えんどろ~! 第6話感想 何をするのか。もしくは何をしたいのか。

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ちゅうか、なぜ誰も彼も我にあめ玉をよこすのじゃ・・・。

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(主観的)あらすじ

 マオちゃん先生が風邪をひいてしまいました。自宅静養してもらうことになりましたが、マオちゃん先生意外と生活力絶無で、ひとりわびしい思いをしていました。熱にうなされる彼女は走馬灯のごとく過去の出来事を思いだします。

 時間遡行する前、まだ魔王だったころのマオちゃん先生は、その当時もさびしい思いをしていました。傍に侍っていたのは融通の利かないメイドゴーレム。配下は四天王含めモブばかり。食事は独り。日々の楽しみといえばポエムを綴ることくらい。
 魔王の務め、世界征服を果たしてしまえばあるいは――と、思っていたところに現れたのがユーシャたちでした。

 熱っぽい頭でひとりぼんやりしていると、そのユーシャたちがお見舞いにやって来ました。
 マオちゃん先生は絶対こいつらろくでもないことしかしないと警戒しますが、ウラハラ、ユーシャたちはまるでお母さんのごとく優しく手厚い看護をしてくれるのでした。ちなみになんと珍しく今回はセイラにも受け持てる仕事がありました。
 いつの間にかすっかり気分を落ち着けたマオちゃん先生は夢を見ます。

 時間遡行したマオちゃん先生は最初苦労していました。子どもだからとなかなか本気で取りあってもらえず、自力では仕事も住居も得られませんでした。ただ、みんな変に優しくてあめ玉くらいなら分けてもらえました。
 転機は冒険者学校のロリコン女教師に拾われたことから。女教師が受けたドラゴン退治のクエストにおいて、マオちゃん先生は魔王時代に学んだ知識と、あめ玉を食べてわずかに回復した魔力とによって、大きな活躍を見せることができたのです。
 そこで腕を見込まれ、今はこうして冒険者学校の教師を勤めています。

 数奇な運命に翻弄され、なんだかんだでたくさんの人の輪に助けられて、今、マオちゃん先生の心はポカポカです。

 前話で無自覚にローナ姫の心を救ったことから引き続き、今話で語られるのはマオちゃん先生だってやっぱり救われていたんだというエピソード。あるいは“魔王を倒してめでたしめでたし”のエンドロールで終わらせなかったことによるギフトのひとつ。

 ローナ姫にとって、王女とは勇者と結婚する役割(ロール)でした。
 マオちゃん先生にとって、魔王とは孤高の役割(ロール)でした。
 では、ユーシャにとって、勇者とは?

とりとめなく

「つまりじゃ。道ばたに自生する薬草は不潔じゃから緊急時以外は――」
 RPGの世界について、よく(私みたいな)ヤボな人間がツッコミを入れがちなのが衛生観念。史実において衛生環境を整えることが感染症対策に効果的だと広く知られるようになったのは、ナイチンゲールの時代になってようやくのことだったりします。(それ以前にもペスト医師あたりには経験則として衛生を意識していた人もいたようです)
 とはいえ美少年美少女が活躍するRPG世界が不衛生だというのもちょっとアレですからね。大抵のファンタジー世界は中世っぽい文化レベルのくせに衛生観念だけやたら先進的になっています。
 このアニメももちろん例外ではありません。道ばたの薬草が危険だという認識もそうですし、ペットと同じものを回し食べるのが禁忌だったり、冒険者学校に保健室があったり、あと校医がちゃんとマスクをしていたり。うん、よきかな。

「魔王ですら逃れられぬゆえ魔王熱とは。人間もよく言ったものよ」
 第2話に登場した“銘酒魔王”といい、ナラル島って意外と魔王に親しみ深いですよね。合算3000年も苦しめられているんですから、もうちょっとこう、『ハリー・ポッター』のヴォルデモートみたいな忌避感があってもよさそうなものなのに。根が呑気なんでしょうね。

「甘ーい! 蜂蜜は完全栄養食ともいわれとるしのう。これなら魔王熱も退散じゃ!」
 様々なミネラルが含まれ、しかも消化吸収が良いというのは確かなのですが、糖分ばかり思いっきり突出していて、栄養バランス的には本当に完全栄養食かというと・・・。成分が含まれてたらいいってもんじゃねーぞ。
 まあ、食欲がなくてもカロリーを摂取できるという意味で、風邪のときにうってつけなのは本当ですけどね。単純においしいので気分も上向きますし。病は気から。ただし腸内環境が荒れに荒れているときは大人でもボツリヌス症を発症することがあるそうなので、病気が重篤化しているときだけは避けた方が無難みたいです。

「さすがに3000年分ともなると細かい記憶が曖昧になっておる」
 あ、いちおう魔王にも過去の記憶は継承されているんですね。知識量で必ずしもラパネスタ王家に劣るとは限らないようです。
 ちなみに“魔王としての記憶が”3000年“分”あるとのことなので、初代魔王誕生から数えて3000年というわけではないと思われます。とはいえ第2話で「何千年以上も大昔」と語られているので、3000年よりは経っているといっても長くて1万年くらい? その間999代も魔王と勇者が現れているというなら、ペース的には先代勇者くらいまだ現役でもおかしくなさそうなものです。

「小物しかおらんのか、四天王!」
 なんという再登場の目が薄そうなモブデザイン・・・。

「私は鳥カゴの中のガーゴイル。でもいつかは羽ばたくの。あの瘴気に満ちたドス黒い闇夜に――」
 このポエム、あのとき少なくともメイには読まれてるんですよね。

「ほら、マオ先生タップしてるじゃない、タップ。まず一回離れて。――ファイ!」
 プロレスって今でも中継放送とかあるんですかね?

「チビも舐めたいの? よーし」
 最近チビちゃんが何かするたび、またフラグクラッシュの伏線か? とか思ってしまう体になってしまいました。今回ならマオちゃん先生の風邪を貰うことで治療を早めた――みたいな。(無い無い)

「森で採ってきた滋養強壮にいい木の実やキノコだよ。メイちゃん、これで足りる?」
 病人1人分の食事ですよ?

「・・・本当に、我の家?」
 病人の枕元に花を生けてはいけません。(無粋)

「あめ玉意外にすげーのじゃ!」
 RPGだと食事がHP回復 / おやつがMP回復の場合と、食べ物がHP回復 / 飲み物がMP回復の場合の2パターンが一般的でしょうか。『えんどろ~!』の世界は前者だったようですね。
 大抵は効力が弱いうえに非売品なのでアイテム欄の肥やしになりがちですが、うっかり店売りの回復アイテムを切らしてしまったときなんかにこの手のアイテムで急場を凌いでみると、脳内でロールプレイがたいへん盛りあがります。

「王立!? それはつまり・・・安定の公務員?」
 中世の文明水準で国雇いに安定も何も・・・って、そういえばラパネスタ王国はウン千年続く、日本すらも鼻で笑えるレベルの長期政体でしたね。よく考えたら思いのほかド安定じゃないですか。やったじゃん。

ロールの終わり

 「あと少しでナラル島を征服し、わびしい魔王城生活に終止符を打てるはずだったんじゃが・・・」
 終止符を打って、そのあとは?

 「魔王である我に誰もがかしずく。・・・なのに、なぜ我は満たされぬのじゃ」
 征服が済んだ世界がどのようなものであるか、彼女は知っています。
 融通の利かないメイドゴーレム。弱っちい四天王。下命するくらいしか接点のないモンスターたち。
 「行け、我が配下よ! 今こそこのナラル島を我ら魔王軍の手に!」
 魔王は君臨していました。魔王は誰よりも強く、誰よりも偉く、誰もを従え、誰をもひねり上げ、誰をも率い、誰よりも上位に立ち。
 彼女が歴代の記憶を継承した瞬間にはすでに征服の済んでいた場所がひとつありました。
 「許す。貴様も食事を共にせよ」
 「従者には許されぬことでございます」

 魔王城。

 もし、彼女があのまま世界を征服していたらどうなっていたことでしょう。
 そんなの知れたこと。
 「トムくんの畑の収穫量は300です。税率が3割の場合、納税額はいくらですか?」
 「バカバカしい。90じゃろうが」
 「不正解です。魔王様に畑を焼き払われたトムくんは税を払えず夜逃げしました」

 世界中が魔王城になるんです。
 誰もが魔王より弱く、魔王より愚かで、魔王に屈し、魔王に虐げられ、魔王に従い、そして、今と変わらず魔王を孤高の座へと押し上げることでしょう。

 わびしい魔王城生活に終止符を打って、さてそのあとは?

 「ちょっとユーシャ! なんでいきなり魔王の部屋に飛び込むの!?」
 「ごめーん。柱折っちゃったー」
 「隠し扉の奥の部屋で詩集っぽいノート見つけたっス」
 「天地の狭間遍く満ちる精霊よ、ほちゃあき我――あ、ごめん。呪文噛んじゃった」
(第2話)

 彼女の魔王としての役割は完遂されませんでした。
 世界で唯一魔王に征服されない少女たちが遊びに来てゴーイングマイウェイしまくった結果、――気がつくと、彼女は魔王城の外に放り出されていました。
 マオちゃん先生は誰よりも強いなんてことはなく、誰より偉くもなく、誰も従えず、誰もひねり上げず、誰も率いず、むしろ子どもとしてちょっと侮られぎみで。
 「――なんで勇者とはあんなに空気を読まん生き物なのかのう」

 魔王城の外では誰もマオちゃん先生のことを恐れず、服従せず、もちろん命令なんかひとつも聞いてくれませんでした。
 代わりに誰もがマオちゃん先生をかわいがりました。何人もの人があめ玉をくれたり、ある人は未成年者略取したり、またある人たちはお母さんになりきって病気の看病までしてくれたり。
 「みなさん、マオ先生がお好きなんですね」
 「・・・えへへ」

 ローナ姫にとって、王女とは勇者と結婚する役割(ロール)でした。
 けれどユーシャが女の子で、それもとびきり自由でステキな子で、彼女に憧れたローナ姫は自分も王城を飛び出してみることにしました。

 マオちゃん先生にとって、魔王とは孤高の役割(ロール)でした。
 けれどユーシャたちがしっちゃかめっちゃかかき乱したせいで魔王城から放り出され、いろいろ振りまわされつつも生徒に人気の幼女先生になりました。

 では、ユーシャにとって、勇者とは?

 この世界の常識では、勇者とは魔王を倒す役割(ロール)のようです。
 ですが。
 「何言ってんの。困ってる人たちを助けるのが勇者じゃない。あれで良かったよ」(第3話)
 「今日は勇者っぽいことができたと思う。みんな、ありがとう!」
(第4話)
 「それとはちょっと違う・・・ぽい? えーと、えと、・・・“私だから”! かな?」
(第5話)
 ユーシャにとって、勇者とは困っている人を助けられる人であり、仲間といっしょにひとつのことをなし遂げる人であり、なんというか自分らしくある人であり。
 ・・・とりあえず、魔王を倒すだけが勇者の役割(ロール)だというつもりはなさそうです。

 「ふん。さながら滅ぼされるために蘇っているようではないか」
 魔王の役割に縛られたままでは幸せになれそうになかったマオちゃん先生。
 「・・・ぽかぽかじゃ」
 彼女は自分に与えられた役割を完遂しませんでしたが、むしろそこから逸脱したからこそ、ずっとほしかった小さな幸せにようやく手が届きました。
 ユーシャがそのためのきっかけをくれました。

 さて、そのユーシャの方は?

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