亜人ちゃんは語りたい 第4話感想 「特別」はただ特別なだけで特別になってしまう。

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亜人の特性だけ見ていると個性を見失う。
人間性だけ見ていると悩みの原因にたどり着けない。

 他の記事にかかりきりで1週間遅れてしまいました。すでに第5話まで視聴済みです。日下部さんのお話について本格的なところは第5話の方でやって、今回は別の話を中心に扱うんですね。

とりとめなく

 「私が亜人だからですかね!?」 日下部さんのメンドクサイところ。詳しいところは次回の話題になりますが、彼女の問題の根本は亜人であることに起因しません。彼女の聞いた陰口に亜人がどうこうという話は含まれていません。なのにどういうわけか彼女はそれを亜人のせいにしてしまいます。そこが、とてもメンドクサイ(愛おしい)。

 「ひかりや町なんかは受け入れて生活してるからなあ」 町が亜人を受け入れるのはわかります。彼女の場合はデュラハンであることを隠して生活することが出来ませんから。マトモに社会生活を営むなら躊躇することなく周囲の助けを借りる必要があります。だからこその人なつっこさ、甘えたがりなんでしょう。
 ひかりは・・・まだちょっとわかりません。彼女のヴァンパイアは家族の理解と学校の最低限のフォローさえあれば、問題なく健常者と同様の生活を営むことができそうです。彼女がヴァンパイアを受け入れていられるのは、町のように亜人としての性質に起因するものではなくて、単に彼女が培ってきた気質、あるいは置かれた環境によるものだと思うのですが・・・。はてさて。
 ちなみに佐藤先生は受け入れられているとは言いがたい状態だと思います。亜人としてのハンディキャップと個人としての劣等感が未分化です。サキュバスの性質が性質なだけに仕方ないのですが。とはいえ大人として相応に折り合いをつけて生活できているところは尊敬すべき点ですね。

 アジサイ花言葉は「移り気」。ちょっぴりネガティブな花言葉ですが、この由来は花の色が土のpHに合わせて変化することから来ています。つまり、今の状況が辛く悲しくてもいつかあなたの置かれた状況は変わり、楽しく安らかな日に変わるかもしれないということです。だからなのか、アジサイには「辛抱強い」という花言葉も託されています。
 ちなみに包んでいる新聞紙の1枚目はアニメスタッフさんお手製、チラッと見えている2枚目は本物の新聞のスキャンのようですね。前者は適当なテキストをコピペしたのか、ところどころ不思議なふりがなの処理をしていますし、後者は「ロンブー淳」だの「報道ステーション」だのといった文字が確認できます。

 「私も協力させていただけませんでしょうか!」 佐藤先生の人づきあいベタっぷりがよくわかる1コマ。普段から人と話すのに慣れていないと、特に距離感のつかみ方がポンコツになるんですよね。ええ、私のことです。

 「事情。家庭的なこととか?」「というより亜人の性質に由来するような気がするんです」 冒頭で日下部さんの慟哭を聞いたときもハッとしていましたね。鉄男はこれまでマイノリティであることが人間の心に及ぼす影響を考えてきませんでした。
 学者根性なんですかね? ヴァンパイアやデュラハンの性質が及ぼす影響については思い至っても、マイノリティであること自体については今の今までからっきし。亜人であることを公言した上であからさまに余裕のない態度の佐藤先生に臆面なく声をかけていた、あのデリカシーのなさはここに起因しているのでしょう。誰でも真っ先に考えつくことを、むしろ真っ先に候補からはずしてしまう。なぜなら彼にとって亜人は腫れ物ではなく関心事だから。
 それは裏を返せば亜人について偏見がないということでもあります。だからこそひかりたちとの間に信頼関係を築くことができました。彼女たちにとっては亜人であることより腫れ物扱いの方がずっと辛いものだったから。
 ですが、それ故に彼はマイノリティが抱えるナイーブな悩みにはどうしても気付いてあげられません。

 「彼女たちには陰口に逃げない心を持ってほしいです」 高校生にそれを求めるのは酷なことですとも。今や日本社会のモラトリアムは22歳まで延長しました。それが求められるほどに、認めてあげたくなるほどに、現代人の心の戦場は日進月歩で高度化しています。

 「言わない。いいたいことがあれば全部直接言う。言えなければ言わない」 高校生に求めるには酷なことに抗う少女がいました。年齢不相応というか奇跡的というか、いっそヒロイックですね。現実にはこんな子はそうそういないでしょう。勇気ある主張をしたうえで、相手の悪意に心折られずにいられる幸運な子は。
 物語はしばしば非現実的です。しばしば理想を描きます。だからこそ、現実において物語は意味を持つ。(盛大に脱線しはじめたので打ち切り)

 「ごめん。その、今の言い方は意地悪だった」 たとえ確信できる未来予測であっても、議論の場において他人の行動を勝手に規定するのは生産的ではありません。それは相手から自身のコントロール権を剥奪するようなものだからです。これによって反論する権利を奪うことはできますが、同時に自己改革の機会すらも奪ってしまいます。
 ひかりは相手を言い負かすためにここに来たわけではありません。日下部さんや自分がよりよく生きられる世界にするために、直接的には目の前のふたりを陰口を言わない子に変えるために、あるいは日下部さんに勇気を持ってもらうために、戦っています。

 雨上がり空は青いのに、どうやらひかりの傘の下だけ雨模様。ドラえもんのひみつ道具にこんなのありましたね。のび太くんが無人島に家出したとき持ち込んだ道具のひとつ。(この話と全く関係ないんですがなんとなく思いだしたもので)
 こんなとき大人として鉄男が果たすべき役目はひとつ。好き好んで土砂降りの傘の下に篭もっている女の子を、青空の下に引きずり出してやること。雨はやみました。

 ひまりの膝枕ヴァンパイアの妹がチョーカーしているとなるとどうしてもそういう想像をしてしまうのですが、まあそういうことなんでしょうね。両親からわだかまりを取り去るのはなかなか骨が折れそうです。
 それにしても向かい合う形で膝枕とか、ひかりさんなかなかハイレベル。

 「お前たちには互いに積極的に相談しあえるようになってほしいと思っている」 マイノリティの悩みにどうしようもなく鈍感な鉄男が出した答えがこれ、というわけですね。学者バカながら毎度良い先生です。

 ハグ大会ひかりも鉄男もそんなつもりでこんな流れにしたわけじゃないでしょうが、結果的に日下部さんにとっては良い流れでした。たぶんこの子は、それこそ「流れ」というきっかけというかささやかな強制力というか、そういうものがなければ最初の一歩を踏み出せないタイプでしょうから。ちなみにこの手のタイプは誘われるのを待っているくせに、嫌なときは案外はっきりノーと言うし、流れに乗るときはちゃんと自分で決めて流れに乗ってくるものです。メンドクサイ。

 おっぱい大きくても柔らかいだけでも充分凶悪だというのに、おっぱいってやつは温かくてニオイまでするからおそろしい。

 「教師って意外と早く帰っていいんですね」 そりゃ公務員ですから定時は5時あがりですよ。少なくとも書類上では法令に準拠しなきゃいけないのが公務員。ただメチャクチャ雑務があるから定時通りにはめったに帰れないだけで。

 「ひかりとは全然違うな」 家族の前で教え子を呼び捨てとか。もうこの一言だけでデュラハンにされても文句言えないんじゃないですかね、この天然タラシ。

 「実はお姉ちゃんを実験サンプルのように見てるんじゃ」 よかった。デュラハンにされる危機なんてなかった。

 「姉はヴァンパイアらしくない。普通の女子学生と変わらないじゃないか、と」 まるで本当は人間ではない別の種族であるかのような言い草ですね。聞くだけで腹立たしいですが、私も普段他人をそういう目で見ていないかというと自信なかったりします。
 総じて今話は、日下部さんの悲しみの根本といい、陰口と戦ったひかりといい、そしてこのひまりと鉄男の会話といい、一貫して自分と誰かを隔てる見えない壁を可視化する物語でした。

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