キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~ 第6話感想 りんののぞみ離れ。

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私、プリキュアにはなれないと思います。

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「ホノオノユラギ」

大きな出来事

メインキャラクター:りん

目標

 自分を許せるようになる。

課題

 ある朝、りんは通勤中にシャドウを目撃した。しかしその日は大事な社内コンペがあった。シャドウといってもこれまで見たことがない4本足の形態だ。見間違えかもしれない。りんはそのように自分をごまかし、シャドウを無視して出社した。
 しかし後日、ダークナイトライトちゃんねるにて4本足シャドウの目撃情報が配信された。りんは自分がプリキュア失格だと思い悩む。

解決

 りんの懺悔をうち明けられたかれんは「遠慮せずに人に頼ればいい」と言ってくれた。
 昔から責任感が強かったりん。中学生のころはこういうとき周りに相談することすらできなかった。それができるようになっただけでも大人になって成長した実感がある。

 そして今、そのかれんがシャドウと相対してピンチに陥っている。彼女を助けられるのは自分だけ。
 頼ってもらえる自分でありたい。大人になってから大事なことは何もできていない自分だが、その思いだけは貫きたい。それはりんが中学生のころ初めてプリキュアになったのと同じ思いだった。りんは再びプリキュアへの変身を果たす。

ピックアップ

フェアトレード

 通常は不当に安く買い叩かれる傾向にある発展途上国の原料生産者から継続的に適正な価格で購入し、彼らの生活改善を目指す運動。
 これはSDGs(持続可能な開発目標)の一環でもある。原料生産者が豊かになれないなら将来的に担い手も減り、やがて産業全体が成り立たなくなるだろうという考えかただ。

 特にジュエリーは原価全体に占める加工技術料やデザイン・ブランド料など付加価値の割合がきわめて高く、対して一次材料である原石の価値がそもそも少ない。このため農産物の同種の問題と比較しても、先進国の加工会社と途上国の鉱山労働者とで学力・資本力の格差が際立って開きやすい構造にある。はっきり言って先進国からの”温情的な”公正取引程度ではこの力関係を埋めることは不可能、「適正な価格」自体が安いのだから生活改善に必要な資金を行き渡らせることも当然不可能、焼け石に水なのが実情だ。
 現状を打開し、先進国・途上国間の対等な商取引を実現するためには、途上国の輸出品そのものの価値を高める必要がある。具体的には宝石の原産国が少なくとも自前の研磨工場を持てるようになることが望ましい。未加工の原石ではなく、そのままペンダントトップに使えるような加工済み宝石として輸出させるわけだ。産業基盤が強くなれば高学歴者の需要が高まり、自ずと国全体の教育水準も向上するだろう。

 ここまでしなければこの業界における真のフェアトレードは実現しないと考えられている。
 フェアトレードのそもそもの目的は、発展途上国における原料生産者が将来的にも担い手を確保できるようにすることにあるのだから。

エシカル消費

 フェアトレードをとりあえず前に進めるためのひとつの方便。

 Ethicalは”倫理的な”という意味。本来フェアトレード自体は産業全体を持続させるために必要な、つまり先進国側の都合が大きい、ある種打算的な運動である。実は倫理とかそこまで関係ない。
 ただ、投資として見るならこれは回収見込みが見えにくい、ずいぶん気の長い事業となるため、富裕層の財布の紐を緩めるためには「これを買えばかわいそうな人を助けられますよ」という建前が必要になってくるわけだ。いわば現代版ノブリスオブリージュ。これも一種の付加価値といえる。別にウソでもないし。

 りんは「みんながハッピー」をコンセプトに社内コンペに応募していたが、ジュエリーを日常的によく買うのは富裕層なのだからエシカル消費を狙うこと自体はそうズレた着眼点ではなかったと思う。ただ、それをやるなら相応にリッチなデザイン案を提出するべきだったかもしれない。見た感じあんまり高価にするつもりないよね、このデザイン。

 「のぞみが教師になる夢を叶えて本当に嬉しかった。でも、夢が叶ったと同時に僕らが一緒にいる未来は無くなった。僕はパルミエ王国の国王。こちらで教師の道を邁進するのぞみと一緒にいることはできない」

 結婚を意識すると考えちゃいますよね。
 だから大学卒業のタイミングでプロポーズしておくんです。生活圏を合わせやすいから。お互い就職先を同じ地域で選んでおけば、結婚してからでもそのまま共働きで続けられる。
 逆をいうと最後のチャンスでもあるんですよね。どうしても地元を離れたくない人とか、特定の地域じゃないと働き口が無い職種を目指している人とかだと特に。このタイミングを逃したら恋人と別々の地域で就職することになっちゃうかもしれない。両想いなのに結婚できなくなっちゃうかもしれない。

 ココはパルミエ王国から出るわけにいかないので、その意味では普通のカップルより難しいかもしれませんけどね。もともとのぞみの先生でもあったので、彼女に夢を諦めさせて専業主婦(というか王妃)として連れていくという選択も不本意だったでしょうし。

 それにしたってさ!

 こんなのふたりで相談することでしか解決できない問題でしょ。
 逆に相談しさえすれば解決のしようもあるわけで。パルミエ王国にだって学校くらいあるでしょうし。なんだったら通い婚するって手もありかもしれませんし。

 だけどココにはそんな当たり前のことすらできないわけですよ。
 前話で語られたとおり、自信が無いから。
 結婚を意識したからこそ、自分が本当にのぞみの夫になっていいのかという迷いが生まれてしまったから。
 こうなると結婚後のビジョンを相談する以前の問題になっちゃうわけです。で、そのまんまズルズル。

 いや、だったらなおさらふたりで話しあえよって話ですが。
 いやマジホントそれしかないはずなんですが。

 いやー・・・、気持ち、わかっちゃいますよね。
 結婚って、どうしてもある程度お互いの自由を束縛することになっちゃいますから。
 その権利が自分にあるのか、その責任を自分は負えるのかって、どうしても考えちゃう。
 だから自分に自信を持てないと、こういう相手に迷惑をかけざるをえない選択って、なかなか踏ん切りがつかなくなっちゃいます。

 いや、だから相談しろよと。
 つまりはお前だけでどうこう勝手に決められない、ふたりの問題じゃねーかと。
 今になってみればそういう道理も理解できるんですが、なかなかね。自分が当事者になると、そんな簡単なこともできなくなっちゃう。

 だって、ほら、結局のところカッコよく見せたいじゃないですか。
 自分が世界で一番好きな人相手の、一生で一番の想い出になる瞬間だと思うとさ。

 そんなんだから結婚に縁がないんですよねー。

臆病で寂しがり屋のプリキュア

 「お母さん。今いい?」
 「りん? うん。店掃除してたとこ」
 「明日仕入れで朝早いんだから。ゆうとあいに任せればいいのに」
 「就活が忙しくてそれどころじゃないよ。ふたりとも、お姉ちゃんはすごいなあって、好きなこと仕事にしてて大したもんだなあって感心してる」
 「・・・そう」
 「で、何? 電話」
 「え、いや。元気かなって思って。特に用ってわけじゃ。今度ゆっくり帰るからあんまり無理しないでよ。おやすみ」

 このメンドクサさ、懐かしいですね。
 りんはこういう子でした。自分からは助けを求められないタイプというか。

 仕事が忙しいのにわざわざ電話をしたと思えば、お母さんのことを心配してみせる。なにかと世話を焼きたがる。いっつも、自分の側が。

 なんでしょうね。「つながりを欲している」と言えばいいんでしょうか。
 自分からは助けを求めない。だけどその代わりに普段から周りの人たちの世話を焼く。だからいつも誰かと一緒にいられる。
 いつも誰かと一緒にいれば、もしも困ったことになったとき、こちらから助けを求めなくても、相手が察して助けてくれるかもしれない。
 りんはそういうふうに考える子です。

 考えている、わけでもないんですかね?
 無自覚にそうしているだけかもしれません。

 「のぞみのせいだよね。いっつもそう。のぞみのせいで大変なことに巻きこまれてさ。こっちが必死で面倒見てるのにちっとも感謝してないし。あんな子、友達じゃないよ。――のぞみなんていなきゃいいのに。そう思ったこと、ない?」(『Yes!プリキュア5』第23話)

 小さなころ、のぞみとふたりで迷子になったことがありました。
 しかもそのうちのぞみが転んで、膝を痛めちゃって。で、りんがなんとか励まして、一緒に歩かせて。
 ドジなのぞみの世話を焼くのはいつもりんの役目でした。

 だけどそれって、りんが一方的に世話を焼くだけの関係かというと、そういうわけでもなくて。

 「こわいのこわいのとんでけー! こわいのこわいのとんでけー!」(『Yes!プリキュア5』第2話)

 りんは人一倍怖がりな子でした。夕刻、迷子になってしまった知らない街を子どもだけで歩くなんてこと、りんには絶対にできないことでした。
 だけどのぞみがいたから。のぞみが隣にいて、りんが怖そうにしているとすぐに気付いてくれて、元気づけてくれたから、あの日は無事に家に帰ることができたのでした。
 だから、りんにとってのぞみは昔から大切な友達でした。

 誰かに助けを求めるなんてこと、りんにはもともとできません。
 りんにできるのは、ただ、助けてくれる誰かとのつながりを絶やさないこと。

 「で、何? 電話」

 見透かされちゃっていますね。さすがは実のお母さん。
 だけどりんがごまかそうとするとそれ以上深入りしてきません。りんが自分から悩みをうち明けることがないのもまた、わかっているから。

 電話で話したことで少しでも気が楽になってくれたらいいのだけれど。
 あるいは、今度帰ってきたときゆっくり心をほぐしてあげられたら。

 「で、どうしてうちに来たの?」
 「え? だから、アロマを渡そうと思って――」
 「だけじゃないでしょ」

 あのりんがわざわざ頼んでもいないお節介を焼きに来た。
 それってつまり。

 「子どものころは何でもやってやるって思ってたし、できてたかもだけど。大人ってそう甘くないんですよね。私の手には余るんです」
 「だったら頼れば? シャドウのこと、私になら話せると思ってウチに来たんでしょう? それでいい。遠慮せずに人に頼れば。昔のりんならこうして私に頼ることもなかったし、こんな話もできなかった。大人も、悪くないんじゃない?」

 仕事の悩みだけのわけがない。
 だって、それだけなら真っ先にのぞみのところに行くはず。

 りんとかれんはお互い毅然とした性格ということでウマは合っていましたが、悩みごとを相談するような間柄ではありませんでした。
 なんといっても、当時りんにはのぞみがいましたから。
 まあ、のぞみとケンカ中でも意地を張ろうとしてうららに八つ当たりしてしまったことはありましたが。
 あのころは甘えていました。心のどこかで、何がどうなってものぞみとはすぐ元の関係に戻れる、また助けてもらえると信じられていました。

 今回かれんのところに来たのは、結局のところ今回ばかりはのぞみを頼れなかったことが大きいのでした。
 のぞみに対して重大な裏切りをはたらいてしまった。のぞみなら何を置いてでも絶対に放っておかないシャドウを、仕事のために放置してしまった。
 子どものころなら絶対にありえなかった判断。だけど大人になった今はそれができてしまう。だから、子どものころいつも頼っていた人に頼れなくなってしまう瞬間もある。

 結果的に、ではあるけれど。
 だからこそ、追い詰められて、追い詰められきった果てに、昔ならまず頼ることがなかったかれんを頼るという新しい選択をすることができたのでした。

 「・・・そうかも。あはっ。あはははは」

 おかしい。
 大人になってからというもの、仕事なんて全然うまくいかなくて、何もかも全部自分でやるみたいな暇を持つこともできなくて、つくづく自分に失望するようなことばかり。
 ・・・そのおかげで、こうしてかれんを頼るという珍しい機会を得ることになるんですから。

 九死に一生。死中に活あり。まったく人生どう転ぶかわからないものです。

 「かれんさんが頼れるのは私しかいない・・・!」

 おかしいことといえばもうひとつ。

 「ねえ、どうしたら変身できるの?」
 「プリキュアになりたいココ?」
 「本当はなりたくないわよ! でも今私がやらないで誰がやんのよ! お願い! のぞみを助けたいの!!」(『Yes!プリキュア5』第2話)

 せっかくのぞみ離れした新しい自分に出会えたというのに、再び変身できるようになったきっかけときたらあのときとそっくり同じ。

 プリキュアなんて自分には合っていないと思っていました。
 そういうのはみんなのために一生懸命で信念の強いのぞみ向き。
 だけどあのとき、のぞみを失いたくなかったから自分が変身する踏ん切りをつけました。

 今度もそう。
 かれんを失いたくなかった。素直に助けることができない不器用な自分の気持ちを、さらっと拾い上げてくれた、あの人とのつながりを絶ちたくなかった。

 目の前の人を助けたい。
 自分のために。
 自分を助けてくれるこの人を助けられる、そんな自分であるために。

 夏木りんはいつも誰かのために戦っていたプリキュアでした。

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    コメント

    1. ピンク より:

      中学時代のりんちゃんとかれんさん……やばい、ジュースを何味にするかで言い争ってる姿しか思い出せませんw
      かれんがアクセサリー類に関心持ってる様子はあんま無いですが、せっかくなのでこのまま(既に終わったコンペではありますけど)デザインの相談してもいいんじゃないですかね。舞辺りも交えて。

      近年は敢えて都会を離れる選択肢が広がってるらしいとは聞きますけど、まさか夕凪町にも開発の波が来るとは。
      まあ大空の樹は見るからに何かを祀ってるとしか思えん風貌ですし、周辺住民への交渉もめちゃくちゃ大変そうだなーと考えたら、業者さんも結局手出しできないかもですね。
      そういえば、フィーリア王女たちはどうしてるんでしょう?

      • 疲ぃ より:

         大空の樹のとこの地主さんはどうしたんでしょうね。地元の人間ならあんな立派なランドマークそうそう切らせることはないと思うんですが、やっぱり亡くなってしまったんでしょうか。あれ切って新興住宅地を整備したところで住民トラブル頻発で地価も上がらないでしょうに。

         りんとかれんって昔は食べものの好みも美的センスも全然合わなかったんですよね。それでちょっとギスギスしたエピソードもありました。好みが合わないからこそ友達になれたら多様な視点を持てていいんだ、って結論だったと思います。
         たしかに相談すればいいアイディアが出てくるかもしれませんね。

    2. 東堂伊豆守 より:

      夏木りんがもう一度「変身」しなければならなかった理由。
      それは、「自分の弱さを人に見せたくないばかりに全ての負担を自分一人で抱え込もうとする悪癖を直す」「今一つ反りが合わなかった、しかしいざというとき頼れる先輩との距離を詰める」という、本当は中学生時代にやっておくべきだったことを今改めてやり直す必要があったから、それが彼女が“前に進む”為に必要なことだったから、なんでしょうね。
      うーん、やっぱり夢原のぞみの「変身」が、水無月かれんや夏木りんのそれに比べて際立って“後ろ向き”に見えてしまうなぁ。前回第5話での「変身」も、ココとの関係が足踏み状態に陥っていることを“正当化”“言い訳”する為の行動、というニュアンスが拭いきれないものだったし……。
      そういや、パルミエ王国の方々が「タイムフラワーには不吉ないわれがある」とか言い出したとき、即座に「プリキュアになる前より元気!調子いいみたい!」とか反応するのぞみサンの姿には正直恐怖を感じるんですが……やっぱタイムフラワーって「ダメ、ゼッタイ」系の“薬”草なのでわ?!
      それから、
      ダークナイトライトの動画を視た水無月かれんと夏木りんが夕凪町のPANPAKAパンを訪ね、そこから大空の樹へと向かい犬型シャドウと交戦する――――という流れがあまりにもスムーズ過ぎて、これダークナイトライト・霧生満&薫とPANPAKAパン店員・日向咲の「SplashStar」組による連係プレイで、「5」組メンバーがまんまとシャドウ出没地点に“誘導”されたのではないか……という疑惑が浮上してくるんですが。
      そもそも日向咲と美翔舞って、「5」組メンバーが夢原のぞみと美々野くるみを除くと総じてシャドウ退治には及び腰なのに対して、やけにシャドウ退治に前のめりで、そのくせシャドウとの関連はもはや疑いようもないダークナイトライトには不自然なレベルで無関心な素振りを通している。
      さらにシャドウ退治には前向きなのに、自分達がプリキュアに再び変身することには興味がなさそうだったりして、どうも「大人になった自分達がプリキュアに変身できない理由」「そんな自分達大人をプリキュアにするタイムフラワーの秘密」について結構な情報を掴んでいる、ようにも見えてくるんですが……。
      ついでに言うと、長らく疎遠だった「5」組と「SplashStar」組を今このタイミングで再び引き合わせたカフェバーTime経営者・星野夫妻も元々は「SplashStar」側の人達で……なんか「5」組が「SplashStar」勢の掌の上で踊らされてるんじゃないかと思えてきたぞ、オイオイ。

      • 疲ぃ より:

         かれんの初変身がそこまでネガティブなニュアンスではなかったように、りんやのぞみの変身もけっして後ろ向きな意味合いだけではないんですよね。本シリーズ同様、プリキュアに変身したことで成長できたところはそれぞれちゃんとあります。ただ、子どものころと違って手持ちの選択肢がたくさん増えたはずの大人だと思うと「それ本当に変身がありがたく感じるようなどうしようもない悩みだった?」って印象が付きまとうだけで。

         咲と舞はまあ、歴代プリキュアのなかでも割とプリキュアの使命に前のめりな子たちだったので・・・。『ふたりはプリキュア』が妖精側の都合を押しつけられて序盤イヤイヤやらされてた感あったのと、『Yes!プリキュア5』以降変身という行為が自分の夢を叶えることとリンクしはじめた間の、ちょうど移行期間みたいな時期だったんですよね。
         最初からあんなに妖精に協力的だったプリキュアあんまりいないですよ。フラッピとチョッピの人柄によるところも大きかったでしょうが。

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