HUGっと!プリキュア 第28話感想 あなたが誰かに好きになってもらえている理由。

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私はルールーが好きなのです。その気持ちを込めて歌ったのです。ルールーには伝わりましたか?

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(主観的)あらすじ

 ほまれの家の犬・もぐもぐが恋をしました! 相手はテレビで人気のタレント猫・りりーちゃん。調べてみるとCMオーディションで優勝すれば彼女に会えるようです。はなたちはもぐもぐの恋を叶えるために特訓を手伝うことにしました。
 けれどルールーはひとり不安に思っていました。冷静に考えて犬と猫の恋が成就するはずがありません。そしてそのことを考えると、自分の胸にぽっかりと穴が空いた心地がするのです。だってルールーはアンドロイド。大好きな人たちと種族が違うのは彼女も同じなのですから。
 もぐもぐはオーディションで健闘しました。残るはもぐもぐにとって最大の難関、勇敢さの審査。ところが審査がはじまる直前、オシマイダーが現れ、暴れだしました。犬も飼い主もみんな逃げ惑います。臆病なもぐもぐも身体の震えが止まりませんでしたが、そのとき女の子がひとり逃げ遅れていることに気付きました。女の子に近寄っていくオシマイダー。もぐもぐは勇気を出してオシマイダーに吠えかかり、女の子を守るのでした。
 オシマイダーのせいでオーディションは中止になってしまいました。残念がっているもぐもぐのところに先ほどの女の子がお礼を言いにきます。その後ろから現れたのはなんと、憧れのりりーちゃん。女の子はりりーちゃんの飼い主だったのでした。種族は違えど、もぐもぐの勇気はちゃんとりりーちゃんに伝わるのでした。

 次回予告で見たときは「夏休みらしくまたナゾいエピソードを入れてきたなあ」と思っていたのですが、なるほど、今話はルールーの当番回だったんですね。
 目下、ルールーが抱えている一番の問題は“どうして自分がみんなに愛してもらえているのか”を今ひとつ理解できていないことです。だからえみるの傍にいられるだけでは不安を感じてしまって、えみるにもっと頼ってほしいと考えちゃうんですよね。今回の種族の壁のこともそう。愛してもらえる権利というか、愛してもらうことに自分が納得できるだけの根拠を、彼女は絶えず探しつづけています。
 しかしまあ、もぐもぐよ。「もじゃ」て。字幕での鳴き声が「もじゃ」て。・・・きゃわたん。

奇跡:十二時の鐘

 「私はアンドロイドです。人間のえみるやはな、さあや、ほまれ、はぐたんとは種族が違うから・・・」
 何を今さらと思う人もいるでしょうが、ルールーにとっては重要なことです。

 「騙されてなんか、ない! 私がそう思ってないから、そうなの!」(第17話)
 はなはきわめて主観的な言い分によってルールーを受け入れてくれました。
 「ケガはない、ルールー。そう。よかった。じゃあ帰りましょう」(第18話)
 はなのお母さんは記憶操作までされていたのに、何も聞かずにルールーを受け入れてくれました。
 「ルールーはきれいでカッコよくて、強い心を持っているのです」(第18話)
 えみるは歌に心を込められない姿を見ていてなお、ルールーに心があると言って親友になってくれました。

 どうしてルールーはみんなに受け入れてもらえたのでしょうか。
 その答えはいつも決まってこう。
 「そんなの、ルールーが好きだからに決まってんじゃん」(第18話)
 いつだってまず初めに“好き”がありました。
 じゃあ、その“好き”はいったいどこから来たの?
 ずっとそれが不思議でした。そのうちそれが“心”というものだと気付かされました。
 不思議な“心”。機械の頭脳がはじき出す未来予測をいとも簡単に越えていく、奇跡のような力の根源。
 その不思議な心はルールーのなかにもあって、ルールー自身も驚くような不思議な衝動を湧きあがらせたり、ルールーの手を通して不可能だと思っていた奇跡を起こしたり、そしてルールーをプリキュアにしてくれたりもしました。
 心がもたらす奇跡、心がもたらす“好き”が、ルールーを今の暖かい場所にいさせてくれます。
 だからこそ、わからないんです。どうして自分が受け入れてもらえたのか。今の現実が“心”という不確かな、まるで奇跡のような力によってもたらされたものであればこそ。

 「もぐもぐの恋は叶うのでしょうか? 私のデータによると、犬と猫の恋が叶うというケースはありえません。なぜなら種族が違うからです」
 事実はいつだって無慈悲で、なのに不思議な心はあっさりとそれを塗り替えていきます。
 犬と猫の恋が叶うことはありえません。なのに現実としてもぐもぐの心はりりーちゃんに惹かれました。
 心という奇跡によってもたらされたこの恋は、では、成就するのでしょうか?
 そこがわかりません。
 心を持っているルールーにさえ、心が起こす奇跡がどこまで続くものなのか、未来予測できません。
 たとえばあるときふっと奇跡が止まったりはしないだろうか。一番叶えたい願いを前にして奇跡が消えてしまったりはしないだろうか。
 「そう考えていたら、なんだかこのあたりがスースーして寂しくなるような・・・」
 もしもあるときふっと心の奇跡がなくなってしまったとしたら。
 もぐもぐは優勝できないかもしれない。もぐもぐの気持ちはりりーちゃんに届かないかもしれない。
 あるいは、いつかえみるに嫌われてしまうことがあるかもしれない。えみるがどこか遠くに行ってしまうこともあるかもしれない。
 もしそうなってしまったら、そのとき現実に残るのは無慈悲な事実だけです。
 「私はアンドロイドです。人間のえみるやはな、さあや、ほまれ、はぐたんとは種族が違うから・・・」
 心がなくなってしまえば、後に残るものは犬と猫、アンドロイドと人間という“違い”だけです。

奇跡:ガラスの靴

 今ここにある奇跡がいつまで続くものなのかルールーにはわかりません。
 だから、ルールーは不確かな奇跡に確かな理由づけができないものかとがんばってきました。
 具体的にはいつもえみるの役に立とうとしてきました。
 えみるの役に立って、いつもえみるに頼られるようになれば、もし“好き”という不確かな心の情動がなくなってしまったとしても、ずっとえみると一緒にいられるかもしれません。

 けれどそれはうまくいきませんでした。
 「来ないでください!」(第21話)
 「全部私のせいなのですか!?」(第22話)
 どんなに一生懸命えみるの役に立とうとしても、えみるの方が勝手にルールーから離れていくことがありました。えみるのことばかり考えているのを見透かされて糾弾されてしまうこともありました。
 「私は混乱して、悲しくて、えみるに少し怒りを覚えました」(第21話)
 それどころか、今度は自分の心までもがえみるとケンカしようとしはじめました。
 心はいつも不思議で、奇跡はいつも不確かです。
 結局、ルールーは今でもえみるが自分を好きでいてくれる思いに頼ることでしか、彼女の傍にいる資格を持つことができずにいます。

 今回もルールーの不安な気持ちを取りはらったのは“好き”の思いでした。
 「私はルールーが好きなのです。その気持ちを込めて歌ったのです。ルールーには伝わりましたか?」
 今回も伝わりました。今回も安心しました。
 今回も心の奇跡が種族の違いという事実をいともたやすく塗り替えていきました。
 「好きだと思う気持ちや、楽しいと思う気持ちは、犬も、猫も、鳥も、魚も、人間も、アンドロイドも同じなのです。種族が違うから伝わらないなんてことはありません」
 どうしてそうなるのか、いつまでそうあるのかは相変わらず不明瞭なままですが、ルールーの目の前にある現実は実際にそういう不思議で優しくて暖かいものに満ちていました。

 今ここにある奇跡がいつまで続くものなのかルールーにはわかりません。
 ですが、今ここに“好き”という奇跡が存在することだけは確かな現実でした。
 だったらもぐもぐの恋は成就するかもしれません。
 種族の違いは心の起こす奇跡が塗り替えてくれています。
 ならばルールーが今すべきことは結局何を恐れるよりも先に、心の奇跡を信じて、もぐもぐを応援してやることでした。
 ルールーは今、えみると一緒に愛のプリキュアをしています。

 「ねえ、ハリー。僕すごく強いでしょう」
 「こんなことしたって俺はクライアス社には戻らへん!」
 「おかしなこと言うんだね。プリキュアと仲間になれるわけないのに」

 ビシンの示す無慈悲な事実なんかよりもハリーの“好き”の思いの方が勝ります。
 「愛というのは暖かくて幸せになれるもの。心があれば感じることができる!」
 愛のプリキュアは、少なくともその思いがどんな力よりも強い奇跡であることを知っています。

奇跡:王子様の恋

 さて。それはいいのですが・・・。
 結局のところ、ルールーがみんなに“好き”になってもらえたのはどうしてだったでしょうか。

 簡単な話でしたよね。ただ、ルールーがステキな女の子だったからです。
 はなや、はなのお母さんや、えみる、それからみんなが彼女とずっと一緒にいたいと望むくらいに。

 もぐもぐはりりーちゃんに恋をして一生懸命がんばりました。
 体力。容姿。勇敢さ。初めはどれも水準未満でしたが、特訓したりみんなの応援を受けたりしながらなんとかサマになるようになっていきました。勇敢さだけは最後までなかなか自信を持てずにいましたが、オシマイダーから逃げ遅れた女の子を助けようとして土壇場で大きく成長を果たしました。
 きっかけはりりーちゃんに会うため。
 そのために、もぐもぐはステキな男の子になったのです。

 その結果、もぐもぐはオーディションが中止になってもりりーちゃんと仲よくなることができました。
 「勇気を出して女の子を守ったもぐもぐ、カッコよかったよ。私のなかではもぐもぐが優勝!」
 オーディションがあるとかないとか、種族が同じとか違うとか、そんなの誰かが誰かを好きになることとは直接は関係ないわけです。
 オーディションなんかなくたって、りりーちゃんは自分の飼い主を守ってくれたカッコいいもぐもぐを好きになってくれました。

 「思いが伝わってよかったのです」
 「種族が違っても愛は伝わる・・・」

 “好き”って、たったそれだけのことです。
 元々“違い”なんて全然関係なくて、ただその人がステキだから好きになるんです。
 そしてたったそれだけのことで心は無限に奇跡を起こします。
 本当はルールーが不安を感じる必要なんてちっともありませんでした。ルールーがステキな女の子である限り、えみるもみんなもずっとルールーのことを大好きでいてくれるでしょう。ルールーがみんなのことを大好きでいるのと同じで。
 もしルールーがみんなと一緒にいるために何かしたいと考えるのなら、それは“えみるのために”何かをするだけではなく、えみるたちにずっと好きでいてもらえるような“ステキな自分になるために”何ができるかを考えてみるべきでしょう。愛は相互関係です。
 そのあたりはまあ、きっとこれからのお話でしょうけれど。

 今回夕日の下で咲いていた花はフロックス。キキョウナデシコともいいますね。花言葉は「全員一致」「調和」「私たちは魂で結ばれている」など。ひとつひとつがお互いの傍で咲き誇りあってはじめて、全体が大きな花畑になるんです。
 訂正:この花はフロックスではなくオシロイバナでした。花言葉は「臆病」「内気」「恋を疑う」。まるで今回ルールーが感じた不安を象徴するような花言葉ですね。ただしこのうちの「恋を疑う」という花言葉、実はオシロイバナがひとつの株から複数の色の花を咲かせることに由来しています。多様性があるから何色になるかわからない不安を覚えるわけですが、実際のところいずれの色であれ根は同じ、花のかわいらしさも同じです。

 ルールーはまだ自分が乗り越えるべき課題をそこまで認識できていないでしょうが、そんなの気付いていなくても、彼女は自分が好きになった人のどういうところがステキなのかをよく知っています。
 「えみる。私もえみるが大好きです。・・・ありがとう」
 ルールーが一番ステキだと思う人は、誰よりも強い気持ちで“好き”の思いをまっすぐ伝えられる女の子でした。
 自分もいつかこういう人になりたいと、憧れをそっと胸に抱きます。

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    コメント

    1. 東堂伊豆守 より:

      SECRET: 0
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      「異種間でも心が通い合えば繋がることが出来る」という今回のテーマへの対比とされた「同種間でも心が通じなければ決裂してしまう」例たるビシン・ハリー"義兄弟"コンビなんですが、ビシンが「ハリーをクライアス社に連れ戻す」ことに執着しているのに対して、ハリーの方は「ビシンをクライアス社から連れ戻す」気が全く無い様子なのが更に厄介なんですよね。
      もし、ハリーが「プリキュアがビシンをHUGで改心させてくれる」と期待しているなら、むしろビシンの説得に邁進しそうなものなんですが、どうも「クライアス社を潰す為ならビシンを巻き添えにすることもやむを得ない」という覚悟を決めてしまった感じがあります。
      なにぶん"未来のプリキュア"がクライアス社との戦いに敗れ"故郷"を奪われている故に、ハリーとしては「どんな犠牲を払ってでも今度は絶対に敗けられない。だから甘い期待には寄りかかれない。」という思いに駆り立てられてしまうんでしょうが、あくまでも「愛する人を守る為に戦っている」ほまれ達当代のプリキュアとの"同床異夢"に正直痛々しさを感じてしまうんですよ。
      果たして、当代のプリキュアはハリーに"愛の力"をもう一度信じさせ"家族"を取り戻すことを諦めなくていいと納得させることが出来るのか?大いに注目していく必要があると思います。

    2. 疲ぃ より:

      SECRET: 0
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       ハリーは独立性向が強いですからね。自分の問題に他人を巻き込むことに責任を感じるのと同じで、他人の問題に自分が干渉することにも抵抗を感じるんだと思います。まあ、その考え方のせいでつい最近ほまれにお説教を食らったばかりなんですが。

       とりあえずハリーは自分の大義のために他人を切り捨てるような人ではないと思いますよ。
       むしろ自分にそんな他人の人生を左右する決断をしていい権利があるとも思わないタイプ。だからこそビシンに干渉しない。ビシンのことはビシンの自由意志で決めるべきと。代わりにハリーのことはハリーが決めて、ビシンには従わない。

       一見お互いの自由を尊重した素晴らしい考えかたのように思えますが、現実には兄弟同士で敵対するハメになっているわけで、意外とろくでもない思想なのは結果を見て明らか。昨今のLGBT論議にも通じるものがありますね。お互い相手の主張を受容しようとして逆に首を絞めあっているあの閉塞感。
       書いていることがとりとめなくて申し訳ないのですが、たぶんこのあたりの話はビシンとの決戦のときに改めて語ることになると思うので今回は平にご容赦ー。

    3. 東堂伊豆守 より:

      SECRET: 0
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      ハリーの独立性向って、彼の「ホームレス孤児」「幼くして小さい子達の面倒をみることを余儀なくされていた」という生い立ちに影響された部分が大きいんじゃないかと思います。「他人に頼る生き方を良しとしない」のではなく、そもそも「他人に頼る生き方を(経験がないので)イメージできない。頼り方が分からない」のではないか、と。
      どうもハリーって精神がいびつな成長を強いられてしまったところがあって、「不必要に大人びた部分」と「妙に子供染みた部分」が同居するアンバランスさが感じられるんですよね。ほまれの方がバランスの良い成長の仕方をしていて(彼女が一時的に他人に心を開けなくなったのは「周囲の期待に応えられないことに負い目を感じた」というあくまでも後天的な理由)、精神年齢はハリーよりもむしろ上のように見える。
      そう考えると、「ハリほま」って「えみルー」同様の"見た目年齢と精神年齢が逆転しているカップル"なのかもしれません。実際ほまれは「ハリーの心を無理矢理こじ開けようとはせず、ハリーが自分から心を開いてくれるのを待つ」辛抱強さ・包容力の持ち主でもあるので。
      では、本作品における"精神年齢がほぼ対等なカップル"はというとおそらく「アン正」、「あきじゅん」、野乃夫妻、薬師寺夫妻、それから……ひなせ君フレフレ!野乃はなをロリコン社長の毒牙から守るのだ!

    4. 疲ぃ より:

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       一般に「大人」としてみられるのはやっぱり地に足の着いた考えかたができる人なんでしょうけどね。ある程度割り切って現実を見た方が、それこそハリーのように安定感や包容力もつきますし。
       ただ、そういう人がいわゆる“人生の酸いも甘いも知りつくした”人かというと、必ずしもそうではないわけで。「大人」と呼ばれる人だからといって人間として完成しきっているかというと、実際のところ全然そんなことはないんですよね。仰るとおり、ハリーの場合は誰かに頼るという経験を積む機会が少なかったんだろうなと思います。
       こういう話になると、まあ、まだ色々と割り切っていない夢いっぱいな子どもたちの方が成長は早いでしょうね。彼女たちは地に足の着いた(≒できないことはできないと最初から諦めた)考えかたをしないので。

       ・・・あ。実は子どもたちも何でもかんでも諦めが悪いわけではないのか。彼女たちも親とか大人とかって存在が無条件に正しいと盲信しがちですし。どこぞのロリコン社長が敵だと知ったときのはなみたいに。

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