映画 プリキュアドリームスターズ だいたいののりとふんいき。

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いつも誰かの大切なものを守る。それがプリキュアなんだから!

元気と笑顔を! レッツ・ラ・まぜまぜ!

この記事は未視聴者向けとして、一応ネタバレに配慮しているつもりです。
他の記事はネタバレガンガン踏み込んでいるのでもし興味があればどうぞ。

映画館内の様子

 近所のジャスコの初日初回(8:30~)を観てきました。いつも行っているところです。
 席の埋まり具合は7割程度。昨年比で少し増えている印象。もちろんそのほとんどが親子連れです。
 毎年のことながら早朝なのに子どもたち元気だな・・・と思って見ていたのですが、よく考えてみればこの時間帯って普段からプリキュアやってる時間帯なんですもんね。もっというとニチアサ自体は毎週7:00から始まるわけで、8:30なんて子どもにとっては全然早朝なんかじゃない。ダメな大人の尺度で世の中を見ていてはいけませんね。というか私も起きてたわ。

 観客が子どもだらけなのでもちろんそれなりに騒がしいです。子どもたちはよく笑いますし、よく喋ります。そういうものです。トイレに行っていたのか、飽きちゃったのか、館内をウロウロ歩いている子も何人かいました。ですが大声で叫びだすような子はおらず、観劇に差し障るほどではありませんでした。むしろ上映中ずっとお母さんに話しかけている子たちの声が微笑ましかったくらい。
 そういう雰囲気なので、よっぽど幼い子以外は連れて行ってあげても大丈夫でしょう。後述しますが、今回の映画は恐いシーンなどのないストレスフリーなつくりなので、子ども向けアニメの中でも比較的敷居は低い方だと思います。
 子どもたちに気兼ねする、あるいは静かな環境で映画を楽しみたいオッサンオバサンファンは夕方などの遅めの時間帯、あるいは平日に行くのが吉でしょう。経験上、朝より夕方の方が子どもが少ないっぽいです。

 ミラクルライトについては今年はかなり振りにくかった様子です。色々と工夫は盛り込まれているのですが、いかんせん劇中でミラクルライトを持っているキャラクターがひとりしかいないため、子どもたちが同調しにくいというか釣られにくいというか。
 このあたり、制作者側も重々理解している雰囲気はあるのですが、それでもあえて「自由に、好きなタイミングで」振ってもらうことを大切にしているように感じました。今回の映画のテーマにもいくらか係ってきますしね。
 みんな揃って一斉にミラクルライトを振る光景は大人からするとキレイな光景らしいのですが(私自身はまだ遭遇したことがない)、子どもたちがライトを振るのはそういう劇場アートに賛歌するためではなく、あくまでプリキュアを応援するためであるはずなんです。
 まあ一度くらいは見てみたいんですけどね、本音を言うと。

作画について

 まーた新しいことをはじめましたよ、東映さん。今回2Dアニメと3Dアニメが混在する絵づくりに挑戦していたわけですが、なんというかもう、びっくりするほど映像の切り替わりが自然です。前情報なしで観たらひょっとすると気付かない人もいるかもしれませんね。
 もともとマネキンっぽさを感じさせないことで有名なプリキュアの3Dモデリングですが、今回はそれに加え、2Dアニメ側の画風を3Dモデリングに近づけることで調和させています。
 具体的には輪郭線の太さと動作のウソの少なさ。日本のアニメはマンガの作画ノウハウをベースに発展してきたので、迫力を出したり現実よりリアルに見せかけたりするために、サイズ感の誇張や意図的な崩し絵などを積極的に用いてきました。ただしそれはカメラ位置を定めてから全体の絵面を描き上げる2Dだからできたことで、3Dモデルが先にあってカメラ位置を後で決める3Dアニメにはそのままでは適用できなかったんですよね。東映がこの2Dならではの作画技術を本格的に3Dに落とし込めるようになったのはほんの2年前、『プリキュアとレフィのワンダーランド』からでした。
 今回は東映が3Dアニメを2Dアニメに寄せるためにしてきた施策の、その逆を2Dアニメ側に取り入れたわけですね。おかげで2Dと3Dの垣根は相当に低くなっています。こんなに2Dっぽい3Dアニメはありませんし、こんなに3Dっぽい2Dアニメもないと思います。

 唯一惜しむべきところはその成果を強調しすぎているところでしょうか。
 水の表現や大人数の同時行動など、3Dだからこそできる描写をたっぷり詰め込んでいるせいで、せっかく2Dに寄せている3Dアニメなのに、肝心のカメラワークやアクションの付け方が3Dアニメのパターンそのままになってしまっています。
 2Dアニメの方はその逆で、2Dアニメの文法そのままで極力ウソをつかないようにしてしまっているため、絵面がやや地味目になってしまっています。
 今回せっかくプリキュアの人数を減らしたのに、実は意外と主要メンバー以外が目立っていません。ひとりあたりのセリフ数やアクション数が劇的に改善しているにも関わらずこういう印象になってしまうのは、おそらくこのあたりに原因があると思います。
 とはいえこんなの単に工数やら脚本やらとのバランス取りの問題でしょうから、次回作ではきれいに解決してステップアップしてくるでしょう。

脚本について

 今作の脚本は魔法つかいプリキュア!からシリーズに参加している坪田文さん。モフデレラ回やまゆみの初恋回など、名作を多く生み出しています。キラキラプリキュアアラモードではキュアマカロン初変身回を手がけていますね。私の印象では視聴者心理のコントロールとセリフ回しのメリハリに秀でた作家さんだと思っています。
 今回の映画でもその力量は遺憾なく発揮されていて、例えばとある伏せられた真実に観客が気付くタイミングで登場人物にきっちりリアクションをとらせたり、例えば要所要所の重要シーンで心に残るストロングなセリフを語らせたりしています。観客が映画を観て思うことひとつひとつをしっかりイメージして、先回りしてくれているということですね。
 だからこそなのでしょう。今作は全編にわたってこまごまとたくさんのギャグが挿入されているのですが、子どもたちはどのギャグにも鋭敏に反応して、よく笑っていました。

 鴉天狗のキャラクターデザインもステキですね。最近のディズニーアニメの悪役の要素をふんだんに取り入れていて、「コミカル」と「悪役然とした悪役」という矛盾しがちなふたつの要素を両立させています。ハリウッドはこういうキャラクター造形に関して抜群のバランス感覚を持っているので、こういうところについては積極的に吸収していくべきでしょうね。
 悪役が恐くないことは大切です。なにせ劇場内で泣いてしまったらそれ以上映画を観ることができません。お母さんに抱えられて途中退場するハメになってしまいます。けれど悪役が悪役らしくないのもそれはそれで問題です。物語の目的が直感的にわかりにくく、彼と戦う理由を説明するのに長大な尺を消費することになってしまいます。語るべき物語は他にもいっぱいあるというのに。
 その点鴉天狗はいいですね。彼の言動はことごとく外道と呼ぶにふさわしいものですが、見た目も仕草も恐くありません。震えず、恐れず、プリキュアの活躍を見守っていられます。

 サクラというゲストキャラクターもいい感じです。今作では観客たる子どもたちと年齢が近いサクラが、彼らの感情移入先として実質的な主人公役を務めます。
 今作のプリキュアは古式ゆかしいお助けヒーローです。昨年のキュアミラクルとキュアマジカルとは異なり、どのプリキュアも心情的に弱い部分を見せません。そのうえ事件の中心にいるのもあくまでサクラで、プリキュアはあくまで第三者として協力する立場に設定されています。
 そんな強くて優しいヒーロー・プリキュアを、観客はサクラと一緒に見上げることになります。
 こう考えるとき、サクラのキャラクターはものすごくよくできているんですよね。無力で助けを必要とする存在だけれど、卑屈ではない。天真爛漫で、プリキュアのお姉さんたちと一緒にいるととても楽しそう。プリキュアをよく応援し、ときにはお手伝いして敵をやっつけもする。不思議な子だけれど、その背景設定は物語に特に関係がない。彼女はただ等身大の女の子としてふるまい、等身大の女の子として等身大の成長を果たす。
 この映画を観に来た子どもたちの「もしプリキュアのお姉さんたちと一緒に遊べたら」を理想的に体現しています。この子の視点でプリキュアを追いかけたくなります。

 そしてサクラが子どもたちの視点だとしたら、もうひとりのゲストキャラクター・シズクはその友達兼お母さんです。実質的にはどちらかというとお母さん成分が色濃いでしょうか。
 一般に、子どもにとって一番大切な存在は、きっとお母さんです。サクラはそんなお母さんみたいに大切なシズクを奪われました。わかりやすい。そりゃあ何が何でも鴉天狗と戦わなければいけませんとも。そりゃあプリキュアのようなヒーローの助けが必要になりますとも。この映画の物語はシズクというキャラクターが存在するだけで動機から結末までこの上なく単純化し、そしてこの上ない説得力を生みだしています。
 鴉天狗がサクラやシズクを狙った理由をゴチャゴチャと仄めかしはしますが、うっさい! いいからシズクを返せ! お母さんを返して! そういう、子どもたちにとって他人事ではないシンプルな論理に塗り替えてしまいます。

 実のところ、今作の脚本は色々とノイズの多い、煮詰めきれていない部分が端々に見て取れる仕上がりです。けれどサクラとシズクという、子どもたちの視点を強烈に誘導するゲストキャラクターの存在によって、それらいくつかの難点をまるで問題としないスッキリした動線ができあがっています。
 面白い映画ですよ。きっと、子どもたちにとってはなおさら。もしお母さんがいなくなったとしたら、自分には何ができるだろうか。ヒーローはどこまで手伝ってくれるだろうか。自分は何もしなくてもいいんだろうか。きっと、サクラの物語はあなたにとって他人事ではなくなります。ぜひ一度足を運んでみてください。私はあと二度三度観に行きます。

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