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プラネット・ウィズ 第9話感想 騒々しい。鬱陶しい。関係ない。ままならない。

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葉介も私といっしょに戦ってくれたんですよ。夢のなかでは結構頼りになったりして。ふふ。――あいつにはナイショですよ。

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(主観的)あらすじ

 あれから宗矢は自室に引きこもっていました。封印派を退けること、竜を倒すこと、そのどちらのためにも自分が戦う理由はないように思えました。むしろ彼らの好きにさせて今いる現実を壊してもらった方が、いっそ幸せになれる気さえしていました。そこまで考えて、それなのに宗矢は悩んでいました。
 先生や銀子、のぞみは宗矢に何をしろとも言いませんでした。ただ心配そうな顔で待ちつづけていました。
 封印派の襲撃。いつも紅華のうしろにいた羊谷でした。過去に兄を亡くし、今は紅華の心が封印され、彼は全てを失いました。従って彼にとっての世界とはもはや彼ひとり分の大きさでしかなく、そんな彼の世界観を反映したサイキック能力は、まるで自分自身を抱きしめるかのごとく容易に地球全体を静寂で包みこみました。地球の封印は成りました。
 地球には楽園の民の干渉を受けた宗矢だけが残りました。宗矢は地球の人々に訴えました。決断はひとりひとりに委ねると。その前提のうえで、どうか地球人には自分たちの故郷のような間違いは冒さないでほしいと、涙ながらに個人的な考えを訴えるのでした。人々の心は揺さぶられ、地球に喧噪が戻ってきました。
 味方したい人たちの味方になる――。傍にいてくれる人たちとともに戦う宗矢は羊谷を破り、いよいよ封印派に決戦を申し込みます。

 羊谷がらみの展開予想は案の定大ハズレ。さすがにそこまで悪趣味な構図にはなりませんでしたね。
 羊谷の封印の仕方を見て、『女神転生3』に出てくる“ムスビのコトワリ”を思いだしました。思想としてもかなり近いもののように思います。ゲームをプレイしていた当時はあの思想に対する反論が思いつかず、というか共感すらしていたものですが・・・、人間変わるものですね。今ならきっと明確に拒絶することができます。あれはねーわ。
 さて、宗矢の方は今話で半分だけ答えを出して立ち直りましたね。「倒したいやつの敵だ」の部分を再度見直すのはまた次回以降に持ち越しっぽい様相ですが、まあ残り3話もあることですし、よゆーよゆー。(例によって当たらない展開予想)

#seal//…basic_idea;”静寂”

 「・・・いいよな。封印されれば夢のなかで幸せに暮らせるし、竜に殺されれば死んだみんなに会える」
 私はたいがい個人主義的な考えかたをする人間でして、そして私のような人間の場合、こういった露骨なダメ発想にすら反論する言葉を持ちません。
 だって、本人が幸せならそれが一番いいことじゃないですか。私たちは主観でしか物事を認識することができません。仮にいくら他人を幸せにできたところで、それをすなわち自分の幸せとして捉えられる視点を私たちは持ちません。私たちは自分自身が幸せになることでしか幸せを認識することができません。だったら、まず幸せにするべきは自分自身のはずです。
 他人の幸せを見ることが自分を幸せにすることにつながるなら、そのときはそういう手段で自分を幸せにしてみてもいいでしょう。他人を苦しめることが自分の幸せを損なうことにつながるなら、その場合はそういう手段を避けるべきでしょう。しかし何にせよ最終目的は自分の幸せです。それを果たせずして、私たちは自分が生きる意義を認識することができるでしょうか。私たちが主観で捉えることのできる範囲は限られているのに。

 「全部無いんだよ! もう、全部、無いんだ。いないんだ! みんなみんな全部無いんだよ! 無いんだ!!」(第8話)
 宗矢は復讐に身を焦がして満たされず、町を守ろうとして果たせず、戦う理由を完全に失いました。
 戦いは宗矢に何もくれませんでした。全部奪われっぱなしで何ひとつ取り戻せず、戦いのあとにはただ空っぽの自分だけが残りました。
 だとしたら宗矢にとっての最善は“戦わないこと”です。封印されるのでも死ぬのでもいい、いっそこのまま空っぽな自分まで捨ててしまえたら、少なくとも満たされない思いからは救われます。それが取りうる選択肢のなかでは一番幸せ。
 ここしばらく悩みつづけて、宗矢はそのことに気付きました。

 けれど、どうしてでしょう。結論らしい結論に達したというのに、宗矢のわだかまりはまだスッキリしません。

 同じ思いを、羊谷も感じていました。
 「・・・幸せそうな寝顔ですね。きっと彼女の夢に、僕なんかの居場所はないでしょうけど」
 兄を失いました。愛する人の心を失いました。そして情けないことに、自分はそのたった2つしか初めから持ちあわせていませんでした。
 大切な2人を失って、羊谷には空っぽの自分だけが残りました。
 「どうだったか、ですって? 明確に世界の終わりをイメージできましたよ。今なら世界を封印できます」
 どうしてでしょう。羊谷の心は、それでむしろスッキリと迷いから解き放たれていました。
 いいえ。こちらの方が普通なんです。目の前に1本きりの道がまっすぐ伸びているわけですから。迷いようがありません。

 「――健闘を祈る」
 バカバカしい。どうせやることはひとつなんです。健闘しようがどうしようが今さら何も変わりません。
 「お望みどおり、戦って結果を出しましたよ、閣下」

 そう。どうせ何も変わらないんですよ。
 だって羊谷の世界には自分1人しか存在していないんですから。
 昔は兄が、あるいは紅華がいて、彼らなら羊谷のやることに干渉することができました。たとえば自分よりも優秀な兄は紅華の心を得ることができました。たとえば気高くも優しい紅華は兄が死んでからも彼に恋しつづけました。
 「サイキックは使用者の世界観に左右される。世界と同じ重みのものを失った彼は、世界と同調できるワン。今なら地球の封印も容易だワン」
 羊谷の世界には元々3人しかいませんでした。その他の人々は路傍の砂粒と同じ。羊谷の人生において何の影響も及ぼさない存在でした。羊谷の生きかたに干渉しうるのは兄と紅華のみ。そしてその2人はすでに失われました。
 もはやこの世界は羊谷1人のもの。ならば今の羊谷は無敵です。

 「世界の大きさなんてせいぜいこのくらいでしょう。・・・じゃあ、おやすみ」
 たとえば、あなたは学校の教室でうまく友達をつくれなかった経験があるでしょうか?
 友達のいないひとりぼっちが休み時間のたびにどう過ごしていたか知っているでしょうか?
 自分自身を抱くように腕を組んで、そのまま机に突っ伏すんです。つまりは静かに寝て過ごすんです。たったそれだけであなたがた砂粒ごときの耳障りな笑い声などどうでもよくなります。
 私はひとりぼっちでいるかぎり、私だけの力で私の目の前の世界を支配することができます。

 封印は成りました。

#interrupt//…stand_by;”おせっかい焼き”

 ところが、同じ思考に陥りながらも宗矢は羊谷と真逆の道を歩みました。
 「宗矢くん、あれからますますふさぎ込んじゃって・・・大丈夫かな」
 「ウニャ(大丈夫)」
 「黒井くん。起きてる? 辛いんだね。思いだしちゃったから。張りつめていたものが切れちゃったんだね」

 なんのことはない。周りがやかましかったからです。

 羊谷と違って宗矢はひとりぼっちではありませんでした。傷つけないよう慎重になりながらも、こちらを心配することだけはしつこくもやめないおせっかい焼きが3人も近くにいました。
 幸か不幸か宗矢もまたお人好しな子でした。部屋に閉じこもっていながらも、隣室にいる人たちが自分を気にかけていることを意識せずにいられませんでした。
 「黒井くんのどんな気持ちも私は味方するから。地球人も宇宙人も関係ない。私は、私が味方したい人の味方だから」
 だから、宗矢はひとりぼっちになることができませんでした。自分のために語ってくれる言葉は寝たふりしたって勝手に耳に入ってくるものです。
 そして気がつくんです。

 「それで、当然この状況をなんとかできるからこそ姿を見せたんだろうな?」
 「なんとかしてほしい?」

 封印された静寂のなかで宗矢の胸に思い起こされるのは、まあ、大したことのない日常の光景でした。それから、それを守るために戦ってくれたおせっかい焼きたちの勇姿。

 小さなちゃぶ台を囲んで朝ご飯を食べることが宗矢の戦う理由になりうるでしょうか?
 毎日学校に通ってしょうもない課外活動をすることが宗矢の戦う理由になりうるでしょうか?

 わかりません。
 わかりませんが、そんなことのために必死になって戦ってくれた人たちがそこにいます。
 そんなことを体験させるために体を張って強大な竜から守ってくれた人がそこにいます。
 「本当の英雄ならそこに転がっているよ」
 まるでいつか自分のことをそんなふうに見てくれたのと同じように、宗矢は。
 そして気がつくんです。

 「町を守ってくれてありがとう!」(第5話)
 ろくに事情を知らないくせに、自分の目から見た人間性だけを根拠に他人を信じた人がいます。
 「帰ってください! 黒井くんは今まで町を守りました。守るためじゃなくても、戦ってくれました。――ごめんね。・・・ありがとう」(第8話)
 事情を知ってなお、自分の信じたものを信じて他人を信じつづけた人がいます。
 町を守ってくれた優しいヒーローとして。

 ならば。
 「――この子は私が引き取り、育てる。そしてこの子の人格をもって証明する。この子のなかにも愛があることを。シリウス人にも愛の進化種族になる可能性があったことを。お前の正義感が殺したのは未来の愛の進化種族だったと証明する!」(第7話)
 シリウス人の罪過を目の当たりにしてなお無根拠に少年の未来を信じてくれたネビュラの戦士は、そう。
 「本当の英雄ならそこに転がっているよ」
 宗矢を守ってくれた偉大なヒーロ-でした。

 宗矢が誰かを信じることができるのならば、他の誰かも宗矢のことを信じられてもいい。
 「私は、私が味方したい人の味方だから」
 「俺は俺が味方したい人の味方で、俺が倒したいやつの敵だ!」
(第5話)
 他の誰かが宗矢の味方をしてくれるというなら、宗矢も誰かの味方をしたくなってもいい。
 誰かの行いを見つめるたびに、自分のなかにもそういうことをしたかった気持ちが見つかります。
 空っぽだと思っていた自分のなかに、他人の姿を映す鏡があることに気付きます。

 たとえ宗矢のなかに戦う理由がひとつもなかったとしても、代わりに誰かが戦ってくれるなら、そして宗矢がその人の味方になりたいと思うのなら、だったら、宗矢はもう一度戦ってもいい。
 「俺は、俺が味方したい人たちの味方だ!」
 誰かの戦う理由を模倣するように。

#unseal//…basic_idea;”共生”

 「今、みんなすごく満ち足りた気持ちだと思う。きっと幸せで、救われた気持ちで、その夢のなかにずっといたいと思っていると思う」
 「でも、そこが夢なら目覚めたいという人は手を挙げてくれ。無理はしなくていい。俺だって無くなった故郷の夢を見てたらきっと目覚めたくないと思う。だから、本当に現実に戻りたいと思う人だけ、手を」

 宗矢は「目覚めてくれ」とは言いませんでした。しょせん自分は他の星から来た他人です。彼ら地球人に代わって勝手に何かを決めてしまうことはできません。

 「地球のみなさん、聞こえますか。俺は宇宙人です。故郷の星をなくし、今はこの地球に住んでいます」
 「俺の、俺の星は、俺たちは間違えた! でも! この星のみんなは間違えないでくれ!!」

 他人である以上勝手に決めることはできませんが、勝手に自分の気持ちをぶちかますことならできます。
 宗矢はここではじめて自分がこの星に“住んで”いることを認めました。

 そして、他人ではあるけれど隣人ではある身として、守りたい人たちの幸いなることを勝手に祈りました。
 のぞみが宗矢のヒーロー性を勝手に信じたように。先生が宗矢の愛の進化の可能性を勝手に信じたように。
 勝手に祈るだけ祈って、後は本人たちが決めてくれることを信じました。
 つい先ほどまで先生や銀子やのぞみが宗矢のためにそうしてくれていたように。

 たとえ自分が空っぽになってしまったとしても、戦う理由をなくしてしまったとしても、誰かの行いのなかに代わりのものを見出すことができます。あなたは誰かと関わりあいながら生きているし、誰かもまたあなたと関わりあいながら生きているからです。
 たとえあなたの心が空っぽになってしまったとしても、誰かの心のなかにもあなたはいます。
 それをまた借りてくればいい。
 宗矢の戦う理由は、先生や銀子やのぞみのなかにありました。

 羊谷による封印は、ひとりぼっちで眠る静寂な世界観によるものでした。
 羊谷は世界にひとりぼっちで、だから彼は誰にも干渉されません。だから彼は無敵でした。
 他人が存在しない世界というのは幸せに生きるために合理的なありかたかもしれません。他人の干渉を許しているかぎり、いつ自分の幸せを妨害されるかもわかりません。
 たとえば羊谷の兄が紅華を勝ち取ったように。たとえば紅華が羊谷ではなく兄に惹かれていったように。
 ひとりぼっちで眠れば、もう他人のせいで苦しまずに済むことでしょう。

 静寂の世界に宗矢の叫び声が響きわたりました。

 勝手に誰かの隣人になって、勝手に誰かのために訴えて、それで誰かに声を届かせました。
 静寂な世界なんてナンセンスです。
 だって、そんなもの、あなたのために声をかけてくれる誰かがいるかぎり成立しませんから。
 あなたが支配できるものは結局あなた自身だけで、他人なんてものはあなたの都合に関係なく勝手なことを仕掛けてきます。

 「ここは俺の星じゃねえし、あいつも俺のカタキじゃねえ。でも、ここには俺を守ろうとしてくれた人や、俺を助けてくれた人たちがいる。俺は俺が味方したい人たちの味方だ! そんだけだ!!」
 宗矢はひとりぼっちになれませんでした。
 ひとりぼっちになるにはこの世界の人々は存外おせっかい焼きで、そして宗矢自身もそんな彼らを無視できない程度に優しい子でした。

 あなたのまわりの世界だってそうでしょう?

 「幸せそうな寝顔ですね。きっと彼女の夢に僕なんかの居場所はないでしょうけど」
 いいえ。
 「兄さーん! 紅華ー!」
 紅華は夢のなかでも現実と変わらず、羊谷が傍にいることを喜んでくれていました。

 「僕の紅華とともに眠れ、世界」
 いいえ。
 「戦いはどうなった。葉介は?」
 紅華は静寂の世界で夢に耽溺することを良しとせず、宗矢の呼びかけに真っ先に手を挙げていました。

 「ダメだ。助からない。・・・まあいいか。どうせ――」
 いいえ。
 「葉介。今までごめんな・・・」
 紅華は亡くなった彼の兄に心囚われながらも、ちゃんと羊谷のことも大切に思っていました。

 いくら羊谷が自分はひとりぼっちだと思い込もうと、結局彼はひとりぼっちになりきれませんでした。

 だから、封印は成りませんでした。

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