
――だから。今できることを考えて、しよう。

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「バチ当たらない?」
大きな出来事
メインキャラクター:静留たち
目標
ネリアリランドを突破する。
課題
大泉学園地域は『練馬の国のアリス』を模した姿になっているらしい。みんな大好き神アニメだから楽しみに駅に下りたものの、何やら悪役は復活してるわ主人公は倒されてるわでバッドエンド急展開。
あれこれ試行錯誤しているうち、なんか味方サイド(というか日和見派)のウライズミンたちに本来の主人公であるアリス一行の生き写しとして崇められ、なぜか悪の渾沌一派と決戦することになった。
解決
色々変わってしまったかのように見えた『練馬の国のアリス』の世界だったが、フタを開けてみれば世界の法則は原作準拠のままだった。ウライズミンはじめこの地域の人々の言うことを聞いていても事態は案外好転しない。通用するのは結局のところ静留たちの原作知識だけだった。
静留たちは結局自力で渾沌一派を撃退し、自力で電車に戻って旅を再開した。
地域の特徴

東久留米○
東京都東久留米市。前話の舞台だった清瀬の次の駅。スワン仙人の地図ではOTLマークタコ人間のマーク。
駅周辺には石を積んだ塔が大量に並んでいる。『ゼルダの伝説TotK』の地下世界にあったようなやつ。
この駅のホーム内では体の一部が猛烈に痒くなる。
ひばりヶ丘○
東京都西東京市。東久留米の次。地図では地面から人が生えたマークOTLマーク。
駅周辺には老朽化した超高層集合住宅が建ち並んでいる。元ネタはひばりヶ丘団地だろうか。かつては日本最大級の公団住宅団地だったとのこと。現在は一部を除いて建て替えられている。
この駅のホームではトラウマの記憶が強制的に呼び起こされる。
大泉学園◇
東京都練馬区。ひばりヶ丘から2つ後の駅。地図ではマーク無し。・・・マーク無し!? 地面から人が生えたマーク。
道中は一面の荒野になぜか巨大なゼンマイが生えていた。
なお、間にあった保谷(渡りゾンビの女王黒木の故郷)での出来事は案の定スキップされた。水島監督のXによると異変自体はあったらしい。
大泉学園は作中世界で7G事件前に放送されていたトンチキアニメ『練馬の国のアリス』最終回後を模したネリアリランドになっていたが、静留たちがやってくる1週間前に悪役たちが復活し、反対に主人公たちは消された悪夢の世界に変わっていた。
ちなみに静留たちが旅立ってから描写が確認できるだけでも8回は夜を越しており(第3話:東吾野で1泊し、さらに出発までに1回善治郎との定時連絡(=17時)を経過,第4話:昼から開始して夕食1回と、翌日善治郎への定時連絡1回,第5話:自衛隊基地攻略に1晩,第6話:静留の渡りゾンビ遭遇で1晩,第7話:黒木との和解が夕方,第8話:昼間から始まってネリアリランド到着時点で夜)、1週間前というと静留たちの旅立ち後の時系列ということになる。
住民たちは依存体質のウライズミンになっていることもあり、徹頭徹尾自分たちの都合しか考えていない。これまでの地域は自分たちの都合とは別に、なんのかのいっても子どもたちの意思を尊重してくれていたので気風の違いを感じる。 東京都内に入ってからスワン仙人の地図のマークが静留たちの遭遇する異変と噛み合わなくなってきたことと何か関係があるのだろうか? 渾沌(目つきの悪い犬)は地図上では保谷にいたことになっている。
※ 以上3駅とも1個ずつずれていました。そりゃ噛み合わないわけだわ!
設定考察
トラウマ

晶のトラウマは誰かが溺れているのを見て見ぬふりしたこと。当時小学生だったようなので立ちすくむのも無理はない。このときの無力感が尾を引いて積極性に乏しい性格になったのかもしれない。
玲実のトラウマは「穴太郎」という動物を殺してしまったこと。右手にクワを持っていることから察するに、畑仕事をしていてうっかり、といったところだろう。野生のモグラか何かに名前をつけてかわいがっていたんだろうか。
撫子のトラウマは両親の夫婦喧嘩を止められず、結果お父さんがいなくなってしまったこと。彼女が過敏なほどに「仲よし」への強いこだわりを示すのはこれが原因だったようだ。
ポチさんのトラウマは檻の中で水を浴びせられているシーン。水島監督のXによると彼は保護犬なのだという。前の飼い主に虐待されていたということか。
静留はいうまでもなく葉香の件。
いずれも重い記憶だが、静留以外はそもそも当時の自分じゃどうしようもなかっただろう話。第8話で今さら出てきたことからしても、今話の撫子以外にストーリー上そこまで深く関わってくるものではないと思われる。
練馬の国のアリス

玲実と晶がこよなく愛するトンチキ深夜アニメ。どうやら葉香もハマっていたようだ。静留と撫子はそれほどでもなさそうだがひととおりの知識はある。全25話。
エスカレーターから裏練馬に迷いこんだアリスがろくでもない仲間たちを率いて渾沌一味と戦う冒険活劇。最終決戦の舞台である裏大泉はグチャグチャしてるようで実は将棋のルールで動いており、アリスたちはこれを挟み将棋のルールに改竄することで、ルール変更を把握していない敵一味を不意打ちで一網打尽にした。
主人公一派は学園のマドンナからお漏らし事件きっかけに引きこもりへと転落したアリス,拷問をSMか何かと勘違いしているっぽいごーもんティー,ファッション自殺志願者で首吊り紐がアイデンティティのスーちゃん,遺伝子組み換え技術により後遺症は残らないがしっかりぶりぶり状態にはなるケシの化身のケッシーの4人。
対する敵はアリスの大事なゲームをパクった三毛猫,ウィッカーマンからの転生体らしい序二段,接待の席で幼児プレイのうえヒバゴンの母乳を飲まされた経験がある罪悪感のかたまり,略称「セミのクォーター」なひぐらしとアブラゼミとその他のクォーター,酸性の母乳を撒き散らすくだん,唯一ムック本のあらすじ第4話までに影も形もなかったラガーマン,裏練馬のボスであり世界のルールを変えられる権限者でもありアルコールとヘロインにめっぽう弱い渾沌の7人+雑兵のウォーカー。
葉香の解説や玲実と晶の発言を総合すると、アリスは戦いの後、表の世界に帰って一悶着ありつつもウライズミンたちと幸せに暮らしていたようだ。ネリアリランドは最終回のエンディングのところを再現しているということだから、つまりあそこは表の世界の練馬区という設定だったことになる。
そして、エスカレーターの床板を外したところは作中でアリスが迷いこんだ裏練馬への入口だから、設定上はウライズミンたちが隠れていた牛丼屋こそが裏練馬。
一方、将棋のルールに支配されているのは裏の世界の大泉なのだから、表の練馬区で暮らしていたアリスたちは何らかの理由で裏大泉に誘い込まれたうえで奇襲されたものと思われる。
つーか晶の小学生時代からの愛読書『ごーもんティーの華麗なる水曜日』ってネリアリのスピンオフだったのかよ! 原作いったい何年やってたんだ。
軍人将棋
通常の将棋と異なり、マスに入った順番ではなくコマ同士の相性によって勝敗が決まるゲーム。
序二段の“工兵”とセミのクォーターの“騎兵”は相性有利なコマが多いからいいとして、罪悪感のかたまりの“スパイ”は敵大将以外に勝つことができず(アリス一行の“大将”格はスーちゃんではなくアリスだろう)、三毛猫の“地雷”に至っては相性有利の相手であっても相打ちにしかならないため、軍人将棋のルールならこの2人がアリス一行と交戦して無事でいられるはずがない。
撫子はちょっとの間だけ軍人将棋ルールだったと解釈しているが、本当に軍人将棋ルールでアリス一行が倒されたのかは割と怪しい。
一方でモチゴマの泉の新設定だけは軍人将棋っぽい。軍人将棋には持ち駒を復活させるルールが無いのだ。
ピックアップ
苦悩の梨

魔女狩りに使われたことでよく知られるエグい拷問具。もっぱら女性の膣に挿入されるが、ピクシブ百科事典の記述が正しいなら肛門や口腔にも入れられていたらしい。(あんまりマジメに調べる気は無い)
可動部多めの繊細な構造をしていることから察せられるとおり、中世ヨーロッパの金属加工技術で実用に耐えうるものが本当に製作できたのかは疑問視されている。
渾沌
「渾」は水の流れがいくつも交わって区別がつかなくなる様を示し、「沌」は流れる先の塞がれた水がその場で滞る様を示す。2つ合わさって、何もかもごちゃごちゃに混じっていてきれいに分けられない様子を意味する。
まあ、要するに“混沌”でも“渾沌”でもニュアンスにそこまで大きな違いはない。
ポチさん

今回ネリアリランドに着いてきていなかったなあと思いきや、実はその後も電車に乗っていない。なんならネリアリランドに着く前から姿を消している。
最後の登場はひばりヶ丘駅でトラウマを見ているシーン。
イミフな展開のたたみかけとハナから把握させる気がない情報過多っぷりが光るカオスワールドでしたが、静留たちに求められていることは案外これまでと変わりません。
向こうの流儀に合わせてやらないことです。
キノコなんて生やすべきじゃないし、独裁ミリオタと同棲するべきじゃないし、渡りゾンビたちと一緒に放浪するべきでもない。
それはそれで安らぎある終末が約束されるのでしょう。ですが、もしそれを選んだらその時点で二度と葉香に会いに行くことが叶わなくなります。
この世界のほとんどの人々はすでに世界が終わってしまったことを受け入れています。自分の人生をどう終わらせたいか結論を出しています。だから、まだやりたいことが残っている静留たちが彼らのペースに合わせるわけにはいかないのです。
彼らの多くは静留たちに悪意を持っているわけではありません。それでも。
こいつらの言うこと聞いてても何も話が進まない
「大丈夫。裏大泉の世界はね、グチャグチャしてるけど全部将棋盤の上にあるの。なんだかんだでみんな将棋のルールで動いてるんだよ。でね、それに気づいたアリスが挟み将棋の手を使って渾沌たちをやっつけて、練馬に帰ることができるの! ただね、その後がまたすっごくて――!」
普段は自己主張控えめな葉香が熱心に語ってくれたトンチキアニメの世界。
ムック本によると最終話ではピンチからの大逆転、さらに掃討戦までガッツリ最終決戦を描いているはずですが、それで練馬に帰ってからのエピローグに使える尺がそうたっぷり残るものでしょうか・・・?
それはさておき。7Gの影響で現実世界に具現化したネリアリランドは、なんか思ってたのと違う様相を呈していました。
そこらじゅうを敵キャラであるウォーカーたちが闊歩し、悪趣味な屋台の列で賑わい、その隅に主人公であるはずのアリスたちのお墓が並んでいました。
「序二段は銀将改め工兵。拙者は拷問マニアをトラップにはめ、拷問にかけたでごわす」
「桂馬改め騎兵。オイラ、セミのクォーターはあのラリってる野郎を蹴り殺してやったジジ」
「香車改めスパイ。罪悪感のかたまりであるボクは首吊り女を騙し討ちにしたよ。でもすんでの所で逃げられちゃった。スミマセン!」
「金将改め地雷。小生、アリスを爆殺してやったゾナ」
「伝説のモチゴマの泉にかけらを入れるとアリスたちは復活する!」
「大丈夫。俺たちだって昔は普通の人間だったと思うけど、今じゃすっかり依存体質バリバリの心も体もウライズミン」「だからそのカッコしてたらパワー出るかもだよ」
そのうえ、ネリアリランドの住民たちの言うことは重要そうな情報であればあるほどガセばかり。
裏大泉のルールは実際には軍人将棋じゃなかったですし、苦労してアリスたちのかけらを持って来ても復活しませんでしたし、アリス一行の衣装を着ても彼女たちの持つ特別な能力は一切使うことができませんでした。
静留たちは味方であるはずのウライズミンたちやスーちゃんの言うことを聞いてネリアリランド脱出を目指したわけですが、肝心の彼らの知っている情報が間違いだらけ。時間を浪費するばかりで何の役にも立ちませんでした。

クソゲーに片足突っ込んだお使いRPGだって個々のイベントにはもう少し得るものがあるぞ!
結局、静留たちがネリアリランドを脱出できたのは全て自力での攻略によるもの。
世界のルールが本当は普通の将棋準拠であることを見破って、自前の運動神経や武術を使って渾沌一派を撃破し、ついでに葉香が「池袋の魔女王・葉香姫」などと呼ばれている情報を引き出して旅路に戻ります。
「おーい。わかってるよ、渾沌。カオスカオスって言ってるけど大してカオスってない!」
勝利の秘訣はこの街のペースに乗せられないことでした。
「あのころはよかった」って思う?
「違うの! あれは不可抗力だし! ごめんなさい。見て見ぬふりして悪かった! 本当だってば!」
「穴太郎! 穴太郎! 成仏して、穴太郎!」
「お父さん! 帰ってきて、お父さん! あのとき私が間に入ってれば・・・!」
消せない後悔を抱えて生きてきました。
きっとこれからも忘れることはないでしょう。
そもそもこれは静留の後悔から始まった旅です。
ケンカ別れしたきり2年も帰ってこない葉香。あのとき葉香を泣かせてしまった理由に未だピンと来ていない静留。わからないことがあって、どうしても知りたくて、モヤモヤした気持ちを少しでも解きほぐしたくて、それで池袋を目指しています。
葉香に会ったところで仲直りできるかはわかりません。自分はあのときの彼女の気持ちを理解できていないのだから、今彼女が自分をどう思っているのかだって予想できません。ただ、会って話をしてみたい。
葉香のことを知りたい。葉香のことをわかってあげられなかった自分がくやしい。葉香のことがわかる自分になりたい。葉香とケンカしない自分になりた・・・、かった。
「いいかげんにしなよ! アリスたちはもう戻ってこないんだよ。いったん起こっちゃったことはもう変えられないの。今さら後悔しまくったって手遅れ! 終わり! ・・・あとになって、あのときこうすればよかったって何十回思ったって意味ないんだよ」

これは後悔から始まった旅。
撫子がウライズミンたちに怒鳴りつける声を聞いて、静留も密かに傷つきます。
そう。この旅に建設的な目的なんて無い。最初から明るい見通しは立ててない。
葉香と仲直りするために池袋に行くわけじゃない。今のままの自分で葉香と仲直りできるなんて都合のいいことは考えてない。
ただ、静留が理由を知りたかっただけ。
だからみんなを連れてくるつもりも無かった。
本当にただの自己満足の旅だから。
意味なんて無い。
「――だから。今できることを考えて、しよう」
撫子たちが静留の本音を正しく理解できているかはかなり怪しいところです。
第6話でケンカした経緯とそれに対する静留の気持ちを聞いたうえで、まだ静留が葉香と仲直りするために池袋を目指しているんだと思っています。
彼女たちは、ただ、静留を信じています。
静留の旅の目的すら半分誤解していそうな3人と1匹ですが、ただ、彼女たちが信じている静留の美点だけはおそらく正確に的を射ているでしょう。
静留は行動しました。
誰もが葉香のことを諦めていたこの終末世界で、葉香に対する後悔の念を抱えていた静留だけは、2年がかりで彼女を追うための手段を整えていました。
梱包材に使われていた池袋新聞を見つけた偶然。善治郎を正気に戻す手段を見つけた偶然。ささやかな手がかりを見つけ、それを絶対に離すものかと深掘りし、結びつけ、電車での出発に辿りついた彼女の執念。
漠然と、自分たちもこのままいつか吾野で動物になって終わっていくんだろうなあと考えていた撫子たちの心に火を灯すには充分すぎる、まぶしい心の輝きでした。
静留は昔からみんなのリーダーでした。年齢だけなら撫子が1つ上。頭の出来も晶や葉香のほうがよっぽどいい。腕っ節に自信はあれど単純な運動神経なら玲実が勝つ。人を思いやれる細やかさもない。みんなを惹きつけるユニークなアイディアを思いつくわけでもない。それなのに、いつもみんなの中心にいました。
彼女は行動する人だったから。躊躇も遠慮もすることなく。
だから、散々ダメなところを見せつけられてもなお、撫子たちは静留のことが好きなのでしょう。
対して。
「おお・・・」「アリス」「アリスみたい」「アリスの生き写し――」「この子なら楽しかった元の世界に戻してくれそう!」
ウライズミンたちは依存体質だと自称します。
自分たちの暮らす地域がこんなにも住みにくい場所に変わってしまっても、彼らは自分で行動を起こしませんでした。
アニメの設定通りのキャラクター性。元は大泉学園地域に住む普通の人間だったはずなのに。
アリスが失われた後も、彼らは別の誰かにアリスの面影を探して、再び依存しようとします。
今ネリアリランドで起きていることはアニメの筋書きからとっくに外れてしまっているのに。
「異変の原因は7G回線の暴走のせいだろうっていわれてる。ただ、元に戻す方法は全然わからない。ていうか戻す気はないんじゃないかって気がする」(第1話)
吾野の大人たちそっくりな姿。
7Gによる変化で混乱し、困惑し、だけど徐々に適応していって、安らかな日常を取り戻して。
最低限不自由のない暮らしに満足して。一向に変わる気配のない日々に多くは求めないで。かつてのもっと豊かだった生活は諦めて。先細りの予兆は見ないフリして。
きっと遠からず訪れるだろう自分たちの終末を静かに待って。
吾野も。東吾野も。稲荷山公園駅前も。清瀬も。それ以外の地域で人間性を保っていた他の人たちも。みんなそうでした。
ただ、大泉学園地域と違って、たまたま目前の平和が破壊されていなかっただけであって。
破壊されてもなお、こうなのか。
「ありがとうございました! これでようやく大泉学園に平和が訪れます。どうかこれからも私たちを末永くお守りくださいね、女王アリス様」
「え? 無理だけど。これから池袋に行かなくちゃなんないし」
静留の決断に惹かれて吾野を飛び出した撫子たちは至極当たり前の答えを返します。
「じゃあここの統治は誰が!?」
「あんたたちでやって」
「俺たちは依存体質なんだぞ!? ウォーカーたちがお礼参りに来たらどうする!」
「がんばって。自分たちでなんとかして」
「無責任だぞ!」
「なんでよ」
吾野で暮らしていたころは自分たちも動物になってしまう未来を漠然と受け入れていました。
普通と違うこと、諦めの悪いこと、何か目標のために努力すること。そんなことしていたのは静留ひとりだけでした。
後悔。
2年前葉香が失踪してしまったことに大きなキズを負っていたのが、吾野に残された人のなかでは唯一、彼女だけだったから。
別にね、撫子も、玲実も、晶も、消せないトラウマくらい持ち合わせているんです。だけど自分からは行動しませんでした。
ウライズミンたちに至っては今目の前で大きな問題が起きているにも関わらず立ち上がりませんでした。
思うのです。考えれば考えるほどに、痛切に。

「今できることを考えて、しよう」――。
自分の口から自然に飛び出してきたそのキレイゴトが、実際にやろうとするならどれほど難しい話であることか。
あの日ひとりで吾野を飛び出そうとした静留がどれほど立派だったことか。それができるというだけでどんなに特別であることか。どんなに――、惹きつけられる輝きを放つものか。
過去と現在と未来とは、誰にとっても連続しているものです。
昔にうれしい体験があればそれを反復したくなるものですし、反対に辛い出来事があれば二度と繰り返さないよう努力するもの。成功の仕方を知らなければどうしても無気力になってしまいますし、失敗を学ばない人はどんどん無謀になっていっていつか破滅します。
私たちの心は過去の積み重ねでできていて、今その天辺で何を思うかによって、これからの未来が決定されていきます。
すなわち、その営みは“未来”があればこそ。
過去にどんな幸せな日々を享受しても、どんな痛烈な後悔の念を抱えていても、未来なき人にその思いを生かす機会は永遠に訪れないのです。
ウライズミンたちは自分たちを叱咤してくれた撫子にアリスの面影を見ていました。ええ。それは確かにそこにありました。
あの日撫子たちが静留に見たまぶしい輝きは、今、間違いなく撫子たちの心にも灯っています。



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