映画プリキュアオールスターズF 感想その1 For Friends. 身近で大切なもののために。

この記事は約10分で読めます。
スポンサーリンク

何故かはわからない。でも、理由がある。理由があるから戻ってこれたんだよ。

このブログはあなたがこの作品を視聴済みであることを前提に、割と躊躇なくネタバレします。

Side PRECURE

大きな出来事1

メインキャラクター:プリキュア

目標

 プリキュアとは何なのか、示す。

課題

 プリキュアたちは「プリキュアとは何か?」を深く考えたことがなかった。そのくらい、プリキュアたちにとって自分がプリキュアであることは自然なことだった。
 そもそもプリキュアになったきっかけからしてそれぞれ違っていた。ある者は自分らしい矜持のため。ある者は大切な誰かを守るため。ある者は自分の憧れを叶えるため。――なんとなく共通点があるような、無いような。

 この問いはプリキュア自身にとっても答えのよくわからないものだった。

解決

 そもそも自分が今置かれている状況すらわかっていないプリキュアたちは、ひとまず4チームそれぞれにお城を目指すことにした。

 道中にはいろいろな出来事があった。
 あるチームはひたすら騒いで、笑って、おいしいものを食べての珍道中だった。
 あるチームは塞ぎ気味なプーカを気遣い、お互い手と手を取りあう旅路だった。
 あるチームは夢を語りあい、あるいは遠くにいる友達との絆を思いだしていた。
 あるチームは一度ケンカしてしまったが、それでも放っておけずに仲直りした。
 お互い初めて知りあったプリキュア同士なのに、いつもの、当たり前の日常がそこにあった。

 「プリキュアとは何か?」その答えはやはりうまく言語化することができない。
 だが、世界が変わってしまっても、プリキュアたちはいつもプリキュアだった。

きらきら ひらひら

SKY TEAM

 あるとき、ソラは見知らぬ場所で目を醒ましました。

 ここはどこだろう? 悩む暇もなく見知らぬ怪物が襲い来ます。

 どうして? そう思う前に2人のプリキュアが駆けつけてくれました。初めて見るプリキュアでした。

 誰? だけど、それはともかくとしてソラは2人と協力して怪物を追いはらいました。

 これからどうしよう? わからないことだらけですが、ひとまず歩きはじめました。

 遠くにお城がある。あそこに行ってみよう。
 おいしそうな果物がある。食べてみよう。
 2人とも面白い子だ。笑いあおう。

 ましろやみんなに早く会いたい。
 元の世界に帰ってまたヒーローを目指したい。

 だけど、それはそれとして――。
 「ごはんは笑顔」
 「今、一番大事なことをしよう」
 こういう一日、こういう出会いも、これはこれで楽しいものでした。

 「ねえ。プリキュアって、何?」

 もう1人出会ったプリキュア、プリムが難しいことを聞いてきます。

 「・・・相手がどんなに強くても正しいことを最後までやり抜く。それが、ヒーロー!」(『ひろがるスカイ!プリキュア』第1話)

 強いて言うなら、それはソラにとって自分の憧れをかたちにするものでした。

 「大切な想い出なんだ。――レシピッピはお婆ちゃんとの大切な想い出。いつも笑っててほしい。だって、『ごはんは笑顔』だから!」(『デリシャスパーティプリキュア』第1話)

 他のプリキュア、ゆいは大切な人を守るための力だと言いました。

 「何が大事かは自分で決める! 今大事なのは! 大事なのは――!!」(『トロピカル~ジュ!プリキュア』第1話)

 さらにもうひとりのプリキュア、まなつは自分の矜持に適うことだと言いました。

 たった3人の意見ですらすでにバラバラ。だけど、お互い言っていることがなんだか自分にも当てはまるような、他にももっといろいろな意味があるような、不思議な気分でした。

 ソラは自分の大切な宝物、ましろからもらった真新しいヒーロー手帳を開きます。
 そこに書きこんであるのはソラが考えたヒーローの心得。一度はカバトンに破り捨てられてしまった思いを、もう一度、今度はせっかく覚えたソラシド市の言葉で書き直したものでした。

 「日々書き足しているんです。友達から教わることも多くて」

 そういえば、ましろと友達になれたのもプリキュアになったことがきっかけだったかもしれません。

悩んだり、笑ったり、シュンとしたって

PRISM TEAM

 ソラがゆいやまなつとバカ騒ぎの珍道中を繰りひろげていたそのころ、ましろはまた別のプリキュア3人と、プーカという名前の妖精に出会いました。

 プーカは人に触られるのが苦手な子のようでした。
 どうやら自分でも制御できない破壊の力を持っているらしく、それで一緒にいる人たちを危険な目に遭わせてしまうことを恐れているようでした。

 ましろはそんなの全然気にしないのに。
 自分が恐い思いをすることより、プーカがひとりで悲しい思いを抱えていることのほうがずっとイヤなのに。
 3度手を差しのべて、3度目でようやくプーカに触れることができました。
 ましろは一度こうすると決めたらテコでも譲らないガンコな女の子ですが、一方で相手の気持ちを尊重するあまり、最初は相手のパーソナルスペースに踏み込むことを躊躇するところがありました。

 同じように相手の意思を尊重する性向のあまねは、旅の終わりまで自分からプーカに触れにいくことがありませんでした。
 優しいには優しいけれど根がガサツなローラは、プーカの気持ちガン無視で誰よりも早く首根っこ掴み上げて抱きかかえていました。
 気持ちを理解してあげられない相手にも積極的に手を差しのべるのどかは、破壊の力を暴走させてしまった直後であっても構わずプーカの手を優しく握っていました。

 優しさにも、いろんなかたちがあるようです。

WING TEAM

 ツバサとエルちゃんも3人のプリキュアに出会いました。

 女優かお医者さんか2つの道に迷い、悩み、最後にはお医者さんを目指すことを決めたさあや。
 「花のプリンセス」という現実的ではない夢を抱き、今も本気で叶えようと努力しているはるか。

 夢らしい夢はないけれど、大好きで、まるで家族のような関係だった友達とずっと一緒にいるためにがんばりつづけたことは。
 ツバサも今はひとつの夢を叶え終わったあとだけれど、あのときいつか夢を叶えられることを一緒に信じてくれたソラの言葉にはずいぶん救われる思いがしたものでした。
 エルちゃんなんて、いつも一緒に暮らしている家族のヒーローとしての姿に憧れ、それで実際に自分もプリキュアになってしまった子でした。

 夢と、友達。

 まるで共通点のないこの2つの概念は、どうしてだか案外、どこかで繋がっているような気がしました。
 例えば、さあやが最後にはちゃんとなりたい自分を見つけられたのは、いつも傍で応援してくれていたはなたちのおかげだし、はるかが叶いっこない夢に心折られなかったのは、この夢を認めてくれたカナタや、一緒に夢を追いかけてくれた友達みんなのおかげだったりするんです。

BUTTERFLY TEAM

 あげはが出会った3人のプリキュアは、なんか険悪でした。

 ちゃんとしていない人を見ると口出しせずにはいられない生真面目なララ。
 極端にマイペースで自分の気に入った相手の話以外には耳を貸す気がないゆかり。
 この2人の相性が特に最悪でした。

 感情を学びはじめたばかりで基本いつもぼんやりしているアスミはギスギスしているのを見ても何もしようとしないので、保育士の卵として普段から大騒ぎする子たちの面倒を見慣れているあげはが仲裁するしかありませんでした。

 それでもうまくいかず、ケンカ別れしてしまったあと。
 モヤモヤしている様子のララを見て、今度はラテが駆けだしました。
 ラテはアスミに最初の感情を教えてくれた友達です。アスミがラテを何より大切に思う気持ち、“大好き”。その大好きなラテがアスミを導くかたちで、アスミは今日まで少しずつ感情を学んでいくことができたのでした。

 意味のない意地を張って自分で自分を追い詰めてしまっているゆかり。こういうときはあきらの顔が思いだされます。
 あきらはこういうとき、身勝手にふるまうゆかりの手を捕まえては、本心を聞き出すまで絶対に離してくれない人でした。ゆかりにとっては都合よくもなんともない、ただただ面倒くさい人のうちのひとり。
 ゆかりが冷たくするたび仔犬のようにしょげた顔をしていたあきらと――同じようなしょんぼり顔を今まさにしている、ララが目の前に立っていました。まさしく仔犬そのものなラテを追いかけて、わざわざゆかりを探しに来てくれたようです。

 昔のララにはここまでできませんでした。ちゃんとした大人になりきれていないコンプレックスがあったララは他人と深い関係を築くのが苦手で、だけど、ひかると出会ってから。ひかると出会えたから、こちらが考える距離感なんてお構いなしにグイグイ踏み込んでくるあの子に感化されるかたちで、ララも少しずつ変わっていくことができたのでした。

 アスミも、最初はラテ以外の人には無関心でした。与えられた使命さえ果たせればあとは何でもいいとまで思っていました。だけど初めて体験した“大好き”という感情がとにかく心地よくて、暖かくて。
 改めて周りを見渡せば、アスミに“大好き”を教えてくれる人はラテ以外にもたくさんいました。アスミは彼女たちと友達になりました。足湯に、すこやかまんじゅう、かわいい仔犬たち。“大好き”を感じられるものを友達と共有するたび、アスミはますます暖かい気持ちになっていくのでした。

 それをいうならあげはだってそう。うんと小さかったころ、涙を我慢しながら自分を慰めてくれたましろの優しい強さを見たからこそ、今の自分があります。

 だから、今度も。

 「うれしくて、きらきら。飛びあがれ、ひらひら。はじめての夢に挑むような気持ちで」(エンディングテーマ『うれしくて』)

 これが、プリキュアたちの日常。

 プリキュアは自分たちの日常を守るヒーローです。彼女たちにとって何にも換えられない大切なもの。それこそが日常です。
 正義とか、使命とか、強さとか、そういう崇高なもののために戦っているんじゃない。ただみんなで幸せに生きたいがために彼女たちは戦います。

 プリキュアたちの様子を観察したプリムは、彼女たちがくだらない話をしたり、笑いあったりしているだけで、その強さの秘密が何もわからなかったといいます。研究するだけムダな時間だったと。
 違います。
 これこそが彼が知りたかった答え。あるいは強さの理由。プリキュアのプリキュアたる証なのでした。

We will never give up!!

 「そっか――。それだよ。何故かはわからない。でも、理由がある。理由があるから戻ってこれたんだよ」

 「それは、きっとソラちゃんが――」

 プリキュアたちは一度シュプリームに敗北しました。消滅したはずでした。
 なのに、気がつくと復活していました。
 理由はわかりません。

 だけど、プリキュアはそもそも諦めないものです。

 これまでもずっとそうでした。
 だって彼女たちには大切なものがあるからです。絶対に諦められないものがあるからです。
 誰のところにでも等しく存在する、ありふれたもの。ともすると退屈にすら感じられるかもしれないもの。まるで空気のように透明で、なのにひとたび気づくことができるとキラキラ宝石のように輝きだすもの。

 「ヒーローとは泣いている子どもを絶対に見捨てない。そしてヒーローとは、どんなときも笑顔を絶やさず、今、一番大事なことをする、者です!!」

 ソラにとってヒーローを目指すことはもはや当たり前のことでした。
 憧れに向かって毎日一生懸命がんばることが日常でした。

 他の人にとってはまた違う姿が日常なのかもしれません。
 ソラはましろと出会うまで知りませんでした。友達と笑いあえる日々がこんなにも愛おしいものだとは。こんなにも自分を強くしてくれるものだとは。
 ソラにとっての当たり前も、ましろと出会うことでまた少し変化していました。

 そして、今日はゆいやまなつと出会ったことで、また少し。

 消滅したはずの自分たちがどうして戻ってこられたのか、本当のところはわかりません。
 もしかしたら思いもよらない、ソラたちには知りえないような不思議な理由があるのかもしれません。
 けれど、少なくとも、ソラたちには帰ってこなければならない理由がありました。
 みんなそれぞれ違う理由。だけど、お互いどこか通じあえる思い。

 自分らしくありたい。
 優しくしてあげたい誰かがいる。
 夢や友達、守らなければいけない大切なものがある。
 ときには失敗し、だけどそれを乗り越えて成長していかなければならない思いがある。

 そのために。

 プリキュアたちにはどうしても諦められないものがありました。
 どんなものより大切で、何よりも身近で、だけど一度失ってしまえば二度と戻ってこないかけがえのない宝物。
 そういうものを守るために、プリキュアは諦めない、負けない。

 「今こそ、プリキュアの出番です!」

 ついにシュプリームを打ち負かした強さの正体は、そういう、誰にとっても身近な思いから生まれる力だったのでした。

よろしければ感想を聞かせてください

    記事の長さはどうでしたか?

    文章は読みやすかったですか?

    当てはまるものを選んでください。

    コメント

    1. 与方藤士朗 より:

      初日の1番、岡山市南区のTOHOシネマ岡南で観て参りました。

      あげはチームを見て、図らずも、養護施設の中高生女子児童の担当をする保育士さんの姿を思い出してしまいました。
      その世代の男子児童の対応も大変厳しい(だからこそ男性の児童指導員の役目が増す)ところがありますが、では女子なら楽化かいうと、必ずしもそうではない。

      あげは君は今おそらく、私が養護施設にいた頃の短大在学中の実習生以上に厳しくもリアルな「実習」をやっているのでしょう。
      それは必ず彼女にとっての糧となるのは間違いないとは思われます。
      もっともそれは、阿久悠作詞・森田公一作曲(アリスの谷村新司作詞・曲のほうではない)の「青春時代」のまさにど真ん中であり、道に迷って胸に棘刺すことばかりであることもまた、間違いではないでしょうが。

      • 疲ぃ より:

         知的障害の特別支援学校も男性教員の需要が高かったですねえ。教育実習で男子学生が来ると目がギラつくんですよね、あそこの先生がた。児童福祉のイメージが強いせいか普通学校教員に比べて志望者が女性に偏りがちですが、現実はだいぶ体力仕事(&精神にクるお仕事)。
         あげはは本当によくやっています。なんであの子あれだけ色々洗礼を受けているのに性格がキツくならないの・・・?

    スポンサーリンク
    タイトルとURLをコピーしました