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プラネット・ウィズ 第3話感想 穏健なりモケーレムベンベ。

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誰もあなたを恐れていないよ。

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(主観的)あらすじ

 宗矢は敗走しました。グランドパラディン――竜の力を利用する者たちに包囲されて絶体絶命、せめて親玉だけでもと捨て身の突貫を繰り出したところで、その親玉・竜造寺隆に圧倒的な力の差を見せつけられました。先生の虎の子である宇宙船のショートワープ機構を使って、命からがらアパートへ逃げ帰りました。
 敗北したことで毒気が抜けた宗矢は、クラスメイトの高天原が心配していることを知り、再び学校に通うことにしました。学校では高天原が暖かく迎えてくれました。オカルト研究会に誘ってくれ、そこで宗矢は穏やかな時間を体験しました。同居人の先生と銀子もそれを聞いて我が事のように喜び、このままここで永住してくれてもいいとまで言ってくれるのでした。
 一方、グランドパラディンのひとり・熊代晴美は親友の美羽を傷つけられたカタキを討つことを誓い、鍛錬を通じて己を研ぎ澄ませていました。やがて今日もネビュラウェポンが現れます。仲間の根津屋とともにコアに侵入した晴美は幻像を見ます。そこでは晴美はお姫さまでした。そして美羽が王子様。ずっと憧れていたおとぎの国。けれど、こんなのは違います。今の晴美はカタキを討たなければなりませんでした。
 晴美は幻像を破壊し、ネビュラウェポンを破壊します。――と。破壊されたネビュラウェポンのなかから根津屋が堕ちていきます。彼は、敗北したのでした。

 ちょっとくやしい。
 私、このアニメの感想文では他のアニメを観るときよりもだいぶ突っ込んだ解釈をしているつもりなんです。“虎居が後悔を解消したら自分を高めてきた意志までなくしてしまう”とか、“美羽のようにひとつの手段に全身全霊をかけるやりかたは自分も周りも不幸にするよね”とか。半ば展開予想みたいなものですね。「ここらへんがこの物語全体の核心だろ」くらいのつもりで書いています。
 なのに、せっかくがんばって解釈したつもりでいたそういうの全部、次話でさくっと語られちゃうんですよ。つまりはそういうごく短期的なスパンで回収されちゃう程度の話だったってことですよ。このくらいなら読まれるだろうって製作スタッフに先読みされちゃっているわけですよ。実はちっとも核心じゃなかったわけですよ。おのれー。
 そもそもウチのブログは「作者の意図なんて関係ねえ! 私は私の主観で観るんだ!」ってスタンスのはずなんですが、ここまでケンカを売られた以上は全力で買ってやるしかあるめえ。(売られてない) もうちょっとがんばってみます。

憎悪から平穏へ

 「失態だぞ。シリウス人の子どもに振りまわされるなど。ネビュラ唯一の武力である我らキグルミ族の名誉に傷がつく。だいたい、シリウス人などいつまで手元に置いておくつもりだ。罪滅ぼしのつもりか」
 「あの子の力は有用だ。ネビュラ加入種族にはない、あの子の闘争心とサイキックが私の力を増幅してくれる」
 「だが、暴走した。シリウスが何故滅びたのかわかるというものだ」
 「シリウスが滅びたのは私が彼らを救えなかったからだ」
 「違う! 彼らは闘争心の赴くままに、力の進化を遂げたからだ。ああなる前に封印すべきだった」
 「封印された種族は進化の道を閉ざされる。それは愛の進化種族の選択として正しいのか?」
 「・・・滅びるよりは、悲しくないさ」

 スーパーわんにゃん劇場。きょうのわんこときょうのにゃんこはめいめいほのぼの吠えあいます。
 つまるところ“ネビュラ”というのは星間連合なんですね。加入条件は種族として愛の進化を遂げること。武闘派種族がいたり闘争心自体は肯定したりと、案外力を持つこと自体は拒絶していないっぽいです。
 先生たち穏健派が地球人の愛の進化を望んでいるのは、それができたとき地球人をネビュラの同志として迎え入れることができるからでしょうか。できることならそれがネビュラにとっての理想形なのでしょう。
 そうとも。誰だって仲間が多いに越したことはないでしょうとも。みんな仲よしこよしが一番平和。幸いなるかな、封印派ですらも地球人を封印することが最善だとは思っていらっしゃらない様子。そして我らがひとりぼっちのシリウス人とて、だから――憎しみを募らせる。

 どうして力の進化がいけないのかといえば、その行きつく先に滅びの運命が待っているからだそうな。
 まっことそのとおり。暴力はよろしくないね。哀れ、闘争に染まったシリウス星は竜に滅ぼされました。宗矢はひとりぼっちを強いた暴虐の竜を憎み、己に贈られた天恵なる力を過信し、憎しみに振りまわされ、あるいは逆にギガキャットハンマーを振りまわし、そしてその大立ち回りの果てに、ライ麦の神が振り下ろす雷霆の一撃によって討ち滅ぼされかけました。
 然り、いつの世も力は力によって滅せられる運命。然り、その運命の具現こそが、つまりは“竜”なのでしょうか。

 我ながらゲンナリしてきたので、思いつきではじめた妙ちくりんな悪ノリはこのくらいにするとして。

 さて、なんやかんやで宗矢は日常に帰ってきました。
 おっと。復讐に明け暮れるより前は記憶喪失だったんだから、“帰ってきた”というのも正確ではありませんね。正しくは体験入門みたいなものです。(悪ノリ)
 「――恐いです。学校へ来なくなった同級生もいて、心配で」
 「学校、行ったら?」
 「うん。行ってくる・・・」

 今の自分の力では復讐の完遂にまるで手が届かないことを痛感しました。一方で、今の自分にも叶えてやれる他人の願いがあることに初めて目が向きました。
 3日前の自分の判断が間違いだったことを痛感しました。一方で、この信用ならない同居人たちのあのときの判断が自分を生かしてくれたことを認めるしかありませんでした。さらにはその献身も。具体的には腕1本とぱんつ1枚ほどの尊い犠牲があったようで。

 だから、宗矢は素直に学校に行くことにしました。
 自分が無力で、あるいは間違っていたようだから。どうやら今は自分よりも周りの人たちの言うこと方が正しいようだから。

 「遅かったね。学校、どうだった?」
 「まあまあ」
 「そ。よかったねえ」
 「『もしよかったら地球に永住してもいいニャ』と、先生は仰ってる」

 そして実際、彼らが教えてくれた復讐以外の生きかたは、宗矢にとってもたいへん居心地のいいものでした。

いつの時代も男の子ならみんな大好き

 「えーと、ここは?」
 「オカルト研究会部室。黒井くんこういうの好きでしょ」

 善意。
 学校に行ってみて、宗矢が巡りあったものは、誰にも分け隔てない愛のかたちでした。

 「るーんやー」「るーんやー」「るーんやー」
 「心配したんだよ。学校来ないから」
 「やだ、歓迎するよ黒井くん!」
 「こうして友になれたことを嬉しく思う。よろしく」

 そこには平穏がありました。そこには友誼がありました。そこには闘争とは違う、他人と心を通わせあう幸せな生き方がありました。
 ここでは誰もが誰をも傷つけません。ここでは力なんて必要ありません。愛さえあれば全てなめらかにつづいていきます。
 先生や銀子、ネビュラ穏健派が訴える理想は、きっとこういうことなのでしょう。
 「じゃ、ふたりとも気をつけてね」
 「また会おう、友よ」
 「また明日!」
 「・・・じゃあ、また」

 もし宗矢が望むなら、そして地球人が力の進化を止めるなら、愛の進化に邁進するならば、きっとこの日常は永遠となることでしょう。

 「悪くない話だと思うよ」

 「『我々穏健派は、介入は最小限、力を没収することだけに留めて見守りを再開したいニャ』『我々は地球人が力の進化より愛の進化を選ぶことを期待しているニャ』」(第2話)
 ですが、ネビュラ穏健派の考えかたはいくらなんでも理想が過ぎます。
 この平穏な時間のなかですら、宗矢は恐竜の生き残りともいわれる巨大なUMA・モケーレムベンベに心惹かれていました。
 特に白黒つける意味もないのに、オカルト研究会員たちはオセロという対戦ゲームでお互いの腕を競いあうことに興じていました。
 そしてこの平穏の裏では根津屋の家の家業が経済競争に負け、酒屋からコンビニへと業態転換を余儀なくされていました。
 愛を志向することはきっと良いことでしょう。少なくともこれまでの劇中ではそれを否定しうる要素は登場していません。
 けれど、だからといって、きっと私たち地球人は力を捨てません。
 平穏な日々のなかでも私たちは何気なく力に憧れ、力を競い、そして力で身を守ろうとすることでしょう。

 だって、最後のひとつは意見が分かれるにしても、私たちはこれら“力”への依拠をちっとも悪いことだと思っていませんもの。

ズレ

 熊代晴美は復讐者となりました。
 グランドパラディンの裏にネビュラ封印派の影がちらつき、ネビュラウェポンとの戦いがマッチポンプの様相を呈しつつあるなかで、彼女の力への渇望は少しも揺らぐことがありませんでした。

 ネビュラウェポンのコアの破壊。ただ幻像を見せられていただけのはずなのに、虎居と美羽の場合は念動装甲を満身創痍にしていました。けれどその一方、今回の晴美は念動装甲にキズひとつつけていませんでした。
 「誰もあなたを恐れていないよ」
 この幻像、いつの時点での晴美に当てて仕組んでいたんでしょうね。

 自分がお姫さまになって、王子様の美羽に守ってもらうだなんて、そんなのを喜ぶのは普段の晴美です。
 少し前までの晴美は争いを好まないおとなしい性格でした。
 晴美の強さに憧れ、晴美と並んで立ちたいがために強さばかりを追求していた美羽を諫めようとしていました。
 晴美自身はむしろお姫さまみたいにかわいい美羽に憧れていました。
 そういう普段の彼女なら、自分がか弱いお姫さまになって、そして相対的に強くなれた美羽が自分に満足してくれるのなら、それは幸福な幻像たりえたことでしょう。

 けれど、現在の晴美が置かれた状況はその幻像を幸福と見なしません。
 美羽は強さのみを追求した果てにそれをへし折られ、全てを失いました。
 彼女のカタキを討ちたい晴美は、今さらか弱くなんてなっていられません。
 「誰もあなたを恐れていないよ」だなんて言われても、むしろ憎きネビュラソルジャーには恐れられたいくらいです。
 今の晴美が今回の幻像で心かき乱されるはずがないんです。
 今の晴美を精神的に追い詰めたいのなら、たとえば“復讐しても美羽の笑顔は戻らないよ”とか“強くなったらお姫さまになれないよ”とか、そういう趣向の幻像を見せるべきでした。

 幻像と向き合って虎居は自分の意志を疑い、美羽は逆に自信を突き詰め、根津屋は幻像に屈服しました。
 けれど、晴美に限っては何の影響もありませんでした。そもそも見せられた幻像が根本的にズレていました。
 封印派の狙いがグランドパラディンに持たせた歪んだ力でネビュラウェポンを破壊させることだったとしても、単純に幻像に屈服させることだったとしても、今回のはまず間違いなく彼らの想定外だったのではないかと思います。
 だって、穏健派と宗矢の介入がなければきっと晴美は変わりませんでしたから。
 ある意味において晴美は宗矢に救われたのかもしれません。

 力に依って幸せをつかみ取ることが正しいのか、力に依らない幸せを模索することが正しいのか。
 どちらの立場に対しても単純に賛同も否定もできなくなる微妙な疑念をバラまきつつ、さて次回へ。
 根津屋の見た幻像あたりからはじまるのでしょうか。たぶんろくでもないコメディチックな幻像なんだろうなあ。真面目にやると生臭くなりそうだし。

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