HUGっと!プリキュア 第47話感想 たとえ望まぬ未来が訪れたとしても。

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なんでもできる。

なんでもなれる。

輝く未来を抱きしめて。

――負けないで、はな。

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(主観的)あらすじ

 ジョージ・クライとの最終決戦を控え、リストルやビシンと決着をつけるときがやって来ました。パップル、チャラリート、ダイガン、ドクター・トラウム、ジェロスやジンジン、タクミも助太刀します。

 リストルはかつて自分の兄弟たちを守ることに失敗し、ままならない現実に苦しみつづけた末に、ジョージ・クライの手によって心をなくしてもらうことでようやく安寧を得ました。プリキュアと、さらにはクライアス社を離脱した元社員たちと相対し、失敗を経験しながらなおも未来を諦めない彼女たちを哀れみます。
 ビシンは大好きなハリーの心が自分から離れていく現実に直面し、未来に夢見ることを諦めました。どんなに追い詰められてもあがきつづけるプリキュアやクライアス社元社員たちの思いが理解できず、苛立ちを募らせます。

 そんなふたりの拳を受け止めたのはハリーでした。常に一歩引いた視点からはなたちを俯瞰し、これまで他人の事情に干渉しようとしてこなかった彼でしたが、プリキュアの戦いを見守るうちに彼は変わりました。自分の身をなげうってでもリストルやビシンの思いをまっすぐ受け止めることにしたのでした。
 同じ兄弟でありながらずっと心をすれ違わせてきた3人はお互いに対する愛を取り戻し、ここに彼らの戦いはようやく終わりを迎えました。

 残るオシマイダーの群れをパップルたちに任せ、はなたちはジョージ・クライとの決戦に臨みます。
 ジョージ・クライはどういうわけかはなに執着していました。はなの未来を知っているという彼ははなを拘束し、圧倒的な力を振るって残るプリキュアたちを痛めつけます。ただ、はなに未来を諦めさせるためだけに。心蝕まれていくはな。
 けれどプリキュアたちはどんなに傷ついても諦めませんでした。何度も立ち上がってジョージ・クライに対抗し、心が折れそうになっているはなを明るく応援しました。これまではながみんなのためにしてきたことが、今度ははな自身のところに返ってきます。

 だから、たとえ他のプリキュアやクライアス社元社員たちが力尽きてしまったとしても、はなは再びジョージ・クライと対峙します。“永遠”の花言葉を持つ黄色い花畑を舞台に、最後の戦いが始まります。

 ジョージ・クライがときおり語っていた「何も持たない少女」のおとぎ話は、結局のところはなの未来に起きた出来事だったのかもしれませんね。キュアトゥモローたち未来のプリキュアの存在があったので、てっきりそっちの話なのかと思っていたのですが。次話あたりでその種明かしもあるのでしょう。
 ただ、第11話の感想文でも書きましたが、そのおとぎ話はすでに覆っています。というかそもそも語り手による人物評自体がはなの実態と乖離していました。はなは「何も持たない少女」なんかではありません。はなにはみんながついています。

 ジョージ・クライはこれから訪れる未来が悲惨なものであることを知っています。それはたとえ彼を倒したとしても避けられない必然。むしろ彼はその確定未来から人々を救うために時間を止めようとしています。はなたちが彼を止めようとするのなら、代わりに確定された未来を覆す方法を提示しなければならないでしょう。
 ――と、書くとたいへん難しい問題であるかのように感じられますが、実のところ答えなんてとっくに出ています。ずっとずっとはなたちはその答えを体現しつづけてきました。

 「まだ“オシマイ”じゃないわ!」

永遠の少年

 「ソリダスター。花言葉は『永遠』」
 この「永遠」という花言葉の由来がどうにもわからなくて、放送後しばらくネット上をうろうろしちゃいました。ちょっと語りますが本当に合っているかどうかはわかりません。

 どうやらこの花言葉を託されているのはソリダスターというよりも、その原種であるソリダゴという花のようです。ソリダスターはこのソリダゴとアスターの交配種となります。
 そして花言葉自体も、より正確には「永遠の少年」というみたいですね。(「永遠」までで切って紹介するサイトももちろんあります)

 永遠の少年。
 ユング心理学の用語です。元々はいろんな神話にちょくちょく出てくる不老の英雄や神々のことのようですね。いつまでも若々しく、どんな時代にあっても全盛の力を振るいつづけるヒーロー。人種や民族を問わず、あらゆる人間が不思議と普遍的に思い描く理想像のひとつです。
 転じて、ユング心理学的にはいつまでも子どもの心を忘れることなく、どれだけ年齢を重ねても老練しない人物を象徴する言葉でもあるようです。大人になりきれない子ども。夢に目が眩んで現実を直視しようとしない人。

 「周囲の雑草が大輪の花を枯らす」
 ソリダゴの一種にセイタカアワダチソウという花があります。
 厄介な雑草として有名な花ですね。それ自体がたいへん生命力旺盛で土壌の栄養を軒並み吸いつくしてしまうだけに留まらず、アレロパシーと呼ばれる化学物質を出して周囲の植物の生長を阻害することまでしてしまいます。
 ここまで深く言及しているサイトが見つからなかったのでちょっと自信はないのですが、おそらくはこの特性が「永遠の少年」という花言葉の由来なのではないかと思います。
 周囲に合わせようとせず、周囲と共生しようとせず、ひたすら自分に都合のいい夢だけを追求しようとする姿勢。

 ソリダゴという花自体の語源も、ラテン語の「solid(完全な)」+「ego(自我)」。
 「雑草という名の植物はありません!」
 「どんな小さな花にも名前があるのです!」

 絶対そういう意図で書かれたセリフではないはずですが、この花のことを調べていると、ふと考えずにはいられません。
 「完全な自我」を追求しているのは、プリキュアとジョージ・クライ、はたしてどちらの方なんだろう。
 「永遠の少年」として批判されているのは、はたしてどちらの方なんだろう。

愛という幻想

 「俺はもう悩まない。全ての苦しみから解放された存在」
 「俺はもう悩まない。明日への希望など、要らない」

 リストルとビシンを苦しめた現実に、彼らの求めていたものは結局ありませんでした。
 リストルは兄弟たちを守るために精一杯の努力をしました。なのにその願いは残酷な現実によって無碍にされ、兄弟たちは病に伏し住まいまで焼きはらわれ、それを守るために費やしてきた努力すべては結局ムダに終わってしまいました。
 ビシンはハリーの心を取り戻すために精一杯の努力をしました。なのにその願いは残酷な現実によって無碍にされ、いくら叫んでもハリーは帰ってこず、それを取り戻すために費やしてきた努力すべては結局ムダに終わってしまいました。

 「お前たちの前向きな心、危険だ」
 彼らの努力は彼ら自身を深く傷つけました。
 結果が伴わないなら努力することに何の意味があるのでしょうか。リストルはクライアス社に身を捧げ、ビシンは何度もプリキュアと戦い、それぞれにたくさんの苦しみを負担してきました。未来に願いを叶えるための代償と信じて。
 その結果が“無”なのであれば、彼らの努力は無意味どころの話ではありません。骨折り損のくたびれ儲け。収支プラスマイナスゼロどころかはっきりとマイナスです。

 明日への希望は敵です。甘い夢だけを見せて、しんどい努力ばかり要求してくるから。
 希望を訴えるプリキュアは敵です。たくさんの人に幻想を見せて、みんなを不幸にしてしまうから。

 ほら、また哀れな被害者が数人。
 「礼を言うのは私たちの方だ。君たちプリキュアが私たちに再び夢をくれた」
 夢を見せてもらえたからって、それがなんだというのでしょう。本当に叶うかどうかもわからないのに。彼らならなおさら。夢が叶わなくて苦悩した経験もあるはずなのに。
 「サンキュー。ちゃんはなのフレフレ、オレちゃんの心に残ってる。それに、オレちゃんには25人の登録者がついてるんだからな!」
 誰が応援してくれるからって、それがなんだというのでしょう。結局夢に賭ける原資として努力を負担するのは自分なのに。そのせいで痛い目を見てきたはずなのに。
 「何度膝をついても立ち上がるわ。大人だって、なんでもできる、なんでもなれるんだから!」
 可能性があるからって、それがなんだというのでしょう。どうせそれで失敗したら、また泣きたくなるくらい深く傷ついてしまうのに。

 「なんであんたが今さら明日を夢見る!」
 ドクター・トラウムの手元には2枚の写真。ひとつははるか昔に胸に抱いた我が子の姿。もうひとつは願いを込めてつくりあげたルールー・アムールの姿。
 どちらも結局彼の手から離れてしまったというのに。どちらも彼を傷つけた元凶、叶わぬ夢そのものだったというのに。どうして。
 「愛に気付いたからだ」
 彼は悪びれもせずこう答えます。
 「そんなもの幻想だ!」
 「そうだ。だからこそ、信じなければ愛は見えない」

 夢は叶わないかもしれないのに。
 夢を叶えるためにはまた努力を支払わなければならないのに。
 夢が叶わなかったらまた傷つくだけなのに。
 それでももう一度夢見ることにした理由を、彼は「愛」と表現しました。

 リストルとビシンがかつて夢を抱いていたのはどうしてだったでしょうか。
 失敗に終わったとき深く傷ついてしまったほどの努力を費やした理由は。
 大好きな兄弟たちを守りたい。
 大好きなハリーの心を取り戻したい。
 それは、愛する人のためだったからこそ。

 ねえ。努力することって、そんなに辛いことでしょうか?
 たしかにその目的はあくまで夢を叶えるためです。
 たしかに振り返ってみれば辛かった想い出もたくさんあります。
 たしかに失敗に終われば全てがムダになってしまった心地になります。
 けれど、夢のために努力する日々って、本当に辛いものだったでしょうか?

 はなはイケてる大人のお姉さんになる夢を叶えるため日々努力しています。
 さあやは自分のなりたいものを見つけるために努力をはじめ、今はお医者さんになるため努力を続けています。
 ほまれはフィギュアスケートの選手としてもう一度活躍するために努力しています。
 えみるは大好きなギターでみんなを笑顔にするために努力しています。
 ルールーはいつか未来の世界に歌を広めるため今から努力しています。
 努力して。努力して。努力して。努力して。努力して。そして、みんな毎日笑っています。
 だって、毎日自分の大好きなものに触れて、あるいは毎日大好きなものを追いかけているんです。
 そんなの楽しいに決まっているじゃないですか。

 プリキュアは努力を奨励します。
 直近ではGo!プリンセスプリキュアが叶いっこない憧れを抱いてそれでも近づこうと努力し、
 魔法つかいプリキュア!は友達といつかお別れする日が来ると知りつつ一緒にいるため努力し、
 キラキラプリキュアアラモードでは好きな気持ちも嫌いな気持ちも両方あることを自覚しながら、なおも大好きな気持ちのために努力しました。
 けっして楽しいことばかりではありませんでした。はなたちと同じく何度も傷ついて、何度も迷いを抱いて、けれど、それでも、みんなはなたちと同じように毎日楽しく笑えていました。
 自分の好きなもののために努力する毎日が、ただ、幸せであればこそ。だからこそプリキュアは努力を奨励します。

 「あんたは俺らの兄貴やろ! 仲間が、家族が心をなくして苦しんでるときに放っとけるか!」
 「ビシン。俺はお前の心を受け止める」

 たとえ夢を叶えるための努力が実を結ばなかったとしても、それでもその努力がムダだったということはけっしてありません。収支プラスマイナスゼロどころかはっきりとプラス。彼らの手元には愛が残りました。
 愛なんて幻想。いつもは目に見えないものだけれど。
 未来に夢見たからこそ自分のなかの愛に気付いて心満たされ、
 愛するもののための努力だからこそ辛いだけでなく楽しくもあり、
 夢やぶれても愛は残るからこそ恐れず前へ進みます。

 「明日を失いつつある世界のため、剣は何も持たない少女を選んだ。そして少女は勇気を胸に戦った。なぜ少女は戦うことができたのか。誰かのために身を削ってまで」(第11話)
 その理由は。

確定未来に打ち勝つために

 「僕は君を救いたい。・・・君はそこで見ていなさい。理想からほど遠い現実を」
 「希望を持つことは残酷。望まぬ未来を前に、人は歩みを止めてしまう」

 ジョージ・クライははなだけをオリに閉じこめ、他のプリキュアやクライアス社元社員たちを目の前で痛めつけてみせました。どんなに希望を思い描いてもどうしようもない現実があるんだと、見せつけるために。
 どうしても彼女の進む未来を変えてあげたいと思っているのでしょう。
 「少女が目指すのは花咲き乱れる理想の王国。夢は叶い、人々は笑顔に満ちた。だが、人々の望みは尽きなかった。ひとつの夢が叶えばそのまた次へと。明日への希望は欲望へと変わり、王国を狂わせていった」(第46話)
 彼はどうやら、自分の夢が災いして望まぬ未来をつくってしまった少女をひとり知っているようですから。
 「僕はこの世界の結末を知っている」

 「プリキュアは諦めない!」
 もちろんこんなやりかた、「諦めない、負けない」が信条のプリキュアに通用するわけがありません。攻撃を受けているさあやたちが絶対に諦めないんですから、それを見ているはなの心だって押しきれるわけがありません。
 この程度の試練は当然乗り越え、物語は最終決戦へと進みます。

 問題はジョージ・クライを倒したあとですね。
 今回の戦いは彼をやっつけて終わりではありません。時間が進んだ先に訪れるという絶望的な未来のことを受け止め、それでも未来の輝けることを証明してみせなければなりません。そうでなければこの物語を見守っている私たち視聴者ははなたちのいなくなったあとの輝く未来を信じつづけることができなくなるからです。

 その回答のひとつとして示されたのが、先ほどの夢に向かう努力が絶対にムダにならないという話。
 夢のため努力すること自体に意味があるというのなら、たとえ望ましくない結末が待っている可能性があるにしても、さしあたって今は努力を続けることができます。愛に満ちた楽しい毎日を営むことができます。

 それからもうひとつが――
 「あんたは俺らの兄貴やろ! 仲間が、家族が心をなくして苦しんでるときに放っとけるか! 一緒ならやり直せる。俺たちの未来をつくろう!」
 「不甲斐ない兄貴ですまなかった。お前のさびしさに俺は寄りそうことができなかった。ビシン。俺はお前の心を受け止める」

 このシーンと、
 「私たちはひとりじゃない! 奇跡を信じる!」
 「奇跡を起こす!」
 「私にできないことがあなたにはできます。あなたにできないことが私にはできます。力を合わせれば素晴らしいことがきっとできるでしょう」
 「どんな自分になりたいの? はなの目指してきた“野乃はな”から逃げちゃダメ!」

 このシーンですね。

 「跳ぶのが怖い。応援されることも。けど・・・。もう自分から逃げない! 私は私の心に勝つ!」(第5話)
 かつてほまれはスケートに挫折し、傷ついた心のまま再起することができずにいました。
 「そっとしといたれや。充分がんばっとるヤツに『がんばれ』言うのは酷やで」(第5話)
 彼女の心情を思いやるなら放っておくのが優しさ――と、考えることもできるのでしょうが、そのやりかたでは彼女は現状維持まではできても、もう一度立ち上がれるほどの心の強さを取り戻すことはできませんでした。ほまれを再起させることができたのは、勇気を出して彼女の苦しみにエールを贈ったはなでした。

 今話においてハリーは最初のころから大きくスタンスを変えて、自分から進んでリストルの心を受け止めにいきました。その後リストルも同じくビシンの心を救い、3人はお互いの兄弟愛を取り戻すことができたのでした。

 「どうして私はさあやみたいに賢くないし、ほまれみたいに運動もできないんだろう。どうして私、何も持ってないんだろう」(第11話)
 かつてはなも挫折したことがありました。
 このときはなを再起させたのはお母さんと、それからさあやとほまれからのエールでした。
 「いつでもがんばり屋さん。誰かのために一生懸命になれるところ。失敗してもガッツで乗り越えるところ。素直で表情がクルクル変わって、見ているだけで元気になれるところ。まだまだいっぱいあるよ。私が憧れた、はなのステキなところ」
 「はな」
(第11話)
 このときもやはり、はなはひとりではずっとモヤモヤ悩んでばかりでした。心に整理をつけることができたのはお母さんと、それからさあやとほまれからのエールを受け取ってから。

 今話においてもはなはひとりではトゲパワワに屈してしまいかねないところでした。心が折れる前に踏みととどまることができたのは、今回もさあやたちが励ましてくれたから。(4人の口を塞いでしまえばオッサンにも勝ちの目があったのにね)

 未来に大きな絶望が待っているとして、私たちにできる対策は必ずしもそれを避けることばかりではありません。
 絶望して、挫折してしまったとしても、もう一度立ち上がれるならいつか乗り越えられるはずです。
 ・・・まあ、それが簡単なことではないからジョージ・クライは時間を止めることを選んだんですけどね。けれどはなたちならそれを可能とする方法論を知っています。これまでずっと、みんなでお互いをフレフレしながら、それぞれの挫折を乗り越えてきました。

 「周囲の雑草が大輪の花を枯らす」
 ジョージ・クライは「雑草」と言いました。周りにいるさあやたちが余計な希望を見せるから、はなが不幸な未来を選んでしまうのだと。
 「雑草という名の植物はありません!」
 「どんな小さな花にも名前があるのです!」

 けれどそうではないんです。はなはむしろみんなに支えられているからこそ、ここまではならしく輝きつづけることができました。ジョージ・クライが賞賛するはなの精神性だって彼女ひとりで培ってきたものではありません。ときにはなの方から応援し、ときにみんなの方からはなに応援を返し、お互いにお互いの未来を信じ合うことができたからこそ、今はなたちは心から輝く未来を信じることができています。

 「そうだ、苦しみだ。何度救っても人間がたどる未来は破滅へと続いている。プリキュアの戦いは無意味だ」(第46話)
 苦しみがどうした。破滅がどうした。それでもそのたびに誰かが救ってきたんでしょう? だったら今度も私たちがそれをやればいい。
 プリキュアは自分たちの小さな日常を守るヒーローです。戦いのスケールこそ地球規模(宇宙規模)になりがちですが、彼女たちの行動原理はいつだって自分たちの楽しい毎日を守ること、それだけです。
 私たちも彼女たちを見習って、みんなで自分たちの日常を守るため支えあえば、破滅の未来のあとにだってまた立ち上がれるでしょうとも。

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    コメント

    1. 東堂伊豆守 より:

      SECRET: 0
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      何度傷つき、倒れても。「諦めない」で立ち上がる。この"命"が、続く限りーーーーーー。
      ……まあ、確かに"命"が続く限りは、「諦めない、負けない」でも良いんですけどねぇ。際限のない消耗戦の果てに結局力尽きて"命"をなくしてしまったら元も子もないのではないでしょうか……。
      たぶん、ジョージ・クライ氏が愛した女性ーーーーーー"民衆を導く自由の女神(プリキュア)"も、そうやって「諦めない、負けない」で消耗戦を戦い続けた挙げ句"命"をなくしたんだろうと思います。だからクライは、野乃はな達プリキュアが幾度となく立ち上がるたびに深い感動と共にーーーーーーそれ以上に深い絶望を味わっていたんでしょうね。「どうあっても悲劇は繰り返されてしまうのか」と。
      そういう相手に「諦めない、負けない」と水掛け論を吹っ掛けて立ち向かうのは逆効果にして正に際限のない消耗戦で……。しかもクライは「愛した女性=(たぶん)未来の野乃はなが力尽きた具体的事情」という切り札を未だ隠し持っている。この切り札を突き付けられたとき、果たしてそれでもはなは心折れることなく立ち続けていられるのだろうか……?
      たぶん立ち続けることは無理……だと他ならぬはな自身が感づいているんだと思います。だから彼女はジョージの抱える苦悩の正体に迫ることを避け、「私はプリキュアだもん」と肩書を振りかざして彼を一刀両断にしようとしている。ーーーーーーかつて「委員長と話してるんじゃない。さあやちゃんと話してる」と薬師寺さあやをたしなめた野乃はなが。かつてチャラリートを剣で一刀両断にすることを拒否し、HUGで彼の苦悩を受けとめた野乃はなが……。
      とはいえ、ジョージ・クライの野望を阻止するヒントもおそらく彼の苦悩の具体的事情の中にある筈で、それを如何にして"誰が"攻略するか……が勝利のポイントになると推察しているんですが、さて如何相成りますか。

    2. 疲ぃ より:

      SECRET: 0
      PASS: 80f390687300bdae4fc284a720ece2aa
       ああ、私そもそも「死んだらどうせ死ぬだけだし」って発想なので、命を失うことを最悪手だと考えていないんですよね。字面がたいへんアレなのでプリキュアの感想文ではなるべく書かないようにしているんですが。

       もし自分が死んだらそれ以降の世界のことなんて知りようがありません。だからぶっちゃけどうでもいい。私が生きている間だけでも世のなかがなるべく良い方向に進んでいってくれたらそれでいい。私も自分の手に負える範囲でなるべく良いことをしたいと思います。
       が、それ以降は関係ない。そこから先は未来を生きる子どもたちががんばることです。私が責任を取れることではないし、責任を取りたいとも思いません。

       それに、もし私のしてきたことを良いことだと評価してくださる方がいたなら、私が死んだあとは彼らが私の後を引き継ぐでしょう。おそらくは無断で。「自分がやりたいから」と。もし誰も継いでくれなかったなら、それは単に私のしてきたことがどうでもいいことだったというだけのこと。
       だから後のことなんて気にしません。安心して自分にできることだけを考えます。

       ジョージ・クライの弁を信じるなら「何も持たない少女」の前にも後にも世界をどうにかしようとした人はたくさんいたということでしょう。だったらそれでいい。「何も持たない少女」の意志はたしかに後代へ受け継がれています。世界が何度破滅したって誰かが何度でも蘇らせることでしょう。
       ひとりの人生の結末だけでその人の人生の価値を計るな。たかだか死んだくらいのことで全てが無になるほど世のなか冷たくない。

       ・・・とまあ、そういう考えかたなので、はな個人に執着を見せたジョージ・クライにはいよいよ「何言ってんだこいつ」という評価がマシマシ中です。

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