プラネット・ウィズ 第11話感想 おせっかい焼きの正体。

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・・・ねずっちはやめてくれる?

(主観的)あらすじ

 それから5年が経ちました。穏やかな時間の経過に地球の多くの人々はあの事件の記憶を薄れさせ、一方で忘れまいとする人々は今もテレビなどで熱弁を振るっていました。地球の衛星軌道上にはネビュラの旗艦が逗留し、地球人有志を含めた多種多様な姿の人々が協力しあって竜の目覚めに備えていました。様々な思想や意見が混和し、しかしお互いを尊重しあい、共存していました。
 宗矢は大学生になりました。背も高くなり、あの楽園の民とよく似た面立ちに――つまり尊敬していた兄と同じ顔に、成長していました。彼の隣にはのぞみの姿。彼女は宗矢を支えるための唯一無二の才能を開花させ、宗矢とともにネビュラの作戦部隊に参加していました。
 作戦名:下天送り。いよいよ竜との最後の戦いがはじまります。目的は竜の固執している肉体を破壊し、彼をかつての同胞・楽園の民と同じ存在次元へと引き上げてやること。手段は荒っぽくなりますが、これはあくまで彼を許すための戦いです。ならばその鋭鋒を務めるべきはかつて彼に最も憎しみを募らせたシリウスの代表・宗矢であるべきでしょう。

 ここまで散々いろんなことを書いてきました。ある程度製作スタッフの意図に合致していそうな内容や、てんで見当違いな考えかた、何言ってんだコイツ?ってなアホウなタワゴト、ホント好き勝手いろんなことを書いてきました。そろそろ総括しないとなあ、と思って自分の感想文を読み返して頭を抱えました。こんなのどうやってまとめろと。
 うん。諦めました。レインボウですよ、レインボウ。カラフルですよ、カラフル。この物語の着地点はどうやらそういうところのようですからね。ならば全部、おけまる。
 色々しっちゃかめっちゃかですが、でも結局のところ全部私の本心です。だからどれかをあえて否定する必要も、どれかひとつだけをあえて選択する必要も、ない。たぶん。全部ありのまま私の胸のうちにサラダボウルして、そのうえで全体としてより善く生きる方法を模索しつづけたいと思います。(できるかどうかは知らん / 結局いつもどおりか)

不完全なひとりひとり

 「――ご主人。不安ではありませんか?」
 「なあんも起きないから観光客も飽きちゃって、商売になんないよ」
 「5年前の集団意識喪失事件! あのときの目覚めの使者の言葉を忘れたんですかね!?」
 「でも4年もピクリともしないんじゃありがたみもないよなあ」

 多くの地球人にとって一連の事件は過去のものとなりました。
 今を見つめる人々は平常の生活に戻り、一部には過去の教訓を大切にすべきだと息巻く人々もいます。

 これをどう捉えるかは観る人それぞれに意見が分かれるところでしょうが、私は総じてこれは善いことだと思います。
 過去に学んで危機感を持つことは大切なことで、その一方で現在の営みに目を向けて穏やかに生きることも大切です。どちらが欠けても私たちは幸せに生きることはできないでしょう。
 ですが、必ずしも誰もが両方を兼ね備えられるわけではありません。そもそもが両極端な事柄ですしね。平和に生きている人に危機感を持てというのもムチャな話ですし、不安に駆られている人に穏やかに生きろと言ってみたところでどうなるものでもありません。誰もが違う視点を持っていて、それぞれが違う考えかたをしているのですから、誰もが同じく両方を兼ね備えられるわけがありません。

 ですが、です。
 ですが、それでも、私たちは両方を兼ね備えられます。幸いなことに私たちはひとりひとり違うのですから。ある考えかたをした私の隣には、別の考えかたをするあなたがいるのですから。だから、きっと大丈夫です。
 できることできないことがあってもいいじゃないですか。意識の高い低いがあってもいいじゃないですか。
 できないことがあれば誰かに助けてもらえばいいんです。できることがあるなら誰かを助けたらいいんです。それで私たちは実質的に両極端を兼ね備えられます。心をつなぎあうことで。
 だから、みんな違った生きかたができることは幸せなことです。

 「ネビュラは戦争に慣れてないんだよ。でも、テレパスを使った支援には慣れてる。そっちは彼らに任せて、俺たちは俺たちのことに集中しよう」
 「まあ、どうせ俺らも露払いしかできないけどな」

 それは案外ネビュラも同じこと。彼らにだってできることとできないことがあります。そうでなければシリウスの破滅を食い止められずに嘆くものか。そうでなければ先生と閣下がその後に道を分かつものか。
 彼らのなかですらひとりひとりにできることとできないこと、持てる考えかたと持てない考えかたとがあって、そのうえにさらに集団を総じての得手不得手も存在します。

 ちなみにこれは偉そうに高次元存在を自称する楽園の民であっても同じこと。彼らは肉体を捨て去っており、肉体に固執している竜に直接干渉することができません。だから宗矢に協力を求めました。
 そもそもこの人、意外とわかっていません。
 「意気込んでいるところ悪いけど、もう少し緊張感を持ってもらいたいね。竜は強い。犠牲者が出る覚悟はした方がいいよ。いざってときに固まらないように。なにより君が死なないようにね」
 いいえ。宗矢はかつて町を守るヒーローで、今や地球、あるいは宇宙を守るヒーローです。5年前に高天原のぞみがそう決めました。実態はどうあれ、のぞみがそう信じてくれて、宗矢がそうありたいと願うかぎりは、宗矢はそうあろうと努めるべきです。
 もちろん楽園の民の危惧も正論です。彼は彼らしくそういう自分の意見を大切にすべきでしょう。
 しかし――。
 「宗矢くんが大丈夫って言ったんです。だからきっと大丈夫です。宗矢くん、やればできる子ですから」
 それはそれとして、他人のありかたを認めることもまた、大切です。

 その宗矢とのぞみもまた、それぞれ別の人間です。
 宗矢はシリウス人で、誰かを守りたいと願う優しさを持っていて、実際に誰かを守るために戦う前線戦闘員です。
 のぞみは地球人で、誰かを一途に信じられる強さを持っていて、実際に誰かを支えるために戦うテレパス支援部隊員です。
 「大した子だ。宗矢くんといるときは宗矢くんを通じて僕が見えるんだね。この相性だけはネビュラのトップテレパスにもマネできない。君はきっと宗矢くんの力になれるよ」
 それぞれ違うふたりが、誰よりも強くお互いを思う気持ちでつながっています。だからこそきっと竜にも封印派にも勝てたんです。今さら言われるまでもなく、5年前からとっくにふたりのつながりは強い力を持っていました。

 この世界に完璧な存在なんてただのひとりもいませんが、その代わりいろんな特性を持った人々が宇宙中に数多存在しています。

 完全な可視光の色を白として、赤色の波長域が欠けたら水色、緑が欠けたら紫色、青が欠けたら黄色になります。そのようにして世界は生命の数だけ無数の輝きに彩られていて、それでいて全体として見れば欠けている波長域などわずかもありません。
 宇宙のなかで地球は青色を管轄するのでしょうか。宗矢は藍色で、のぞみは栗色、先生は紫色、銀子は常磐色で・・・。
 「カラフルなんだよ。ひとりひとり」(ED)

唯一の視座へ

 「夢を見ていた。地球人になる夢を。あるとき、地球がネビュラに襲われると知り、私の念動装甲を粉にし、素質ある者に与え力を目覚めさせ、ともに力を振るい戦った。――地球はどうなった」
 「無事だよ。みんな元気に地球人してらあ」
 「ではここに何をしに来た。ネビュラ、そしてシリウスの生き残りよ」

 この人は優しいんです。優しいから自分を見失うんです。先生や閣下と同じで。

 やりたいことはただひたすら他人を守ること。
 「この世のありとあらゆる全ての武力を廃絶し、私のみが唯一の超武力を保有する! そして私は正義の番人として、全文明の戦意に対する抑止力となり、君臨し、統治する! 全宇宙に約束しよう! この世を争いなき平和の理想郷にすると!」(第6話)
 竜造寺隆は誰よりも暴力を嫌っていました。嫌っているからこそ、自分ひとりが一身に暴力を受け持ち、他の誰もが暴力に関わりなく生きられる世界を夢想しました。

 それで、敗北しました。
 その敗北を自覚したうえで彼は問います。
 「ではここに何をしに来た」
 そんなの決まっているじゃないですか。
 「迎えに来たよ。おいで、君のいるべきところへ。アズラバラクラ」
 彼はどうして負けたのか。彼はどうして人望を得られなかったのか。彼の敵がどうしてヒーローと呼ばれえたのか。
 それは、彼がかわいそうだったからです。

 「またか。またか! ネビュラ! 心を奪うことが好きな連中め!」
 このことばかりは私も同意します。ネビュラの愛はつくづく押しつけがましい。
 ですが、そのくらい押せ押せでいかないとあなたは気づいてくれないじゃないですか。
 誰もあなたの正義を望んでいないと。
 あなたひとりを犠牲にしてまで、自分たちだけが理想郷に至ることなど望んでいないと。
 「私の正義に異を唱える愚か者ども――!」
 優しい瞳をした竜よ。あなたを我が子として愛した地球人は、ずっとあなたの行く末を案じていました。
 「隆は、昔は優しい子だったんじゃ。弱い子を庇ってガキ大将とケンカしたり――。あの子から力を取りあげてやってくれ。他人様に自分の正義を強制する力なんてものがなければ、昔の優しい子に戻るかもしれん」
 「隆に、世の理不尽に耐え、なお優しい。――それが正義より尊いものだと伝えてくれんか」
(第6話)

 あなたが眠っている間にいろんなことがありました。
 シリウス人の末裔は手前勝手な復讐が自分の心に何も残さないことを思い知り、自分が本当に為したかったこと――大切な誰かを守りたいという思いに気づきました。
 地球人たちは目覚めつつある己が力に恐れを抱き、しかしそれでも、誰かを傷つけないよう孤立すること(自らを封印すること)より、自分に手を差し向けてくれるおせっかい焼きたちと共生することを選びました。
 シリウスを救えなかったネビュラの戦士たちは己が無力を嘆いて一度道を分かちましたが、それぞれの道はやがて地球人に愛の進化を促す結果に合流しました。
 誰もがそれぞれ自分の信じるもののためにもがき、悲しみ、しかしやがてお互いの存在を認めあうことで、自分の存在意義をも取り戻すことができました。

 ひとりぼっちの優しい竜よ。
 あなたは自分自身を愛することができるでしょうか?
 「正義は誰も許しはしない。許しなくして愛はなし。愛なくして魂なし。私が! ネビュラが! シリウスが! 君を許しに来た!!」
 今の私たちにはあなたを愛する用意がある。
 ここにはとびきりのおせっかい焼きばかりがそろっている。

家族になって、家族として

 「誰もがそれぞれ正義のなかで正義を見失う。完璧な世界は無いのに」(ED)
 誰もがそれぞれの正義を持っていて、しかしいずれも絶対に正しいということはありません。
 視点が変われば正義は変わり、しかし正義じゃないからといって悪というわけでもありません。
 この世界に息づく者たちは全て不完全で、そういったもの全ての総体が世界というもので、だから、不完全なあなたの正しさもこの世界の正しさをかたちづくる大切な一要素。
 世界は一様な純白ではありません。数多の色を織り交ぜたカラフルで賑々しい多様性に満ちています。

 「怖い?」
 「まあな」
 「へえ。宗矢くんにも怖いものがあるんだね」
 「なんだよ。あるよ」
 「ふふ。5年前の戦いでムチャばっかしてたくせに」

 世界中あらゆる人はひとりとして同じ人間が存在しません。
 ならば窮極的には私たちは誰ひとりともわかりあえないかもしれません。

 「そういうの、シリウス人の気性かもな」
 「リゲル人は呑気だから、余計びっくりしたかも」

 けれど、私たちがそれぞれ違うことは明らかなのですから、それぞれの違いについてならわかりあうことができるかもしれません。

 「ボクらリゲル人はネビュラ加入を目指す愛の進化種族さ。ボクらは誰でも助けるし、誰でも許す」
 「――君もだよ、宗矢くん。君は君と無関係な地球を封印から救ったし、君の故郷を滅ぼした竜をこれから許しに行く。君には立派な愛がある」

 そして違いを認めあったあとに残るのは、お互いの共通点だけです。不思議なことに。

 私たちはみんなそれぞれ違う人間ですが、なのに、お互いを理解しあうことができます。
 「家族としてこんなに誇らしいことはない。君はボクの自慢の弟だよ」
 不思議なことに。

 宗矢は地球を救いました。
 「――あ。あとひとつ、これ最後。・・・町を守ってくれてありがとう!」(第5話)
 のぞみの見当違いな解釈を現実にすることで。
 「黒井くんは今まで町を守りました。守るためじゃなくても、戦ってくれました。――ごめんね。・・・ありがとう」(第8話)
 のぞみの身勝手な解釈に支えられたことで。

 「ここは俺の星じゃねえし、あいつも俺のカタキじゃねえ。でも、ここには俺を守ろうとしてくれた人や、俺を助けてくれた人たちがいる。俺は俺が味方したい人たちの味方だ! そんだけだ!!」(第9話)
 彼女が暖かく迎えてくれたおかげで、宗矢はやがて地球に根を下ろすことができました。彼女の周りにある平穏な日常を愛して、彼女と地球ごとその日常を守りたいと思うようになりました。
 「地球のみなさん、聞こえますか。俺は宇宙人です。故郷の星をなくし、今はこの地球に住んでいます」(第9話)
 宗矢は地球に帰属意識を持つようになりました。
 「大丈夫だよ。きっとこの星の人たちは間違わない。みんな、あんたたちに優しい夢を見せてもらったからさ」(第10話)
 我が事のように地球人を信頼できるようになりました。

 「家族としてこんなに誇らしいことはない。君はボクの自慢の弟だよ」
 銀子は宗矢を愛してくれましたが、こんなの特別なことでもなんでもありません。家族なら当然のことです。
 だって、宗矢だって同じことをしているじゃないですか。
 宗矢だって地球の家族になって、地球人のために涙して、地球を守ってくれたじゃないですか。

 「黒井くんのどんな気持ちも私は味方するから。地球人も宇宙人も関係ない。私は、私が味方したい人の味方だから」(第9話)
 「先生はな・・・、先生はお前だって救いたいんだよ!」
(第10話)
 のぞみは宗矢のことを我が事のように信頼し、先生は閣下のことを我が事のように信頼し、それから美羽と晴美や、紅華と羊谷や、岳蔵爺さんと竜造寺隆や・・・。みんな、愛の起点は親しい人とのつながりからはじまっていました。
 「タカマガハラさんはなんで俺に構うんだ?」
 「クラス委員だってこともあるけど――。私も小学生のとき転校して、なかなか友達ができなかったことがあったから」
(第1話)
 おせっかい焼きなんてしょせんそんなもの。みんな相手が近しく思えるからこそ放っておけなくなるんです。たったそれだけのこと。おせっかい焼きに本人の資質自体は特別なところなんてひとつもありません。

 今、人々のつながりは広がりを見せようとしています。
 根津屋なんて最たるもので、キャラに似合わず異星人を口説いていち早く種族間交流を為そうとしつつあります。
 5年前、宗矢はシリウス人でありながら地球人と同じ星で暮らす家族になりました。
 そして現在。
 「我々もひとつ問いたい。この戦い、君は復讐心で挑むのではないのだな、シリウスの子よ」
 「はい。竜を孤独から救い、彼を本当の同胞たちのところへ送るために戦います。彼を許せるのは俺だけだから」

 現在。直近の未来。宗矢は竜を含めた宇宙中あらゆる生命と家族になろうとしています。

 「行くよ。いつか。・・・ありがとう、姉さん」

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