今までで一番楽しい夏休みでした。夏休みが終わるの、さみしいのです。
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(主観的)あらすじ
ワールドです! ワイドです! トラベルなのです! えみるの家のプライベートジェットを借りて世界一周旅行へGo! Go! 1泊2日なのでめっちゃ駆け足弾丸旅行になりましたが、おいしい食べ物いーっぱい! かわいい写真いーっぱい! とっても楽しい旅行になりました。
旅のシメは熱海で温泉旅館。ルールーたってのリクエストです。旅の疲れがじんじん溶け出ていく心地です。天狗伝説が残る古くて地味な旅館でしたが、はなたちの旅行はそもそも楽しいものなので、ここでも想い出の写真をたっぷり撮ることができました。
こんな日でもオシマイダーを従えてクライアス社のトラウムが襲ってきます。夏休みが楽しいのなら時間を止めて永遠に楽しめばいいと言ってきます。でも、そんなの違うのです。夏休みの想い出はいつまでも胸の内に残るので、時間なんか止めなくたって楽しい夏休みは永遠なのです。
はなたちは楽しかった旅行を終えて家に帰ります。あとは明日までにやり残していた宿題を片付けるだけです。
世間でも今日は夏休み最終日。お父さんお母さんがたにおかれましては今ごろお子さんの宿題の追い込みで鞭を振り振りチイパッパしているところでしょうか。毎日のようにお出かけをせがまれたあげくの今日、本当にお疲れ様です。
そんなわけで(どんなわけで?)、今話は第24話から続く一連の夏休みエピソードの総まとめとでもいうべき趣向となりました。世界旅行という大がかりな舞台装置を用意した割に、旅先で何か事件が起こるわけではありません。今話においてこの旅行はあくまで“楽しかった想い出”として描かれます。どうしてか。想い出を重ねることにいったい何の意味があるのか。そのかけがえのない価値を、私たちはすでに知っています。この夏休み、私たちははなたちといっしょにずっと学んできました。
まあ、ぶっちゃけ次話に来るっぽいクライマックスの仕込みですね。過去の想い出なくして輝く未来はつくれないということです。なぜなら過去と現在と未来は連続しているから。楽しい想い出が生涯の宝物になるのなら、悲しい記憶もきっと――。
天狗のしわざぢゃ!
前フリするだけしといて、想い出云々は一旦脇に置きます。
「私も、こんなに楽しい夏休み初めてなのです。いつもひとりだったから・・・。今までで一番楽しい夏休みでした。夏休みが終わるの、さみしいのです」
寂しそうにそんなことをつぶやくえみるのため、天狗がそっと優しい風を吹かせます。風鈴がきれいな音を奏でてくれます。
今話は主題と並行して、ちょっとだけえみるの物語も進められました。
今話の天狗やいつぞやの河童もそうですが、えみるはえみるの気付かないところで、いつもたくさんの人に見守られています。
「やっぱり来なければよかった。みんなに迷惑かけてしまったのです。私はダメダメ人間なのです」(第9話)
以前のえみるは自分が好きではありませんでした。みんなの安全を守ろうとして、それがちっとも上手にできずにいたから。そして、だからこそパワフルにみんなを守ることができるプリキュアに憧れるようになりました。
「私の夢はプリキュアになることでした。だから夢を叶えた私が、夢に向かってがんばっている先輩たちの分までプリキュアとしてがんばろうって思ったんです」(第21話)
えみるはプリキュアになりました。けれど、未だ昔のカッコ悪さは克服できていません。プリキュアになった今もえみるはまだ上手に人助けができずにいます。いつもルールーにフォローしてもらってばかりです。
えみるは昔嫌いだった自分のことをまだちゃんと好きになれずにいます。
えみるの代わりにえみるのことを好きになってくれたのがルールーです。それから、はなやいろんな人もえみるのことを好きになってくれました。
いいえ。最初からみんなえみるのことを好きでいてくれていました。
「えみるちゃんはいつでも何かに必死です」(第9話)
ことりをはじめ、学校のクラスメイトたちはなんだかんだ迷惑を被りながらもえみるの一生懸命なところは見てくれていました。
「そうでしょうか。あなたが声をかけた人は皆笑顔になっていました」(第15話)
えみるがお助けしようとして返って迷惑をかけてしまった人たちも、えみるの一生懸命な善意については喜んでくれてしました。
「これ、ライブのチケットなのです! お兄様がくれたのです! これからは、おうちでギターを弾いてもいいって、お兄様が。――諦めなくてよかった。ずっとギターを、音楽を好きでいてよかった・・・!」(第20話)
古めかしいジェンダー観に囚われてえみるを束縛しようとしていたお兄さんも、本当はずっとえみるの大好きなギターを認めてあげたいと思ってくれていたのでした。
「私も、私もルールーといっしょにプリキュアになりたい! お願い!」(第20話)
キュアマシェリは本来ありえないはずの奇跡によって誕生しました。
えみるが良い子だったからです。世界中みんながえみるのことを大好きで、世界まるごとみんながえみるの夢を叶えてあげようとしてくれたからです。
「あなたを愛し、私を愛する」(第20話)
「輝く未来を抱きしめて! みんな大好き! 愛のプリキュア! キュアマシェリ! キュアアムール!」
そういう意味で、愛崎えみるは愛のプリキュアです。
「でもそれってさ、お前さんらがいてこそでしょ」
「お前さんたちがいなくなれば想い出も何も消えちゃうでしょ」
今、ワルモノがえみるの信じる想い出の価値を貶そうとしています。温泉旅館を気に入ってくれたえみるごと、えみるの想い出を踏みにじろうとしています。
えみるのことが大好きなひとたちにとって、それはけっして看過できる話ではありません。
「なんだ!?」
「風!?」
天狗風。
だから、まだお話ししたこともない天狗までもがえみるを守るために力を貸してくれるのです。
「私も、こんなに楽しい夏休み初めてなのです。いつもひとりだったから・・・」
えみるはまだ本当の意味で気付いていませんが、えみるはいつだって世界中みんなに見守られています。
えみるは自分が思っている以上にたくさんの人たちから愛されているんです。奇跡を起こすほどに。
キュアスタを想い出でいーっぱいにする!
と、いったところで本題。
夏休み、楽しかったでしょうか?
お父さんお母さんにいろんなところに連れていってもらえたでしょうか? お爺ちゃんお婆ちゃんの家には遊びに行ったでしょうか? 普段なかなか会えない親戚とか、普段から学校で顔を合わせている友達とか、いろんな人たちといっぱい笑いあえたでしょうか?
あなたはどうでしたか? オッサンオバサンたちは自分が子どものころどうでしたか?
ちなみに私は大半自分の部屋に篭もってゲームして過ごしていました。子どものころからひとりでいる時間が一番心癒やされる真性のヒキコモリでした。人と会うのも楽しいには楽しいんですけどね。
それで夏休みが楽しかったかどうかでいえば、超楽しかったです。(言い張る)
そんな私には、ときどき思うことがありました。
夏休みだからって、どうしてわざわざ出かけなきゃいけないんだろう?
想い出って、そんなわざわざ意図してつくらなきゃいけないものなのかな?
・・・宿題の日記のページを埋めるにはありがたいことかもだけど。
「私の13歳の夏休みは1回だけなんだもん。はぐたんと一緒に新しい楽しいことをいーっぱいする! キュアスタを想い出でいーっぱいにする!」(第23話)
有言実行。はなたちは夏休みの間たくさんいろんなことをして、たくさんいろんな写真を撮りまくりました。
特に今回の世界一周旅行に至ってはほとんど撮影旅行(&グルメ旅行)みたいなものでした。これでもかってくらいいっぱい写真を撮りまくりました。フォロワーのタイムラインがエラいことになりそうな勢いでキュアスタにも大量に投稿しまくりました。キミらのジェット機の飛行速度どうなってんだ。
「ねえ、キュアスタ映えする写真撮れたよ」
そういえば私、写真にもSNSにもろくに縁がありません。出不精なんですから当たり前ですね。
「近頃はプールがある大型ホテルにお客を取られちゃいまして。なんでもキュアスタ映えするとかで」
「この旅館でもいっぱいいい写真撮れてます!」
どうやら世の一般的な感性の人々にとって写真を撮るという行為はかように大切なことらしい。
「まだまだ夏休みは終わってない! キュアスタをもっと夏休みの想い出でいっぱいにしよう!」
なぜなら、それは想い出を残すための行為だから。
で?
そこで私のようなヒキコモリマインドの持ち主には疑問が生まれます。
そもそもその想い出に何の意味があるのさ。写真を撮ろうが撮るまいが、そのとき楽しいことは楽しいまま変わらないし、そのあと楽しいことが終わってしまうことも変わりません。
「私の13歳の夏休みは1回だけなんだもん」(第23話)
いくら写真に残したところでどうせ過去のことになってしまう一度かぎりの体験。そんな刹那的なもののために一生懸命になる必要がどこにあるのでしょう。
「夏休みが楽しいならさ、永遠の夏休みなんてどう?」
トラウムがすごく魅力的な誘いを持ちかけます。
「時間を止めれば楽しい時間は永遠に続くよ」
その蠱惑をはねのける、我らがプリキュアの論理はこう。
「続くのです、ずっと! ――キュアスタにはたくさんの想い出があるのです!」
何言ってんだコイツ。
“大好き”があふれる未来を描こう!
「楽しい夏休みを邪魔するなんて!」
「邪魔なんかしてないよ。なあ、猛オシマイダー」
どうせ今日と明日で夏休みは終わりなんでしょう? だったらこのまま終わらせるよりもっといい方法があります。トラウムはそういう提案を携えてここに現れました。
「夏休みが楽しいならさ、永遠の夏休みなんてどう? 時間を止めれば楽しい時間は永遠に続くよ」
夏休みといえばそれはそれは楽しいものでした。私もいつもまだ終わってほしくないと思っていました。
めいっぱい満喫したはなたちなら、きっとなおさら。
「今までで一番楽しい夏休みでした。夏休みが終わるの、さみしいのです」
「まだまだ夏休みは終わってない! キュアスタをもっと夏休みの想い出でいっぱいにしよう!」
もしこの思いが永遠に続くとしたら、それはどんなにか幸せなことでしょう。
いいえ。
「続くのです、ずっと! ――キュアスタにはたくさんの想い出があるのです!」
「想い出こそが永遠。写真は楽しい時間を一瞬一瞬切り取ったもの」
「そうなのです! 写真を見るたびにみんなとの楽しい夏休みを思いだすことでしょう。どんなに時が過ぎても、想い出は心のなかにあるのです。永遠に!」
時間を止めるまでもなく想い出は永遠です。
いいえ。
時間がとめどなく流れゆき、想い出が過去のものになるからこそ、楽しかった想い出は未来永劫輝きつづけます。
前話のたんぽぽお婆ちゃんがそうだったではありませんか。
「想い出が詰まってるから。希望饅頭をつくるとお爺ちゃんとの思い出があふれてきて、このお饅頭だけは味を落としたくなくて、つくれなかった」
「でも、やっぱりおいしい。甘くてほかほかのこのお饅頭を食べると、心が希望でいっぱいになる」
「歳を取るのもなかなかいいもんだ。辛いことも悲しいこともあったけど、こんなに楽しい日が待ってるんだからね」(第29話)
大切にしまっていた想い出をひとたびふり返れば、何十年も経った今でも鮮やかに希望が蘇ってきました。
あの日お婆ちゃんが味わったのは過ぎ去った過去の想い出の味だというのに、そのおかげで歳を取ったこれからの未来のことまで楽しみになってきました。
「私の13歳の夏休みは1回だけなんだもん。はぐたんと一緒に新しい楽しいことをいーっぱいする! キュアスタを想い出でいーっぱいにする!」(第23話)
楽しいこの夏休みは一度きり。ナイトプールも、夏祭りも、ドラマの撮影現場の見学も、出産の立ち会いも、タレント犬のオーディションも、お婆ちゃんのお店のお手伝いも、今年体験した楽しかった出来事は今年しか体験できません。
けれど、楽しかったと思います。今でも楽しかったなと思っているんです。
楽しかったと、過ぎ去った過去のことを今の自分が幸せに感じているんです。
きっと明日も明後日も、夏休みが終わっても、大人になっても、歳を取っても、はなたちは永遠に楽しかった想い出を何度だって噛みしめつづけることでしょう。
だから時間を止めさせるわけにはいけません。
これから想い出をふり返るたびに何度も味わうことになるはずの幸せな気持ちを、ただ一瞬の刹那を楽しみつづけるために捨てるなんて、そんなのもったいないですから。
はなたちはこれからも今年の一度きりの夏休みの想い出を何度も味わっていきます。
来年はまた新しい夏休みがやって来ます。そうしたらまたさらに新しい楽しい想い出が積み重なっていくことでしょう。夏休みだけじゃなくて、冬休みも、春休みも、何気ない毎日もずっと、楽しい想い出は日々どんどん増えていくはずです。
そんな未来を捨ててまで今年の夏休みだけに固執するなんてもったいない。
「続くのです、ずっと! ――キュアスタにはたくさんの想い出があるのです!」
今日が楽しかったからこそ、明日は“今日”を“昨日”に変えて積み重ねていくんです。想い出として永遠に残すために。
「よし。キュアスタ、夏休みの想い出でいっぱいだ! ホント楽しい夏休みになったなあ」
楽しかった夏休みが終わります。けれど、はなの心は今日も幸せでいっぱいです。きっと明日もいい日になるでしょう。想い出となった昨日はいつまでも永遠です。
・・・もっとも、宿題を終わらせられなかったら先生に叱られて、トータルでめちょっく!な日になるかもしれませんけどね。
不穏な+α
さて、ここで感想文を締めてもいいのですが、次話に向けてもうひとつだけ。
「でもそれってさ、お前さんらがいてこそでしょ」
「お前さんたちがいなくなれば想い出も何も消えちゃうでしょ」
トラウムが何を思ってこんなことを言ったのかはまだ判然としませんが・・・。
そもそも想い出って、当人がいなくなればいっしょに消えてしまうものなのでしょうか?
「やめて! みんなカッコ悪いよ」(第23話)
前の学校ではなが友達のためにがんばった優しさ。あれははなが転校したら全部消えてしまうものなんでしょうか?
あるいははなが逃げてきた悲しい記憶。あれは転校したくらいで全部無かったことにしまえるものなのでしょうか?
いいえ。それ以前に――。
もし仮に悲しい記憶を無かったことにしてしまえるとしたら、せっかくのステキな優しさまでいっしょに消えてしまったりはしないでしょうか?
この夏休みのエピソードは総じて過去にまつわるものがほとんどでしたが、さて、必ずしも楽しい想い出ばかりでは無い様々な過去を抱えていた彼らの場合はどうだったか。
次回、はなの過去が訪れます。
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