、今日も元気いっぱいに家業を手伝います。ゆくゆくは一人前の商人になって両親の店を継ぐことでしょう。
・・・けれど、本当はいつも思うのです。
「あの水平線の向こうには何があるのかな」
トレサにとって、この住み心地良い町での暮らしは、ちょっとだけ窮屈に感じられるのでした。
そんなある日、トレサは海賊が町の露店を略奪しているところに遭遇しました。
勇敢にも海賊たちに食ってかかるトレサ。けれど足震える恐怖を押し殺した甲斐なく、トレサは海賊たちに侮られ、逆に大切な商品を奪われてしまいました。
トレサは海賊が許せません。だって、あらゆる商品にはつくった人の想いが込められているのです。商人にはその商品を必要とする人に届けて、最高の幸せをつくる大切な仕事があるのです。だから、これはトレサの商人としての意地でした。
そんな彼女を、たまたま居合わせた大商船の船長が気に入ってくれました。その心根に“粋”を感じたと。納得いくまでやってみろと。
彼の援助を受けたトレサはひとつの策とともに海賊の根城に忍び込みました。策は概ねうまくいったのですが、もう少しで商品を取り戻せるというところで海賊に見つかり、彼女は包囲されてしまいます。
その窮地から助けてくれたのが、またしても先ほどの船長でした。彼の名はレオン・バストラル。かつては槍術で名を馳せた大海賊だったそうです。彼はまたたく間に海賊たちを叩きのめし、トレサの勇気を称えてくれました。
トレサを認めたレオン船長は、自分の船の積み荷から何でもひとつプレゼントすると申し出てくれました。
大きな商船に積まれていたものは幾多幾色ものきらびやかな異国の品々。どれも初めて見るものばかりでしたが、トレサにはそのひとつひとつに素晴らしい価値があることがわかりました。だって、それらは見るだけでもつくった人の人生をかけた想いが伝わってくるのですから。
けれど、結局テレサが選んだものは一冊の古びた手帳でした。それはひとりの冒険者がその旅路を綴った手記でした。商品としては二束三文ですが、その手記に込められた想いは、少なくともトレサにとっては計り知れない価値がありました。きっと運命を変えてくれる、と、直観させたのでした。
はたしてその手記を読みふけったトレサは燻っていた広い世界への憧れを爆発させます。もう、どうしようもなくなって、何を置いても、誰を驚かせてでも、今すぐ行動せずにはいられなくなりました。
こうしてトレサは旅立ちました。
一人前の商人になるために。
水平線の向こうを見に行くために。
何ヶ月も前から予約していたのにkonozama食らって、金曜日発売のこのゲームが私の手元に届いたのは連休明けの火曜日になってようやくでした。DL版に切り換えればよかったんでしょうが、「当日発送するよー」「今日こそ発送するよー」「そろそろ発送するよー」とのamazonの連日の言い分を無邪気に信じて踏み切れませんでした。コンチクショウ。
でもそういえば『ゼノブレイド2』もそんな感じでしたっけ。あっちはそもそも仕事が忙しかったせいでどっちみち遊べなかったんですが。私も学習しませんね。発売日に遊びたきゃ実店舗で予約しろ。
というわけで、世間からは若干出遅れたタイミングでのプレイ日記です。
体験版でひととおり触った感じ、シナリオの意図を考察するよりは自分で好き勝手に想像をふくらませる方が面白くなりそうな作風だったので、こんな感じで主観による補完込みのあらすじを書いていくことにしました。たぶん、長々と感想文を書くよりかこっちの方が、私がどこに注目したか、何を面白いと思ったのかを表現しやすいと思ったので。ちょいちょいゲーム内では語られていない表現を含んでいくでしょうから、あらすじといっても真に受けないこと。これは私にとっての物語です。私の主観で語っていきます。
できれば私の脳内で繰り広げられたロールプレイの内容も反映して、あらすじ半分、感想文半分、二次創作半分(合計1.5)みたいなプレイ日記にしたいと思うのですが、はてさてどうなるか。
『オクトパストラベラー』はロールプレイが楽しいゲームですね。
ざっくりしたストーリーの輪郭だけしか示されず、キャラクターの掘り下げも最低限、声優の演技も主張しすぎない塩梅に調整されています。ぶっちゃけ劇中から受け取る情報量だけでは少々ディテールが物足りません。逆にいえばその不足分はプレイヤーが自由に想像で補完していい、という作劇スタイルですね。イギリス料理風!(誰もわからんて)
たぶん、このゲームのアートワークに惹かれたオールドゲーマーの半数くらいはそういうところに魅力を感じたのではないでしょうか。私たちがかつて愛した『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』などはまさにそういうゲームでした。キャラクターが向きを変えるだけ、あるいは数桁の数字が表示されるだけで、私たちの空想のなかでは無限のドラマが描き出されていました。友達みんな同じゲームで遊んでいながら、ひとりひとりまったく違う物語を体験していました。
単にドット絵のクラシカルなアートワークだから面白いのではありません。
単にターン制のシンプルなバトルシステムだから面白いのではありません。
それら抽象性の高い表現技法が生み出す、空想の余地の広さこそがオールドRPGの醍醐味です。
この『オクトパストラベラー』は、そんな“ロールプレイング”ゲームの一番楽しいゲーム性を大切に磨き上げてくれました。
ええい、前置きが長いな、おい。
ロールプレイを楽しむにあたって、私は主人公にトレサを選びました。彼女が一番柔軟な人物だと思ったからです。正道 / 邪道まぜこぜの8人の物語において、どんな展開が来ても違和感なく物語ることができるのはこの子の視点からだろうなと。
人好きのする性格が良いです。広い世界を見たいという好奇心の強さも良いです。商人としての成長を目指すというふわっとした目的意識も良いです。なにより、この子の場合は立ち位置としてどうしても他人の助けを借りる必然性があるというのがすごく良いんですよね。
子どもであり、商人であり
トレサの物語の第1章は、彼女が他人に守られていることを前提に展開していきます。
やたらカッコよくラスボス臭を漂わせているレオン船長はもちろんのこと、両親は優しく、町の人々も親切。おかげで彼女は毎日明るく楽しく暮らせています。
その一方で、だからこそ平和な町に退屈してしまったり、だからこそときに驚くような無鉄砲をはたらいたりできるんですよね。この町にいるかぎり、本当に困ったときは誰かが助けてくれると信じられるから。
結局海賊退治はひとりで完遂できませんでした。レオン船長が助けてくれなければ命を落としていたかもしれません。いいえ、それどころか海賊のアジトに侵入することすら叶わなかったでしょう。
トレサ自身にはまだ大きなことを成し遂げるだけの実力はありません。
ただ、それでも事実として誰にもできなかったことをやり遂げたのは彼女です。
成し遂げられるだけの実力を持つ他人の力を借りることで、他でもない彼女がやり遂げました。
そこにこの少女の魅力があります。
彼女は他人の力を借りることを知っています。
それは彼女が未熟な子どもだからということでもありますが、同時にいっぱしの“商人”だからこそでもあります。
「その品々には作り手の想いが込められているの。そして、それを求める人たちがいる。そんな人たちを探して最高の喜びを届ける・・・。それがあたしたち、商人の仕事なの」
商人という仕事はつくり手と買い手の仲立ちとなるものです。つくり手がいなければ商品を仕入れられず、買い手がいなければ商品に価値を持たせられません。商人とは自分ひとりでは何も生み出せない仕事です。けれど、他人と協力することで、他人の持つものの価値を最大化することができるのもまた商人です。
レオン船長は海賊をやすやすと退治できる実力を持っていながら、大人らしい分別によって、それを為そうとしていませんでした。そんな彼が行動しはじめたのはトレサがいたからこそ。彼の力を必要としていて、しかも良いことのために使ってくれそうな子どもが目の前をうろちょろしていたからです。
トレサの魅力はそういうところにあります。
トレサの物語の第1章は、年若き商人が独り立ちを決意するまでの物語。その旅立ちは優しい人々に祝福してもらえました。
トレサはこれからひとりで旅をはじめますが、すぐにたくさんの仲間を得ることになるでしょう。だって、彼女は未熟な子どもで、一流の商人です。他人と絆をつなぐことのステキを誰よりも深く知っています。
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