わんだふるぷりきゅあ! 第16話感想 君に伝えたい思いを私なりの言葉に乗せて。

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わあっ。すごい! すごいわ! こむぎと話せるなんて夢みたい!!

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「鏡石のふしぎ」

大きな出来事

メインキャラクター:いろは

目標

 お父さんお母さんにまでこむぎのことを秘密にしなきゃいけない難しさをどうにかする。

課題

 いろはもこむぎもウソをつくのが苦手。秘密に関わる話になるとどうしてもしどろもどろになって、お父さんやお母さんが相手であっても楽しくお喋りできなくなる。
 いっそ全部打ち明けてしまいたいが、秘密にしなければならない大本の理由が失踪中のニコ様にあるため、メエメエに相談しても意志決定することができない。

解決

 期せずこむぎが人間の言葉を話せることがバレてしまったため、メエメエ立ち会いのもとプリキュアに関すること以外全ての秘密を打ち明けることにした。
 お父さんお母さんは快く受け入れてくれて、家のなかがみんな笑顔でお喋りできるワンダフルな空間になった。

バトル

苦戦

 インコのガルガル。
 卵が小鳥の巣に発生してしまい、親鳥が困り果てていた。

 一見すると人間の言葉を話せるようでこむぎたちは気を許してしまいそうになったが、悟が言うには単に人間の声真似をしているだけで言葉の内容は理解していないという。

勝利

 親鳥の相談を受けたニャミーが少し威圧してやると、孵化したばかりのガルガルはその意図に従って巣から離れてくれた。

 悟が言うようにガルガルは挨拶を口にしながらも平気で攻撃を繰り出してきたが、いろはが距離を詰めて優しく話しかけると、ちゃんとこちらの言うことを理解しておとなしくなってくれた。

ピックアップ

蟹江さん

 いろはのクラスメイト。初登場時にネットでバズって以来、なんか登場するたびどんどんあざとイエロー味を帯びてきている。赤だけど。
 全身からほとばしるなんともいえない蟹っぽさがかわいさの秘訣だろうか。

 私自身はいろはの前の席のツインシニヨンの女の子とまゆの前の席の糸目の男の子が推し。(ともに氏名不詳)

野原しんのすけ&シロ

 アニメ『クレヨンしんちゃん』からのゲスト出演。何気ない日常のなかに嵐を呼ぶ5歳児とそのペット。
 とてつもなく変な子だが、毎日のようにおかしな経験をしている(率先しておかしくなるようなことをしている)だけあって考えかたが柔軟で、大抵のことには動じることがない。今回も犬のこむぎが喋るのを見てあっさりありのままを受け入れていた。

 『クレヨンしんちゃん』側のコラボエピソードでは2人してプリキュアへの変身を果たしている。

鏡石の昔話

 もともとアニマルタウン一帯は人間と動物たちが仲良く平和に暮らす土地柄だったという。
 ある日、人間ともっと仲よくなりたいと願うオオカミが神様にお願いすると、一角獣の姿をした神様が鏡石を携えて地上に舞い降り、動物が人間の言葉を話せるようになる夢を叶えてくれた。
 以来、鏡石の評判を聞いた生きものたちがあちこちから集まって道を成し、現在のアニマルタウンの原形となる街ができた。
 だが、大勢集まった生きものたちは争いの種を生んだ。そのことを悲しんだ神様が鏡石から動物が人間と話せるようになる力を取り上げてしまった、とのこと。

 イメージ映像からすると、争いは必ずしも人間対動物の構図だったわけではなく、どちらの陣営にも人間と動物が入り交じっていたようだ。
 察するに鏡石を授けたニコ様がこの昔話における神様(一角獣)だと思われるが、ニコ様が何を思って動物だけを集めてニコガーデンをつくったのかはまだわからない。争いの原因が一ヶ所に集まりすぎたことだったから、人間か動物かで分けたのではなく、単純に後から来た生きものたちをまとめて引き受けたのだろうか? 実際、犬や猫、イヌワシなどはアニマルタウン側でも暮らしているわけだし。ニコガーデンに移住した者たちからも平等に人間の言葉を取り上げているあたり、ニコ様は必ずしも動物たちだけの味方というわけではなさそう。
 ただ、そうなると原初に人間との会話を望んだオオカミが現在人間にだけ憎しみをぶつけるようになった経緯がよくわからない。まだもう一捻り込み入った事情があるのかもしれない。

インコ

 他の鳥類に比べて喉の筋肉が発達しており、また舌も器用なため、人間や他の動物たちの声マネをすることができる。
 野生状態でも番で行動することを好んでいて、とても人懐こい鳥である。自分たち以外の種族の声マネをする習性もミラー効果によるものだと推察されている。その証拠というべきか、声マネするだけでなく鏡を見ることも好きなようだ。

 ミラー効果というのは心理学用語で、好意を抱いている相手の仕草を知らず知らずマネしてしまうことをいう。反対に、自分と似た仕草をする相手を見ると好感を抱きやすくなる傾向もある。
 人間含め、社会性ある動物全般に広く観察される現象である。ミラー効果が表れること自体が社会性を持っている証拠になるため、幼児期の自閉症診断の指標として用いられることもある。自閉傾向の強い赤ちゃんは親の笑顔を見ても釣られ笑いをしないなど、特徴的な傾向があるのだ。
 「ペットは飼い主に似る」とか「飼い主はペットに似る」とかよくいわれるが、それもミラー効果が一因になっているのかもしれない。

 もしかしたらこっちでもキュアオシリィとキュアワタアメの変身シーンが見られるかも?と思っていましたが、さすがにそんなことはありませんでした。向こうは3本立てのうち2エピソードを過去回の再放送にするなど、余裕のある製作体勢にしてましたしね。

 さて、コラボ回でもありましたがストーリー的にも重要イベント。こむぎの秘密をお父さんお母さんと共有できるようになりました。どうやらこのことが間接的にまゆの初変身展開にまで波及していくようです。
 お爺ちゃんやお婆ちゃんではなくお父さんお母さんと秘密を共有する展開は珍しいですね。プリキュアシリーズだと異世界人以外では初めてのことかもしれません。プリキュア以外でも、たとえば『カードキャプターさくら』などは秘密がお兄さんにバレたあとでも、お父さんにだけは最後まで隠していました。(実際には主人公が秘密にできていると思っているだけでバレバレだったんですが)

 ユキはプリキュアのことをまゆに秘密にしています。それはまゆの身を危険から遠ざけるためにやっていることなのですが、しかし実際のところ、それはまゆのためになっていません。まゆ、好奇心が旺盛な子ですからね。どんな事情があれ、とにかくお気に入りのキュアニャミーのことが知りたくて仕方ありません。
 それに・・・。まゆの立場になってみれば、大好きなユキが自分の与り知らぬところで苦労を負っていたり危ない目に合っていたりしたら、やっぱり悲しいですしね。

 いろはのお父さんとお母さんは秘密を教えてもらえて喜んでくれました。
 昔アニマルタウンに住んでいた人間と動物たちも、お互いに言葉を交わせるようになってみんな大喜びでした。気兼ねなくお喋りできるってステキなことです。
 でも、だったら、どうして争いごとが起きてしまったんでしょうね・・・?
 それを想像するためのヒントはもしかしたら、今のまゆとユキの関係性のなかに隠れているのかもしれません。

ある小鳥の物語

 親鳥は困り果てていました。

 子どもたちを育てるための大事な巣のなかに、突然なんか真っ黒い卵が現れたのです。
 幸い、子どもたちは無事でした。ただちに何か問題になるわけではありません。
 ただ、噂によるとこの卵からは巨大な怪物が生まれるらしいのです。もしそうなってしまったら、子どもたちは――。

 幸いなことに、このアニマルタウンには怪物をどうにかしてくれるプリキュアという人たちが住んでいるそうです。
 親鳥はやっとのことでプリキュアを探し出し、話を聞いてもらおうとしました。

 「ん? なあに」
 「なんか、いろはとこむぎに聞いてほしいことあるって言ってる」
 「え、なんだろう?」

 親切そうな2人組でした。きっとこの人たちなら子どもたちを助けてくれるに違いありません。親鳥は一安心。

 ところが――。

 「こむぎです!」
 「あら。うちのワンチャンと同じ名前」
 「そうだよ! だってこむぎは――」
 「わあー!!!!!」

 どうやら、プリキュアたちはそれどころじゃなさそうでした。
 いくら親切そうだといっても、そもそも話を聞いてもらえないんじゃどうにもなりません。

 親鳥は街にもう1人いるというプリキュアを探すことにしました。

 そのプリキュアは猫でした。
 猫らしくのんびり屋さんでマイペース。親鳥がことの深刻さを必死に説明したというのに、あくび混じりにのっそり腰を上げる始末でした。

 猫のプリキュアにはとても大切な人がいるそうです。猫のプリキュアは別に小鳥の子どもたちを心配して立ち上がってくれたわけではありません。
 ただ、たまたま巣が大切な人の家の近くにあったというだけ。このままだと彼女の大切な人が怪物に襲われてしまうかもしれないから、怪物を追い払う気になっただけなんだそうです。

 黒い卵は親鳥と猫のプリキュアの目の前で、ついに孵化してしまいました。
 すると。

 「ここを去りなさい! さもなければ――!」

 親鳥はうれしく思いました。
 話を聞いてくれた。まずはそれだけで。
 そして怪物も追い払ってくれた。たとえそれが自分や子どもたちのためじゃなかったとしても。

 「お礼なんて必要ない。私はただ、私の守りたいものを守っただけ。あとはあの子たちが――」

 猫のプリキュアは最初の2人組と違って無愛想で、そっけなくて、ついでにいうなら何故だか少しだけ自分への評価が低めでした。

 けれど親鳥は感謝します。
 きっとずっと、たくさん感謝します。

 猫のプリキュアがどういうふうに考えていようと、親鳥が困っていたとき話を聞いてくれたことには違いないのですから。

ある人間の物語

 いろはという名前の女の子は困り果てていました。

 つくづく自分という人間はとことんまでウソがつけない性格のようです。
 いろはには大切に思う子がいました。こむぎという名の飼い犬です。最近人間の言葉を話し、人間の姿に変身できるようになりました。
 ところがこむぎは誰に似たのやら、隠しごとがものっすごく苦手なようでした。
 言葉を話せることはお母さんにも秘密にしなきゃいけないのに、こむぎときたらお母さんに話しかけられただけでうれしくなってしまうようで、何を秘密にしなきゃいけないのか全部頭からすっぽ抜けてしまうのでした。
 そして、隣にいるいろは自身もまた、彼女のポカをうまくごまかしてあげることができないのです。飼い主なんですから、こむぎのことは何があっても守りぬかなきゃいけないのに・・・。

 「私も鏡石にお願いしようかなあ。『平気でウソをつける大嘘つきになれますように』って」

 そんな悩めるいろはの様子を、当のこむぎはきょとんとした目で見つめるのでした。

 「オラ、野原しんのすけ。こっちはシロ」

 さて。気分転換に向かった自宅のドッグランで、いろははとびきり変な子と出会いました。
 まるで32年ほどずっと舌に馴染んでいた「~5歳!」を言いそびれたかのように、自分の名前の直後を寸足らずにしていたのが無闇に印象に残る幼稚園児でした。

 「・・・こねぎ? ・・・たまねぎ?」
 「こむぎだワン! 犬は玉ねぎ食べちゃだめワン!」
 「・・・犬が、喋った」

 彼の独特のノリに振りまわされ、うっかりこむぎが自分から秘密をばらしてしまいました。

 「じーっ。ほうほう。――アニマルタウンの犬もなかなかやりますなあ」

 ただ、それを聞いても彼はろくすっぽ驚いたそぶりがありませんでした。
 まるで犬と話せるのなんて当たり前のことであるかのように。彼自身は自分の飼い犬の言葉が全然わからない様子でしたが。それでいて妙に自信満々に見当違いの翻訳を披露してくれましたが。
 そして、まるでそれとこむぎが人間の言葉を話したことが何故か全く同じことであるかのような口ぶりでしたが。

 びっくりするほど意味がわからない、個性的な子でしたが、いろはにはこむぎと一緒に彼とお喋りできたひとときが、ものすごく楽しい時間だったように感じられたのでした。

 「面白い子だったね! こむぎと普通に話してた」
 「お喋りできて楽しかったワン!」
 「そうだよね。お喋りするのって、楽しくていいことだよね!」

 いろははこむぎが人間の言葉を話せること、人間の姿になれることを隠し通さなければなりません。
 別にその隠しごとを明かしたところでいろはやこむぎ自身には何の不都合もありませんが、なんかメエメエが困るらしいのでなんとなく秘密を守りつづけてきました。まあ、メエメエも行方不明のニコ様に言われたから秘密厳守にしたがっているだけのようなんですが。

 このあと、うっかりいろはとこむぎは秘密を洗いざらい両親の前でぶちまけてしまいます。
 その結果どうなったかといえば・・・、結局、しんちゃんに秘密がバレたときとほとんど同じ反応。
 いろはのお父さんとお母さんはこむぎとお喋りできるようになって、ものすごく喜んでくれましたとさ。

 「みんなでお喋り。一緒にご飯・・・! うーん、これってすっごくワンダフル!!」

 いろはは自分でも呆れるくらいウソが苦手な子でした。
 何故って、そもそもいろは自身が隠しごとをする必要性を感じていないから。

 「私、ちっちゃいときよく鏡石にお願いしてたんだ。『動物とお喋りできますように』って。そしたらもっともーっと仲よくなれるでしょう?」(第1話)

 「こむぎとお散歩したり、ごはんを食べたり、眠ったり。そんな毎日が、こむぎと一緒の毎日がワンダフルなの!!」(第2話)

 みんながいつでもどんなことでも包み隠さず気軽にお喋りできるようになれれば、それが一番ワンダフルなんだって、いろはは心からそう思っているのでした。

ある昔の物語

 昔の動物さんは幸せな気持ちでした。

 「むかしむかし、このあたりでは人間と動物が仲よく平和に暮らしていました。ある日、もっと人間と仲よくなりたいと望んだ動物が神様にお願いしました。『神様。人間と話せるようにしてください』 ――すると神様が、不思議な力を持つキラキラ光る石をくれました。その石にお願いをすると、動物は言葉を話せるようになって、人間と仲良く暮らしました」

 大好きなみんなとお喋りできるようになったからです。
 それまで動物たちは人間の言葉を話すことができませんでした。もともと人間たちは言葉が通じなくても動物たちに優しくしてくれていたわけで、別にどうしてもお喋りできなきゃいけないというわけでもなかったのですが、やっぱり直接言葉を交わすことができるようになると格別でした。ワンダフルだった毎日がもっともっとワンダフルに輝いて見えました。

 ところが。

 「鏡石の評判を聞いて、たくさんの生きものがやってきて、道ができ、アニマルタウンができた。でも、集まった生きものたちが争うようになってしまって――。神様は悲しんで、鏡石をただの石にしてしまった」

 具体的に何が起きたのかははっきり語られません。
 でも、今話を観たオッサンオバサンならなんとなく想像がつくんじゃないでしょうか。

 「こむぎ! 下がっててって言ったでしょ! どうして出てきたの!? 全部一緒は無理なの!」

 「話せるようになったらもっと仲よくなれると思ってたのに。ケンカなんかしたくないのに。・・・私は仲よくしたいだけなんだけどな」(第6話)

 それまで言葉を話せなかった動物たちは、きっとこむぎのように純朴な子ばかりだったことでしょう。どんな言葉を使えば誰を喜ばせられるのか、あるいは、誰を困らせてしまうのか。前々から言葉を操ることになれていた人間たちと違って、彼らはそういうことを考える機会に乏しかったことでしょう。

 あるいは。お互い言葉が通じることを了解しあっている仲なのに、もし忙しくて話を聞いてもらえないことがあったとしたら? それどころか、そもそも何が理由で話を聞いてもらえないのかすら教えてもらえないことがあったとしたら?

 お互いの正直な言葉が、思いが、期待していたものと違っていたとしたら? 自分と相手の大切に思うものが違っていたり、「好き」の大きさがお互い違っていたり、気持ちのすれ違いがあったり、同じものを見ていたはずがそれぞれ違うふうに見えていたり――。

 「――嫌ワン。いろはと一緒に選んだのに。あれでずっとお散歩してきたのに。こむぎ、あのリードじゃなきゃ嫌ワン。いつものがいいワン! あれじゃないとダメワン!」
 「そんなこと言ったって無いんだからしょうがないでしょ! ワガママ言わないの!」(第6話)

 ・・・いっそ言葉を話せなかった以前の関係のほうが幸せだったと、そういうふうに考える動物たちだっていたかもしれません。

 全ては想像でしかありません。ただ、物心ついたときから人間の言葉を操ることができていた私たちですら、言葉が通じるからこその悲劇にいくらでも思い当たることがあるのです。

 たとえばプリキュアに話を聞いてもらえなかった親鳥の悲しみ。

 たとえばお父さんお母さんにウソをつかなければならなかったいろはの苦しみ。

 それだって、お互い言葉が通じるからこそ起きた辛い出来事です。

ある怪物の物語

 「コンニチハ! ガルガル!」

 そのガルガルは何も理解できていませんでした。

 卵から孵った瞬間、いきなり猫のプリキュアに脅かされて街の上空をさまようしかありませんでした。
 恐い思いをしました。

 次に彼に近づいてきたのは2人組のプリキュアでした。
 どこで覚えたのかも定かではないガルガルの声マネに、彼女たちは不思議な反応を見せました。何故か笑顔で、何故か親しげに、こちらにまっすぐ近づいてくるのです。
 ・・・恐い思いをしました。

 不幸なことに、ガルガルには人間の言葉がわからないのでした。

 「こんにちは、ガルガル! ちゃんとご挨拶して偉い!」
 「礼儀正しい子だね。もしかしたら話ができるかも!」

 ガルガルには何もわかりませんでした。
 彼女たちが言っていることの意味も、彼女たちがやろうとしていることの意図も、何も。
 ただただ不気味で、だから気がついたときには翼で風を起こして彼女たちを吹き飛ばしていました。

 なんだか無性に心がガルガルしていました。

 拒絶されたはずでした。

 自分も拒絶したはずでした。

 「それなら――! いっくよー!!」

 そのはずなのに、何度吹き飛ばしても吹き飛ばしても、目の前のプリキュアは絶対にこちらに近づこうとしてくるのです。

 意味がわかりません。
 だって言葉がわかりません。
 何が狙いかわかりません。
 だって相手のことを何も知りません。

 何もわからないって、恐いんです。

 「・・・安心して。さあ、下に降りよう」

 そうしているうち、ガルガルはついにプリキュアに取り付かれてしまいました。

 首根っこの後ろにしがみつく彼女が何か言っています。ガルガルにはわからない言葉で。
 それでいて、自分を心配してくれているのだけはわかる、とびきり優しい声色で。

 ガルガルにもわかることが、そこには確かにありました。

 「わあ! ガルガル、こんにちは! 一緒に遊ぼ!」

 ビルの屋上に下りると、今度はもうひとりのプリキュアが近づいてきます。

 何がそんなにうれしいのかガルガルには全然わかりませんでしたが、とにかく笑顔を満開にほころばせて。
 最初と同じようによくわからない親しみを全身からほとばしらせて。

 意味も意図も何もわかりませんでしたが、不思議とさっきと違って恐いとは感じませんでした。

 「ガルガル――?」
 「『ガルガル』じゃなくて、『遊ぼ』だよ。あ・そ・ぼ」
 「ア・・・ソ・・・ボ・・・?」
 「そうそう! 遊ぼ遊ぼ!!」

 ガルガルに言葉はわかりません。彼女が自分に何を言わそうとしているのかもわかりません。
 ただ幸いなことに、インコである彼は生まれつき声マネが得意でした。

 マネしてみます。なんとなく。

 うれしそうにしています。目の前のプリキュアが。

 もう一度同じ言葉を話してみます。

 目の前の子がもっとうれしそうに笑いかけてくれます。

 自分もなんだか楽しい気持ちになってきます。

 まるで、プリキュアの気持ちが鏡映しにそっくりコピーされたかのように。
 ガルガルしていたはずの心が、いつの間にかワンダフルな思いいっぱいに変わっていたのでした。

 言葉が通じることでの悲しみがあれば、言葉が通じずとも伝わる喜びもあります。
 もちろんその反対だってあるでしょうとも。

 言葉が通じるほうがいいのか、通じないほうがいいのか、いろはには申し訳ないことですが、どちらがより良い未来につながるのかはまだ誰にもわかりません。(といっても、この書きかただとどちらなのか決め打ちしているようなものですが)

 「私もいろはちゃんみたいになれたらな――」

 何よりも大切にしている飼い主のつぶやきを聞いて、猫のプリキュアは複雑な思いに胸をざわめかせます。

 「お礼なんて必要ない。私はただ、私の守りたいものを守っただけ。あとはあの子たちが――」

 自分には絶対に不可能なことがある。あのふたりが抱いている思いが自分には決定的に欠けている。
 そういう自覚がある猫のプリキュアは、不完全な我が手で守ろうとしている大切な人の、物憂げな表情を見やります。

 この子の幸せを願っているはずでした。その気持ちは届きません。だって言葉にしていないから。・・・それはまあ、いい。
 この子に幸せになってほしいはずでした。その結果がこの表情。言葉にしない思いは、それでもいつか叶うのでしょうか? ・・・叶わないのでしょうか?

 むかしむかし、人間のことが大好きだった動物さんの思いを、神様は叶えてあげられたのでしょうか? それとも、叶えてあげられなかったのでしょうか――?

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    コメント

    1. ピンク より:

      昔話の絵面で『ズートピア』を連想しましたが、なるほど共通言語は大きなポイントでしょう。

      現実的に例えるならば、タコと人間の2〜3歳児を見て、それぞれ大人が大真面目に「なんで意味分かんない行動ばかりするの!?」と思う割合は全然違うはずです。

      しかしニホンオオカミって、乱獲が絶滅のある程度大きな要因みたいですけど、それこそ言葉通じちゃうとやりづらいのでは。
      『葬送のフリーレン』の魔族(人間と同じ立ち振る舞いを意味も分かってないくせに見せ、油断したところを殺害する魔物)みたいに。

      そこは何か理由があって自主的に立ち去った……みたいなアレンジになるんですかね。

      • 疲ぃ より:

         話してみると、人間の幼児も大人とは根本的に違う世界観を持っていたりするものなんですけどね。実際言葉が通じるというだけで異質感は相当緩和されるんだと思います。
         現実のニホンオオカミ絶滅はもともとお互い不干渉の隣人だったところ、時代を経て人間とオオカミの行動範囲が競合してしまったことが原因だったので、今話の描写を見る限りたぶん独自性の強い設定にアレンジされるんじゃないでしょうか。不干渉どころか仲よしだったわけですからね。

    2. 東堂伊豆守 より:

      ガルガルの卵が孵化しない限り、犬飼こむぎ/キュアワンダフルも猫屋敷ユキ/キュアニャミーもガルガルを感知出来ない。となると、アニマルタウン一般住民の皆様からの通報が頼りになってくるわけですが……、
      おい“政府(ニコガーデン)の犬”犬飼組!通報を受けたのに初動対応せんとはお役所仕事も真っ青の杜撰な仕事ぶりだな。おかげで“ニコガーデン非公認”の野良プリキュアに仕事が回ってき(た挙げ句通報した一般住民に感謝され)とるやんけ。
      とにかく、ワンダフル&フレンディのニコガーデン公認プリキュアは“退治せず逮捕が鉄則”という行動規範はご立派でも実務能力にかなり難がある連中で……非公認プリキュア・キュアニャミーが独自行動にこだわるのは「(猫屋敷まゆを確実に守りきるために)最後の手段として“退治”を留保しておきたい」ことに加え、「こんな杜撰なお役所仕事プリキュアに(まゆの警護を)任せきりにしておくわけにはいかん」という切実な思いもありそう。
      この、目的意識や行動規範に難はあるものの実務能力はすこぶる高い非公認プリキュア・キュアニャミーが――――ぬるま湯お役所仕事プリキュアの犬飼組に加入してくれたなら、わんだふるチームの大幅な戦力増強につながりそうなんですよね……。
      さあ猫屋敷まゆよ!お前の出番だ!有望新人キュアニャミーをスカウトして、チームの戦力増強に貢献するときぞ!(たぶんこんな展開?)

      • 疲ぃ より:

         まああれは小鳥さんがこむぎたちに遠慮しすぎた側面もあるので・・・。(お母さんとの話が終わる直前まで待っていたのに結局諦めた)
         とはいえ、それはそれとしてユキはフレキシブルな活動スタイルを好みそうなところがありますね。やりたいことがシンプル(まゆの安全を守りたいだけ)だから成立することなんですが。ただ、ガルガルになってしまった動物たちを助けたいというこむぎたちの考えにも理解を示しているあたり、今後もそのスタイルを貫けるかはわかりませんが。考えることが増えるとどうしても機動性は、ね。

    3. 亀ちゃん より:

      前週の日曜のわんだふるぷりきゅあはしんちゃんがゲストキャラとして登場して、いろはの両親も娘のいろは自身が秘密にしていたことを知る話でした
      いろはのお父様が「お話には続きがあってだな」というセリフはシックリ着ました!!☆☆♬
      チャンピオンの漫画から始まって、キュアアイドルギャンブラーも登場するチャンピオンの漫画でも続くので、ある意味プリキュア的に感慨深いし、私が好きな二次元作品的に感慨深いです!!☆☆♬
      それからキュアワンダフルが「何、何」と口にするところもシックリ着ました!!☆☆♬
      今までとは違う意味でプリキュア的に感慨深いですね!!☆☆♬
      いろはのお母様も「いろはのことだから」というセリフもシックリ着ました!!☆☆♬
      プリキュア的に感慨深く、女の子に人気があるアニメ的にも感慨深いですね!!☆☆♬

      >で、プリキュアとは完全に無関係なことで言いたい雑談は
      前週の土曜は東尾道のジョリーパスタでバニラアイスとチョコアイスのダブルを注文して食べました
      私がバニラアイスから先行して食べると、チョコアイスにはこれまで通り旨味があっても、先行してバニラアイスを食べたことで、バニラアイスがチョコアイスの旨味をかき消してしまった感じで、これは本当に残念でなりません!!(厳→汗)
      だからジョリーパスタさんでは、バニラアイスとチョコアイスのダブルジェラートを注文して、バニラアイスから先行して食べると、チョコアイスの旨味をかき消してしまうことが無くなるよう修正願いたいですね!!(厳→咲)
      話は変わりますが、バニラアイスを先行して食べて、そのバニラアイスに旨味を感じると、その直後に食べるチョコアイスの旨味もバッチリ感じられると、それは二重の喜びでもあります!!☆☆♬
      というワケで、バニラアイスを先行して食べると、その直後に食べるチョコアイスの旨味をかき消してしまう感じなのは、土曜の夕方から夜にかけて放映されるグルメのジャッジ番組的に不合格の札を挙げざるを得ないので、それを合格に生まれ変わらせるには、バニラアイスを先行して食べてから、チョコアイスを食べると、チョコアイスの旨味をバッチリ感じられることが最低限の条件なので、ジョリーパスタさんは修正を心から強く願いたいです!!(厳→咲→輝)
      ご理解ご協力ご了承を願います!!

      • 疲ぃ より:

         お父さんお母さんのいろはへの信頼が光るエピソードでしたね。
         ユキがまゆの心の強さを知っているはずなのに過保護になってしまっているのと対照的で、比較してみると面白い姿勢だと思います。

    4. 与方藤士朗 より:

      稽古とは 一より習い十を知り 十より戻る元のその一
      ~ 元巨人軍遊撃手・廣岡達郎氏のお言葉です。

      これは単に何がしの技術の鍛錬の問題ではなく、言葉そのもののあるべき本質を言い当てていると思われてなりません。
      今回アニマルタウンの鏡石は、我々にそのことを教えてくれたのであります。

      (飼い主の)いろはとおしゃべりしたい~こむぎ
      おしゃべりできるって楽しいね~いろは

      残念ながら、それだけで済まない時期・状況は必ずや、やって参ります。
      言葉あるゆえに、そこから派生した文化があるゆえに、衝突も起き得る。
      人間対動物もそうだが、人間同士の歴史を見ればそんな事例は枚挙いとまなし。

      しかし、その言葉あるゆえにさらなる高みへの道が開かれることもあります。
      三島由紀夫対東大全共闘の対談は、まさに、その極地であると言えましょう。
      しかし今、そこで三島由紀夫御大が全共闘各位に向けた言葉を紹介せずにはおれない。

      私は諸君の熱情だけは信じる。他は一切信じない。

      三島由紀夫こと平岡公威氏は、彼に対峙する全共闘闘志各位の言葉など信じていないことは、これにて明白。
      しかしながら、彼らは言葉を介してその言葉を引き出したのであります。
      ただし、両者とも言葉のその限界というものを肌身で知り尽くしていたはずである。
      これはまさに、言葉というものの可能性を極めし事例と申せましょう。
      まさに、廣岡氏仰せの「一より習いて十を知る」、その十にあたる頂点。

      幸か不幸か、プリキュアに御縁のある私は、言葉の可能性と限界という論点につき、今回の話をこう捉えることができました。

      これぞ、十よりかえる、元のその一。

      ことばの可能性と限界を、日曜朝のわずか30分で、今の子どもたちにもいずれわかるだけのきっかけを与えてくれた話でした。

      • 疲ぃ より:

         こむぎといろはにとってはフレンドリータクト入手前後にも一度経験したことですね。言葉が通じるなら当然気持ちも当たり前に通じると思い込んでいたっていう落とし穴。
         こむぎといろは、ユキとまゆの間に文化的な摩擦が無いことは幸いですが、それでもお互い考えることは少しずつ違うもの。言わなきゃ伝わらないからこそ平穏でいられた関係性に、相互理解を深めるがゆえ逆に相容れない部分が発見されていくコミュニケーションの難しさを見守りましょう。言うほど不幸な話じゃありませんしね。

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