生徒役:電脳少女シロ、花京院ちえり、ヤマトイオリ

今度テレビ局の電圧を少し上げます。

↓未公開シーンが投稿されているYouTube公式チャンネル↓
↓レジュメがガチなことで知られる私立ガリベン大学↓
出演バーチャルYouTuber
電脳少女シロ
「不老不死の技術が発達して誰も死ななくなったから!」
最近遠慮なくボケたおせる共演者との人脈が広がってきてますます絶好調な電脳1歳児。その筆頭であるコトウゲ教官からたっぷりイジられるべく、今回も脳みそフル回転して9割胡乱&1割マトモな発言で大暴れしました。
やたらと語録が豊富、そしてやたらと逸話も豊富。というのも彼女は多趣味・多芸なうえ、やたらと柔軟な発想力も持ちあわせ、ついでに傍若無人な性格なため、自由にさせると大抵常人に理解できない奇矯な言動をしはじめるからです。彼女の動画を見てなんともいえない気持ちになったときは「シロちゃんの動画は為になるなあ」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、こう見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。きわめてタチが悪い。
花京院ちえり
「ご褒美ほしい! ご褒美ほしい! ご褒美ほしい! ご褒美ほしい!」
時給200円で一日平均20時間ほど稼働する従業員を6万人以上抱えるお嬢様。ふわふわした言動ながら今回妙に経営者視点からの発言が多かったのは、そういうキテレツなキャラクター設定によるものです。
花京院ちえりの特徴はなんといってもかわいいことです。彼女は自分の外見がかわいいことを信じていますし、内面もかわいくふるまおうと心がけていますし、視聴者にもかわいいと言ってほしいと呼びかけています。理想のため地道にがんばる努力の人です。彼女は花京院ちえりがかわいくあるためにありとあらゆる努力を欠かしません。女は度胸、ちえりはかわいい。今日もちえりちゃんはかわいいなあ!
そんなわけで彼女の配信の空気は全体的に茶番じみています。まず彼女自身が「ちえりちゃんはかわいい」と宣言し、すかさず視聴者も「ちえりちゃんはかわいい」と唱和することで、花京院ちえりというバーチャルなアイドルをみんなでかわいく盛り上げていく――。一種の視聴者参加型演劇が彼女のメインコンテンツとなっています。
ヤマトイオリ
「え、すごい! そうなんだ。うんうん。え! そうなんだ! すごい! すごいすごい!」
とっても素直な良い子。前回出演時に発言の大部分がカットされてしまったことを反省しているらしく、最近では話題が転換するつど結論を先に言うなど、話しかたに工夫が見られるようになってきました。かしこい。
最も好評を博しているコンテンツはなんと雑談。雑談配信といえばネタが尽きた配信者の逃げの一手とみなされがちですが、彼女の場合は違います。正真正銘雑談こそが面白い。見てのとおりのおっとりした口調から繰り出されるのは「あのねあのね!」で急転直下のジェットコースター&夢幻ループ。話している内容はごくありふれた日常の出来事のはずなのですが、俗世の垢に汚れていない平和な世界観と幼児のように純朴な好奇心でもって我々を困惑させ、さらに話題がころころと、それでいてとめどなくつらつらとシームレスに移り変わっていくスピード感で我々を翻弄します。「ゆっくりハイペース」「性善説の擬人化」「頭お花畑」などの異名はダテじゃない。
ちなみに思考の流れが柔軟すぎて誤解されがちですが、実は論理と探究心を重んじる性格です。幼少期のエジソンみたいな感じ。
授業構成おさらい(+ 補足事項)
タイトル:歴史の謎を解明せよ!
今回特別講師を務めたウキヨ先生は研究者ではなく高校教師です。授業の方針もこれまでの先生とは大きく違っていて、ひとつの真理を解き明かすために論理を積み上げるのではなく、ひとつひとつの事柄に親しみやすくするためエピソード形式の知識を教えるというスタイルを取っていました。名門校や塾で実施されている授業に近い形式ですね。
超難問1:なぜお城に松の木が植えられているの?
一説には非常食にするためだともいわれています。 松は日本の歴史上、戦中に限らず飢饉の際の救貧食としても活用されていたことが知られています。たとえば外皮を剥ぎ、樹幹の部分を柔らかく煮て、餅に練り込むという食べかたが秋田県由利本荘市に伝わっています。
どうしてもっと一般的な食料作物ではなくあえて松なのかといえば、松は生命力が強く人工的に盛り土された城内の土でも育つうえ、松ヤニが採れたり目隠しになったりと、他にも利点が多いためといわれているようです。
ヤマトイオリが童話に出てくるお菓子の城を連想していましたが、ある意味ではそのとおりで、日本の城は兵糧攻めに備えて松の他にも様々なところに食料を備蓄したり生産したりしていました。
超難問2:なぜ古墳は作られなくなったの?
貴人たちの間でのトレンドが、単純に巨大な墳墓をつくることから、舶来の最新文化である仏教寺をつくることにシフトしたからといわれています。
ちなみに有名な前方後円墳はその名のとおり、本来は手前側が台形部分で奥の方に円形部分が来るのが正しい見かたです。
超難問3:なぜ黒船は黒かったの?
腐敗防止にコールタールが塗ってあったためです。西洋では遠洋航海用の帆船のほとんどがこの処理を施されていました。
ペリーの目的は太平洋上で鯨油を採るため、日本を補給拠点にすることでした。ちなみに当時はまだ太平洋の横断が難しかったこともあり、そもそも入植の経緯からアメリカの主要都市が東側に集中していたこともあり、日本へは東回り航路で来航しています。
超難問4:なぜ貴族は毎日日記をつけていたの?
東京大学の入試問題に出たと言われて生徒たちは俄然やる気がアップ。 花京院ちえりがふわふわとした説明ながらも、「自分の生活の記録を詳細に残すため」と仮説を立てました。これが部分正答。実は当時の貴族たちは定期的に行うべき政事や祭事の記録を日記というかたちで残し、後代へ伝えていたのでした。
ちなみに日記である以上、電脳少女シロが予想した「日常の恨み辛みを吐き出す」という要素もあるにはあり、当時の有力者やライバルへの悪口が書かれた日記もしばしば見つかっています。
もうひとつちなみに、冒頭で紹介された紀貫之の『土佐日記』はあえて女文字(かな文字)を使うことで私的な出来事を情感豊かに綴った作品です。半ば公文書であった従来の日記とは異なり、読み物として日記の新しいありかたを開拓した『土佐日記』は、文学文化として後世に大きな影響を与えていくことになります。
超難問5:なぜ大井川に橋をかけなかったの?
旅人を背負って川を渡る川越人足という職業があったというヒントを受け、花京院ちえりが正答。江戸時代後期になっても大井川に橋がかからなかったのは彼ら川越人足たちの仕事を守るためでした。
これと別に電脳少女シロが「敵軍の侵入を防ぐため」という予想を立てたのですが、この学説は現在否定されています。そもそも江戸近くの大井川は流量が非常に多く、橋をかけるのも舟を渡らせるのも技術的に難しい川でした。その一方で少し下流へ迂回すると今度はぐっと流れが穏やかになり、その気になれば徒歩でも渡れる川でもありました。これでは敵軍を防ぐことなんてできません。また、これこそが架橋ではなく川越人足が長く活躍することになった理由でもありました。
さすがに明治時代に入ると橋がかけられるようになりましたが、このうちのひとつ、蓬莱橋は世界一の長さを持つ木造の歩道橋としてギネス記録になっています。いかに橋をかけるのが難しい川だったか偲ばれるというものです。
感想
調べてみるとウキヨ先生は以前も深夜帯に半年間ほどレギュラー出演番組を持っていたようですね。どうりでトーク(特にノリツッコミ)がこなれているわけです。
個人的にはやっぱりひとつの超難問を論理を積み重ねながら解き明かしていくスタイルの方が好きなんですが、こういう小気味よいオムニバス形式もアリですね。ナガヌマ先生のときもペンギン回でオムニバス形式は試されていましたが、この形式の授業は研究者より高校教諭の方が手慣れているのかもしれません。
この手のちょっとしたエピソードを紹介しながら解説していく授業スタイルは、主に名門校や塾で受験対策としてよく行われているものです。
人間の脳の特性として、ある程度の物語性を持ったエピソード形式の情報の方が記憶に残りやすい性質があるためです。また、「どうしてそうなるのか?」「この結果どうなるのか?」という情報を含むおかげで、ちょっとひねった応用問題にも対応しやすくなるメリットもありますね。
とはいえ、詰め込み型の授業と比べてどうしても情報密度が少なくなるため、学習内容が膨大な高校の授業でこういうスタイルを貫くのは現実には難しいことです。生徒たちのモチベーションが高く、大まかな内容を事前に予習してもらえる環境でなければなかなか成立しません。そもそも勉強自体に興味を持てない生徒の場合、せっかくのエピソード形式の情報も結局テストに出るところだけ丸暗記して終わりですし。
その意味では、この番組が最初にナガヌマ先生やタナカ先生の、まず勉強すること自体に楽しさを感じさせる授業形式を取りあげてきた今だからこそ、(名門校出身じゃない)私たちでも今回の授業を楽しめたんだといえるのかもしれません。
私も上記“授業構成おさらい”の項にずいぶん(勝手に)補足事項を増やしてしまいました。ググるの楽しい。
で、ググっていて思ったんですが、今回の超難問もその気になればどれも1題で30分保たせられそうな、裾野の広がりを感じさせる話題でした。必ずしも自然科学じゃなくてもナガヌマ先生形式の授業ってやれそうだなあと。
そのうち人文系の研究者とか来ないかなー?
さて、出演バーチャルYouTuberの話をするなら、今回はなにかと細かいところで個性が出たなあという印象です。
「お寺がつくられるようになったから」
「・・・そっか!」
電脳少女シロは相変わらず知識が豊富ですね。よく「お寺」というワードひとつで納得できたものです。こんなの前もって飛鳥文化における仏教の立ち位置を知っていないと気付けませんよ。それかせめて“埋葬”という風習における宗教の意義についての知識。
あくまでバラエティ番組なので大半の発言はとぼけていますが、やはり基本的に聡明です。
「不老不死の技術が発達して誰も死ななくなったから!」
ウキヨ先生を呆然とさせたこの発言とかもうね。 不老不死の技術なんて現代でも確立していないのはわかりきっていることでしょうに、仮にその技術が確立していたとしたらたしかに古墳はつくられなくなるはずだよなあと、不思議な説得力を帯びています。現実の歴史ガン無視で架空史をシミュレートしてみせたわけですね。つくづく変なところで頭の回転が早い。
「なんかー、お城ってー、なんか白とか茶色とか――」
「聞いて聞いて聞いて聞いて! 絶対当たってる!」
花京院ちえりはいったいこのときの予想(景観のため)にどんだけ自信があったというのでしょうか。後のリアクションからしても、絶対間違っているってわかっててわざとズ太い発言をしていますよね。
でもこのアホっぽい説、なるほど花京院ちえりというキャラクターにはよく似合ってる。(なんだかんだで経営者視点=合理的な思考なので正答にも近くなりますしね)
「ご褒美ほしい! ご褒美ほしい! ご褒美ほしい! ご褒美ほしい!」
今回いつにも増してアホっぽい発言が多く飛び出しました。普段の配信だとこういうの、むしろ視聴者コメントから飛び出してくるので、彼女はツッコミを入れる側のはずなんですけどね。けれど彼女自身が言うのもなんだかそれはそれで花京院ちえりらしい。彼女の配信は視聴者コメント込みで“花京院ちえり”というひとつのコンテンツだったんだなあと改めて実感します。
いつも視聴者といっしょに戯れているように、今回も他の共演者を巻き込んで堂々と茶番を展開していました。
「えっと、屋根がチョコレートだったりするんですか?」
出演者紹介の項でも少し書きましたが、ヤマトイオリは話しかたを変えたおかげで発言が拾われやすくなりました。とりあえず最初にズバッと肝心なところを言ってしまえば周りも口を挟みやすくなるし、編集点もつけやすくなりますよね。かしこい。
ただ、彼女の場合はひとつ学んだことから色々と連想をふくらませていくのが持ち味なので、今回のようなオムニバス形式よりナガヌマ先生の順を追っていくスタイルの方が向いていたのが惜しいところ。来月すぐもう一度出演する機会があるようなので、そのときに期待しましょう。
「なんだろう、『私こんなに毎日、あのー、贅沢な生活をしているんだー』っていうリア充アピールをしながら、あの、まわりの貴族になんかマウントを取っていくー、みたいな、現代のInstagramーみたいな感じで使っていたのかなー、みたいな」
でも新しい話しかたはたしかにかしこいですが、元々のつらつらっとした話しかたもこれぞヤマトイオリって感じで、やっぱり両方いいですよね。
この場面で文字が上に流れていくワイプ演出をしたガリベンガーVスタッフはよくわかっている。というかガリベンガーVのスタッフ、.live所属の各キャラクターの特徴を熟知しすぎている。ここまできたらただのファンじゃねーか。
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