キラキラプリキュアアラモード第31話感想 笑顔の魔法はあなたのために。

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私が笑顔でいればみんなも笑ってくれる。みんなが笑ってくれると私も笑顔になるんだ。

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(主観的)あらすじ

 突然の嬉しい知らせ。いちかのお母さんが1年半ぶりに帰ってきました。ずっと会いたくて、ずっと待っていたはずなのに、けれど何故だかいちかはなにかを我慢している様子。不自然なくらいにいつもどおりニコニコしています。
 いちかはお母さんのためにケーキをつくります。いつもは上手に焼けるはずのショートケーキ。なのに今日に限って失敗ばかり。お母さんと一緒にいられる時間はほんのわずかだけなのに。
 辛い気持ちを我慢して、いちかはお母さんのためにつとめて笑顔をつくります。それはお母さんが教えてくれた大切なことだから。いちかの笑顔はみんなを笑顔にしてくれる。その教えを守りつづけていたことをお母さんは褒めて、そして悲しんでくれました。
 我慢することをやめたいちかは涙の後にとびきりの笑顔。その心からの笑顔は、お母さんを、みんなを、それからいちか自身を笑顔にしてくれます。

 いちかのがんばり屋なところは以前から気になっていました。本人が望んでやっていることとはいえ、明らかに子どものキャパシティを越えたストレスを一身に引き受けていましたから。ジュリオ編が始まったときはてっきりキラキラパティスリーの忙しさにバテる話として描かれるのかと思っていたのですが、今回こうして、想像していた以上にステキな物語として描かれることになりました。
 ・・・てゆーか卑怯だろ! これ子どもじゃなくて親世代狙い撃ちの脚本&演出じゃん! 直撃くらったんですけど! (親じゃないくせに) そんなにキラキラルクリーマー(税込7776円)を買わせたいのか、おのれバンダイ!

笑顔の理由

 「どうしたの、そんなにメソメソして。お姉さんに欲しいケーキを伝えてちょうだい」
 いちかはいつも笑顔の優しい子です。今日も緊張してうまく注文できない小さなお客さんの気持ちを察して、にっこり助け船を出してくれます。いちかの笑顔はいつもみんなを笑顔にしてくれます。

 「いちか。いつも笑顔でいなさい。いちかが泣いたらね、パパもママも友達も、みんな悲しくなるの。いちかが笑ったらみんなも楽しくなるわ。だから、いつも笑顔でいなさい」
 それはお母さんが教えてくれた秘密の魔法でした。私が泣いたらみんなも悲しい。私が笑えばみんなも楽しい。まるで関連性が無いような、道理を超えた、ほんのちょっとしたことで目の前の世界が良くも悪くも変わっていく。
 魔法は絵本やテレビの中だけの絵空事なんかじゃありません。私たちが生きるこの現実にも、そんな奇跡みたいな不思議なパワーは確かに存在しています。いちかは、いいえ、子どもたちはみんな、この世界に祝福されています。
 お母さんはそんな世界の秘密を教えてくれました。だから、今のいちかは笑顔の魔法つかいです。
 キラキラキラルン・キラキラル! みんな笑顔になあれ!

 そんないちかの元に突然嬉しい知らせが舞い込みます。
 「お、お、お、お・・・お母さん!?」
 お母さん。ずっとずっと待ち焦がれてきた、ずっとずっと我慢してきた、いちかの一番の「大好き」。本当は涙が出るくらい嬉しいはずなのに、いちかはその気持ちをぐっとこらえて、つとめて笑顔をつくります。
 だって今のいちかは笑顔の魔法つかい。自分勝手に泣いてばかりだったあの頃とは違うんです。この1年半でいちかは大きく成長しました。いちかは知っています。ここで泣いたらせっかく来てくれたお母さんを悲しませてしまう。心配させてしまう。だから笑うんだ。笑って、笑って、――どうか、大好きなお母さんがずっと笑顔でいてくれますように。

 「明日の昼までしかいられないの」
 「じゃ、じゃあ、お店終わったら・・・」

 笑え。
 「もしもし。ああ、妻がお世話になっています。――仕事先からだ」
 「お母さん疲れてるでしょ? お風呂入れてきてあげるね!」

 笑え。
 「キラキラル少ないペコ」
 「ごめんね。ごめんね! お母さんに私のケーキごちそうしたかったんだけどさー!」

 笑え。
 お母さんのために、いちかはいつものように笑います。
 「いちかが泣いたらね、パパもママも友達も、みんな悲しくなるの。いちかが笑ったらみんなも楽しくなるわ。だから、いつも笑顔でいなさい」
 だからお願い、私よ、どうか笑って。

いつもどおり

 「行ってきて、お母さん! すごいね! これからはいろんな国の人の病気を治すんだね! 世界を股にかけるヒーローだ!」
 いちかと離ればなれになることを打ち明けた卒業式の日、お母さんは目に涙を湛えて「ありがとう」とだけ言いました。
 涙を見せまいとこちらに背中を向けておどけていたけれど、それでもいちかがどれだけのことを我慢してくれたか、お母さんには痛いほど伝わってきたからです。そのくせ今の自分にはいちかになにもしてやれないからです。
 いちかはまだほんの小学生なのに、どうしようもない気持ち全部を飲み込んで、精一杯明るく送り出そうとしてくれています。親として申し訳ない。けれど何もしてあげられない。だからせめて、優しいこの子の強がりに合わせて、謝罪ではなく感謝の言葉を。

 1年半に再会したいちかは、あのときよりもさらに成長していました。
 「へえ、ここがキラキラパティスリー。ステキね。いちかはどれつくったの?」
 「スイーツのデコレーションはいちかちゃんがやってるんです」
 「え、じゃあこれ全部? すごいじゃない!」

 親は無くとも子は育つ。いちかは年ごろに似つかわしくないくらい立派な子に成長してくれました。・・・そうなるよう強いてしまった原因が自分の不甲斐なさだと思うと、喜びと同時に苦いものもこみ上げてくるけれど。

 「町をブラつくだけでいいのか? 遊園地とか行っても」
 「それじゃお話しできないでしょ。いつもどおりがいいの」

 いちかは自分が何を求めているか正しく認識できています。これも中学生らしからぬ成長の証。
 それは嬉しいのだけれど・・・それでもお母さんはそんないちかに申し訳なく思います。だって、我が子の言う「いつもどおり」は、本当はちっとも「いつもどおり」じゃない。1年半ぶりの「いつもどおり」。遊園地のような子どもらしい楽しみよりも、そんな当たり前のものを、貴重にさせてしまった。
 「それじゃ、ケーキの材料を買って帰りましょう。昔はよくつくっていたでしょ?」
 だから、せめてその「いつもどおり」の範囲のなかで、いちかが一番喜ぶことをしてあげたい。1年半に及ぶ当たり前の時間を取り戻そうとするこの子の「いつもどおり」を幸せなものにしてあげたい。
 子どもには親からのたくさんの祝福が与えられるのが、それこそ当たり前のことですから。

 「もしもし。ああ、え、今夜ですか? 今夜はちょっと・・・」
 「急用か?」
 「いいえ。大丈夫よ」

 だから、いちか、あなたがこんなことに遠慮を覚える必要は無いんですよ。子どもが親に気を使う必要はないんですよ。
 お母さんはあなたが大好きだから、自分がそうしたいと強く思ったから、だからこそ仕事よりもあなたを優先したんです。
 だからお願い、そんな笑顔はつくらないで。

祝福と呪詛

 「いちか。いつも笑顔でいなさい。いちかが泣いたらね、パパもママも友達も、みんな悲しくなるの。いちかが笑ったらみんなも楽しくなるわ。だから、いつも笑顔でいなさい」
 笑顔の魔法は誰のためにあるんでしょう。いちかが笑えばみんなが楽しくなる。だったら、それはみんなのため? お母さんはいちか以外のみんなのために、いちかにその身を犠牲にしてほしいと願ったのでしょうか。
 そんなわけがありませんね。

 「がんばれいちか!」
 おかあさんのくれた魔法がいちかを追い詰めます。
 あの卒業式の日、お母さんは笑ってくれた。それはきっと私が笑顔だったからだ。だから、お母さんとのお別れがどれだけ辛くても、今は笑わなきゃ。
 つぶやくいちかに笑顔はなく。

 「ああ、これじゃまだまだふくらみ方が足りないよ・・・」
 「キラキラル少ないペコ」
 「理由はひとつキラ。いちかの気持ちの問題キラ」

 これまでキラキラルはスイーツにたくさんの「大好き」を込めることで生まれていました。けれどいちかがお母さんを「大好き」なのは疑うべくもなく、ならばどうしてキラキラルが生まれてこないのでしょうか。

 どんなに泣きたい気持ちになっても、どんなに辛いことがあっても、今日のいちかは必死に笑顔をつくりつづけます。お母さんのくれた笑顔の魔法が、今や彼女に歪んだ仮面を押しつける呪詛と化しています。
 笑顔とは、果たして自分の身を犠牲にするためにあるのでしょうか?
 いいえ。そんなわけがあるわけないじゃないですか。だってこれは、他でもないお母さんが教えてくれた魔法なんです。誰よりもあなたのことを大好きなお母さんが、あなたに教えてくれたことなんです。それがあなたを傷つけるものであるはずが無いじゃないですか。

 お母さんが教えてくれたことには続きがありました。
 「だって、だってさ。お母さんが教えてくれたんだよ。私が笑顔でいればみんなも笑ってくれる。みんなが笑ってくれると私も笑顔になるんだ」
 笑顔の魔法はあなた自身を笑顔にするための魔法。お父さんでも、お母さんでも、友達でも、他の誰でもない、あなたのためにある魔法なんです。
 「ありがとう、いちか。こんなに優しい子に育ってくれて。・・・ごめんね」
 「さびしかっただろうに。もっと甘えていいのに。ずっと笑顔でがんばって」

 笑顔の魔法は呪詛なんかじゃありません。これはあなたの幸せを願って伝えられた、あなたのためにある祝福です。

笑顔の魔法

 「私が笑顔でいればみんなも笑ってくれる。みんなが笑ってくれると私も笑顔になるんだ」
 これまでいちかの笑顔はたくさんの人を笑顔にしてきました。たくさんの「大好き」でみんなを幸せにしてきました。
 けれどそれは、あくまでいちかがそういうことを「大好き」だったからです。
 「スイーツでみんなが笑顔になったら楽しい」
 彼女がキラキラパティスリーをはじめた動機はそういう素朴なものでした。
 自分の楽しみのためにみんなを笑顔にするのがいつものいちかです。その意味では今話のいちかは、ちょっといちからしくありませんでしたね。

 「大好き」は循環します。
 スイーツをつくる人が込めた「大好き」は食べる人に伝わり、その心にある「大好き」を増幅します。そしてその「大好き」は今度は他の誰かにも伝えられて、巡り巡ってまたいつかつくる人のところに返ってきます。そうしたら、つくる人はまたスイーツにめいっぱいの「大好き」を込めて、また誰かに食べてもらうんです。
 スイーツをつくったり、他の何かで表現されたりする「大好き」は、だから摩耗しません。いつか必ず返ってくる無限のエネルギーだからです。
 今回いちかがつくったケーキは、そういうわけで失敗したんですね。
 自分を幸せにしようとしなかったから。「大好き」を返してもらおうと思わなかったから。
 今どき自己犠牲的なヒーローなんて流行りません。

 「なんだ、その笑顔は!」
 「勝利の笑顔よ! 私はみんなを笑顔にしたい。だから戦うの!」

 宇佐美いちかは自分とみんなの笑顔を守るために戦います。
 いつか彼女の憧れた「ヒーロー」が、笑顔とはそういうものだと教えてくれたから。

 いちかの笑顔は周りのみんなを笑顔にします。
 それは彼女自身が笑いたくて笑った、本当の笑顔だからです。

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