えんどろ~! 第5話感想 勇者をするために勇者になった女の子。と、正反対だった女の子。

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えーと、えと、・・・“私だから”! かな?

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(主観的)あらすじ

 ナラル島唯一の王族にして、古くは初代勇者の血脈にもつながるという由緒正しきラパネスタ家の姫君・ローナ姫が冒険者学校に訪いました。勇者に会いに来たようです。そのユーシャが女の子だということにはずいぶん驚いた様子でしたが、ともあれ王家の秘宝にてユーシャが勇者であることにお墨付きを与え、さらには校内に勇者の威光を広めるためにお祭りまで催してくるのでした。
 食べ物やら景品やら演し物やら会場の何から何までユーシャが描かれていて、ユーシャからすれば照れくさいことこのうえありませんでしたが、みんなが喜んでくれているのを見て、それならいいかと思い直すことにしました。

 ローナ姫は幼いころから勇者の冒険譚に憧れ、いつか勇者と結婚することを夢見ていたそうです。その気持ちはたとえユーシャが女の子であっても変わらないといいます。さすがのユーシャも困り顔。
 そのとき、モンスターの暴れる姿が目に入りました。もちろんユーシャは止めに駆けだします。勇者だからではなく、「私だから」。その言葉はローナ姫の心に強く響いたようでした。

 後日、ローナ姫は再び冒険者学校に姿を現しました。今度はユーシャたちのクラスの、転校生として。

 ローナ姫のような腹芸キャラが参入してくると一気に考えることが増えて、いっそう面白くなりますね。
 とりあえずラパネスタ家の目的は当代の勇者と婚約を結ぶことと、その活動をサポートすることだと素直に受け取ってもいいんでしょうか。なーんか意味深なシーンがたくさんあって気になるのですが。

 そしてこういう色々と情報を隠し持ってそうなキャラクターが出てくると、今度はマオちゃん先生の立場がズンドコ怪しくなりますね。あの人なんだかんだで教師ができる程度の教養以外には、今代の勇者と魔王についての情報くらいしか持っていませんし。まあそちらの情報については逆にローナ姫は押さえていないはずなので、ちゃんと活躍の機会は残されているか。

とりとめなく

「ローナよ。ラパネスタ王国の王女としてそなたが為すべきこと、ゆめ忘れるでないぞ」
 何をしろというんでしょうね。とりあえず手段として勇者と婚約を結ぶことを考えていたのは事実だと思うんですが、どうしてまだ魔王も現れてないこの早期にこんな大々的に動きはじめたんでしょう。
 というかどうやって勇者の誕生を感知したんでしょうね。冒険者学校かサバあたりから報告を受けたのなら、ユーシャの性別くらい事前につかんでいそうなものですが。

「もう。マオちゃんってばひどい。どうして信じてくれないのかなあ」
 クラスメイトはユーシャが勇者だということをまだ信じていないのでわかるのですが、どうしてマオちゃん先生まで信じてくれなかったんでしょうね。彼女はユーシャが本物の勇者だって知っているし、現状の実力もある程度認めているはずなのに。
 もしかして信じられなかったのは、ユーシャの活躍ではなく邪神の存在の方だったり?

「ユーシャ。さっきのお話面白かったよ」
 妖精さん! 妖精さん! 妖精さん! 妖精さん! 喋ったぁぁあ!! ついに喋った!!!!!

「錆びてる! 伝説の勇者の剣、錆びてるんだけど!」
 こういうのってだいたい戦いを終えて休眠するときに錆びるものだと思うんですが・・・。邪神を倒したことで、今代の勇者の役目が終わったとでも判断されました?
 そして前話に引き続きチビちゃんのフラグクラッシャーぶりよ。

「ところで、フジツボにまつわるちょっとイタ怖い伝説をご存じっスか?」
 足の切り傷からフジツボの卵が体に入って、体内でズンドコ繁殖していって・・・っていうアレですね。私は『マナケミア』というゲームで知りました。

「ごきげんよう、みなさん。ラマネスタ王国王女、ローナ・プリシパ・オ・ラパネスタと申します。・・・あら?」
 まるで一目見れば勇者を見つけられたはず、とでもいわんばかりの困惑のしかたですね。勇者が男性だと思い込んでいただけにしても、あの場には男子生徒も何人もいたわけですし。

「お会いしとうございました。私の勇者様」
 ローナ姫はこの時点ではまだユーシャにときめいていません。そもそも彼女の憧れていた冒険譚の勇者は男性のイメージです。彼女は同性愛者ではありません。
 ということは、ここでユーシャに抱きつく(好意を示す)のは当初から計画されていた演技ということですね。

「これは初代勇者様が残し、王家に伝わる秘宝、“紫黒のフェイトゥルース”。その力はあらゆる真実を見抜くといいます」
 で、どんな真実をカルタードに問うたんでしょうね。彼女、ユーシャが勇者かどうかを確認するとは一言も宣言していないのですが。

「おはよう、勇者様」「勇者様おはよう」「今日は遅刻ギリギリじゃないんだ、勇者様」
「さあ、みんなも認めてくれたことだし、今日もがんばって勇者やるよー!」

 ユーシャ的にはこのくらいの状況が一番心地よさそうなものなんですよね。勇者だと認めてもらえただけで、別に賞賛されているわけではない感じ。周りのこの冗談めかした言いかただと“勇者様”呼びブームもすぐ廃れるでしょうし。
 ローナ姫は現状に飽き足らず勇者への敬愛まで求めているようですが、はて、それはいったい何のため? これから婚約をするつもりだから勇者の名声は王家の権威にもつながる――みたいな地味な政治劇はこのアニメの作風に似つかわしくないと思いますし。

「私がつくったお祭り、その名も“勇者祭”ですわ!」
 お饅頭やりんご飴にまでユーシャの顔をデザインしてある徹底ぶりにユーシャ本人は引いていましたが、実際こういうのって定番の戦術ですよね。
 結局のところ一般人に一番アピールが効くのは現世利益なので、神様だろうが英雄だろうが、炊き出しや宴会とセットで広告を打つのが基本です。「いつか魔王をやっつけてくれる!」じゃ人は喜ばないんです。「まさに今おいしい食事にありつける!」の方がよっぽど好印象。屋台の食事ひとつひとつにまでユーシャの顔をデザインするのは、この食事がユーシャのおかげで配布されていることを暗に知らしめるためでしょうね。

「ごめんごめん。でもほら、みんな楽しんでるじゃない」
「うん。それならいいかな!」

 で、この露骨に下心アリアリの広告戦術を前にして、みんなに喜んでもらえたと純粋に喜んでしまうユーシャの善人ぶり。どうやらローナ姫にはちょっとまぶしかったみたいですね。

「私のイメージって、肉弾系聖者・・・!?」
 だってあなた、ヒールはおろかバフすらめったに使いませんし。

「勇者様のお嫁さんになるのが夢でした。その勇者様とこうして本当に出会うことができるだなんて!」
 繰り返しますが、この時点でルーナ姫はまだユーシャにときめいていません。
 でも、きっと勇者と結婚したいと思っていたのはきっと本心なんでしょうね。王の名代としての立場とは別に個人として勇者に会いたがっていましたし。
 ・・・憧れの勇者が同性だと知ってどんなにガッカリしたことでしょう。それでも落胆を胸に秘めて、婚約を進めようと演技しつづけるこの子は責任感の強い子ですね。どうしてそこまでする必要があるのかはまだわかりませんけれど。

「“勇者だから”ではなくて、“自分だから”。・・・あら? あらら? ――あら?」
 ルーナ姫はここで初めてユーシャに心ときめきました。立場に縛られない生きかたに心を揺さぶられるということは、やはりこれまでのふるまいは何か大きな目的のための演技だったということですね。
 ちなみにときめいたといっても、彼女のこの感情が恋愛感情かどうかはまだわかりません。“自分らしさ”を志向しようというのなら、ルーナ姫はむしろこの瞬間ユーシャを愛する義務から解放されているわけですし。

私らしく

 「それは“勇者様だから”、ですか?」
 「それとはちょっと違う・・・ぽい? えーと、えと、・・・“私だから”! かな?」

 ユーシャは勇者という肩書きと勇者らしい冒険にはこだわりますが、勇者という生きかたを望んでいるわけではありません。
 このあたりのニュアンスがすごく微妙で、だから彼女自身なんともふわっとした表現をしてしまっているわけですが、この微妙な違いが彼女にとってはすごく大切なんですね。

 ユーシャは勇者という存在の本来の存在理由、魔王討伐がしたいわけではありません。ただちょっと、みんなで勇者っぽい冒険がしたいだけのようです。
 もしかしたら彼女もルーナ姫のように物語の勇者に憧れたのかもしれませんね。自分もあの勇者みたいなカッコいい人になりたい、と。
 だから、彼女にとって“勇者”とは魔王を倒すための存在ではありません。魔王を倒そうとするのは、あくまでそれが勇者を名乗るうえで必要なことだから。目的と手段が逆転しています。
 反対に、彼女にとって人助けは勇者にとっての義務ではありません。人助けはむしろ彼女が勇者になってやりたいこと。冒険や人助け、勇者らしいことをできるカッコいい人になるために、彼女は勇者を目指しました。こちらもやはり目的と手段が逆転しています。

 ローナ姫はいつか勇者と結婚することを夢見ていました。
 それとは別に、何か王家の目的として勇者と婚約する義務も発生したようです。
 やりたいこととやるべきことが一致しているあいだ、彼女は幸せだったのでしょう。憧れの勇者に出会える瞬間をワクワクしながら待ち焦がれていました。
 けれど、憧れの勇者様は同性でした。
 「でも私たち、女の子同士だよ」
 「愛の前には些末なことですし、法律程度ならなんとでもなります。お願いします。私を、ローナを、どうか勇者様のおそばに」

 ユーシャの疑問と同じ疑問をローナ姫も当然抱いたでしょう。スラスラと言葉が出てくるのは、自分を納得させるためすでに一度考えていたことだからでしょうか。

 勇者と結婚したいという幼いころからの夢は、いつしか別の目的を果たすための手段に。
 逆転。

 ユーシャの飾らない言葉は、そんな彼女の心のなかのねじれを元に戻してくれたんですね。
 「これもまた、世界が定めしひとつの因果」
 憧れていた出会いとは少し違っていたかもしれませんが、良い出会いに恵まれました。

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