乱世における玉座はアデルのような者にこそふさわしいのではないか――。
(主観的)あらすじ
ダナ砂漠地帯を越えて、シンたちは無事に王都アウルリウムへ上洛しました。イーラ国王はメツ襲来の報を持ち帰ったアデルをねぎらい、また、スペルビア皇帝との信頼を結んだこと、抵抗軍を組織したことなどの功績と合わせ、彼に褒賞として所領を与えようとします。国王はできることならアデルに譲位したい考えのようです。しかし、王位継承権第一位の王弟・ゼッタはそれに強く反対し、アデル自身も自由を重んじてそれを辞退するのでした。
間を置かずメツの襲撃がはじまります。彼の狙いはイーラのアルスの封印装置。イーラのアルスには他国のアルスをたやすく沈めうる兵器としての側面もあるのです。シンたちは人とブレイドが協力しあう得意の戦法を生かして善戦しますが、残念ながらあと一歩届かず、メツに封印装置を持ち去られてしまうのでした。
砂漠楽しい。超楽しい。
フィールドひとつ丸々メインシナリオに絡まず、のびのびと探索できたことによる印象も大きいですが、一般的なゲームの砂漠ステージとはイメージが大きく異なり、砂漠なのに多様なロケーションが用意されていたことが何よりステキ。現実の砂漠も本当に砂まみれな地域はごく一部だけだと聞きますね。ここまでトンチキな地形はさすがにないでしょうけれど。
フィールド探索の楽しさに酔っ払った勢いでグーラも改めてあちこち歩き回り、早くもキズナリング第5段階まで解放できちゃいました。
・・・実はそこまで早くもないのか? 5段目の各解放条件を見た感じ、すでに不穏な気配がプンプンするわけですが。
資格と責任
あ、これ実はアデルがイーラ国の後継者問題を拗らせている構図なんですね。
「おお、我が年若いアレッタ公殿はスペルビア皇帝陛下のご信頼を旅の土産としてくるとは。これはみごと」
最初はなんでこんな道化めいたわざとらしい言い回しをしているんだろう? 演技指導ミスか? とかちょっと思っちゃいました。アデルに王位を取る意志がない以上、この場で王弟に牽制を仕掛ける意味もないですし。
そうじゃないんですね。これ、アデルに対する釘刺しなんですね。
お前が何を考えていようがこちらは期待しているんだぞ、と。かなり本気で(というかかなり焦って)アデルを国王に推したがっていたんですね。継承権第四位にしかならないのに他国で暮らしていた妾腹の子をわざわざ召喚したのも国王本人だという話でしたし。
それでエブリンを封じる話をアデルが辞退したときに数拍のあいだ場が凍ったんですね。地盤が辺境地域だけじゃいくらなんでも国王に推すには不足すぎますもんね。アデルが嫌がるのは分かりきった話であったにしても、この世界情勢じゃ悠長にしてられませんしね。
エブリンがどのくらい有力な領地なのかはわかりませんが、実際あそこでアデルが首を縦に振れば次代の国王になれる可能性は充分にありました。
戦乱下なら追加の褒賞を与える口実なんていくらでもありますしね。公爵なんですから爵位も万全ですしね。国民人気も、官僚からの支持も、どうやらアデル優勢のようですしね。というかまずスペルビア皇帝という後ろ盾が超強力ですしね。ついでに天の聖杯という錦の旗(≒法王庁の公認)もありますしね。唯一、王弟が正規軍の統帥権を握っていることだけがネックでしたが、それも抵抗軍を自領に迎え入れたことで事実上充分に対抗できるようになりましたしね。
これだけ材料がそろっていれば、あとはアデルさえその気になってくれたら、国王の意向を示すだけでも混乱なく継承権順位を繰り上げられるというものですよ。国王自身も人気が高いわけですし。
むしろこれだけの好条件が揃っているアデルがいるせいで、下手に王弟に譲位できない(国民や官僚からの反発を食らう)雰囲気すらありそうです。
まあそもそもあの王弟も相当な暗愚ですが。国王が味方している以上は抵抗軍の問題を切り出したところで公認されるだけって予想できるでしょうに。そしてどうしてわざわざマルベーニの目の前で天の聖杯の件での愚痴を漏らすのか。マルベーニさん完全に見くびってしれっと本音を口に出しちゃってますよ。
「ねえ。メツを倒したとしてそのあとはどうするの?」
「どうって・・・。ユーゴに言ったように、国に帰って畑でも耕すさ。今年はフォルタの収穫ができなかったからね」
「あなたはそれでいいかもしれないけど。他の人は、それで収まるのかしら・・・」
こればかりはね。いくらアデルが自由を望んでいてもままならないですよね。
戦時下は即断即決で速やかに兵を動かすために力強いリーダーが求められ、そして戦後にも混乱する国民感情を束ねるためにやはり力強いリーダーが必要です。もちろん、敗戦後ならなおさら。
能力だけ見たらアデル以上の器はそうそういないでしょう。もし彼が王として立っていたら、その後に起こるブレイド弾圧ムードはだいぶ和らいでいたかもしれません。500年後のルクスリア王国は雲海に隠れる必要なく、もっとひらけた国になっていたかもしれません。
それを思うと、彼の自由を求める気持ちはむしろ立場をわきまえない無責任ともいえるような――。
難しいですよね。自分の都合と他人の都合がかちあう状況って。
だからといってアデルに自由を諦めて自分を犠牲にしろともいいたくないですし。自分だけを優先して他人を犠牲にしてしまうのは、それはそれで自分にとっても不幸せなことですから。
信頼
ついにメツとの初激突があったわけですが・・・ぶっちゃけ彼が世界を破壊しようとする理由に関しては本編とマルベーニだけ見ていればそれ以上語る必要がありません。(たぶん)
なので今回取り上げるのは別の一点だけ。
「驚いた? これこそが人とブレイドが同調する意味よ」
そういう有利があるのなら、なおさら疑問に思わなければなりません。
どうして同じ天の聖杯であるはずのヒカリがメツに力負けしてしまうのか。
「金色の瞳。イーラ人は碧眼のはずだが――。妾腹ってやつか」
「父は寛大でね。そういった分け隔てはしないのさ」
「錯誤だな。それが招く結果を甘く見すぎている。――人間ってのは“そういう”生きもんだろ」
アデルが傑物だからか今のところ街の人たちからそういう声は聞こえていませんが、まあそうでしょうね。王弟もアデルが妾腹の子であることにこだわっていましたし。
「必要ねえからだよ、俺には」
そういう事実を知っているからこそ、ヒカリたちのコンビネーションを目の当たりにしながらもメツは余裕で答えます。
そんなものは張り子の虎にすぎないと。人間が心から他人と協調するなんてことはありえないと。
たとえばほら。メツは皮肉げに笑います。
そこに仮面を被ったブレイドがいるじゃないか。その仮面はいったい何のためのものだ?
「これまでお前ら人間を見てきて確信したことがある。人間ってのは死にたがりだよなあ。涼しい顔をして殺しあい、自滅への道をひた走りやがる」
だから彼は人間を見下して、わざわざそんな彼らと協力しようとするヒカリを見下します。
その“同調する意味”とやらは、街中だからとデバイスの使用をためらうことと釣り合いがとれるほどの戦力か?
そこに反論できるようになるまで私たちはメツに勝つことができないのでしょう。
そんなことを思いながら、現在のんびりとサブクエストを消化しています。(実は次回の記事分までの範囲はプレイ済み)
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