URAHARA 第1話感想 青臭い少女たちが愛する最後の砦

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―― 少女たちの秘密基地

右脳的ファーストインプレッションっ!

 私自身はファッションというものにてんで興味がないので多くは語れないのですが、人間が服を着る目的のひとつに“表現”があると聞きます。
 そもそも人間はとにかく“表現”というものが大好きなイキモノでして、呼吸を使って空気を震わすことを覚えればとりあえず歌い、脳に記憶を蓄積できればとりあえず語り、染料を手にしたらとりあえず描き、土をこねれば彫刻をはじめ、食べ物を混ぜては新たな美味を求め、ときに身体をくねらせて踊り、ときに神様を口実にセレモニーを演じ、ときに嘘っぱちのホラ話を物語り・・・手近にあるものなら何でも使って自由に“表現”を楽しんできました。
 衣食住の衣。衣服は人間にとってもっとも身近なもののひとつです。ならば人間が“表現”の題材としてコイツをイジリ倒さないわけがありませんね。

 特に原宿という街は機能性をガン無視した服飾文化の極北を行く――つまり、服を使って“表現”を全力で楽しむ人たちが集まる場所だと聞きます。
 私はファッションというものにはとことんウトいのですが、“表現”なら大好きです。ちょっぴり親近感が湧いてきました。

 ・・・なんてアタマワルイことをウダウダ書いてみましたが、まあぶっちゃけて言うとポップな絵柄に惹かれただけなんですけどね。
 この手の絵づくり(大胆な色使い / 写真取り込みテクスチャ / 止め絵多め)の源流は1960年代アメリカのポップアートにあると思うんですが、元はビビッドカラーだったのに、日本に渡ってパステルカラー主体にシフトチェンジしたのがいかにもKAWAII好みの日本人オタク流。大量消費時代のありのままの光景を精神的側面から切り取るはずだったポップアートに夢やら空想やらを混ぜ込んじゃうのもイッツアジャパン。ポップンポップ。換骨奪胎好きー。超好き―。

 それから脚本は高橋ナツコさん。ハイティーン向けアニメの脚本を多く手がけている方ですね。実は結構好きな作家さんなんですが、残念ながら歳食った私は思いっきりターゲット層から外れているので最近なかなか視聴する機会がない&心に響かないことが多いのが泣き所。歳取るってやーねー。でも毎回テーマ性はきっちり織り込んで書いてくれるのでやっぱり好き。
 この『URAHARA』も例外ではなく、ガッツリ思春期ならではの悩みを描いていくっぽくてなにより。宇宙人の侵略とかバトル要素とかはどうせ十中八九添え物ー。主役3人とも第1話から言葉の端々にメンドクサガールっぷり全開で、私、ついていけるか心配です。(いつものこと)

 まあ一言でいうなら『ポッピンQ』みたいなアニメってことですね。(脈絡なし)

キャラクター雑感

須藤りと

 主人公。PARK(バイト先のショップ)ではデザイナーを担当している様子。バトルでは近接担当。

 名前のとおりストリートファッションが好きな女の子です。服の趣味の割に意外と内向的なところがチャームポイントですね。ショップに来たシャチホコの人(スクーパーズ)に注目されてさりげなく目をそらすところカワイイ。

 PARKの友達2人には心を開いているようですが、微妙に壁を感じるのが気になるところ。どちらかというとネコと話しているときの方がよく素を出せているように見えます。
 といってもたぶん誰に対しても壁をつくっちゃって本当の自分を見せられないタイプなんでしょうけどね。この手の子の場合、“微妙な”壁で済んでいるだけだいぶマシな方です。だからこそ友達ふたりをものすごく大切にしているわけで。

 たぶん、本質的には孤独を愛するタイプなんだと思います。けれどそれではせっかくの理解者たる友達ふたりと仲よくできないので、多少演技をして社交性を補っている感じ。孤独は好きだけど友達も好き。二律背反。
 それなりにフラストレーションの溜まりやすい難儀な生き方です。だからこそ彼女は独創的なデザインができるんでしょうね。フラストレーションは人間のクリエイティビティの燃料になる、もっとも根源的な衝動のひとつです。
 バトルで近接戦を担当するのも、敵をぶっ飛ばしてフラストレーションを発散したいという欲求の表れでしょうか。

 こういう子が主人公をやるということは、“本当の自分”とかそのへんの比重多めな物語になる感じですかね?
 ある程度演技を織り交ぜた方がかえって自分らしくいられる、という発想は大人特有のものですからね。高校生くらいだとこの手の生き方は自己嫌悪の材料にしかならなくて大変です。がんばれ青少年。

白子まり

 読モでアイドルの卵。しかもPARKではパターンから縫製までひとりでこなしているっぽい。多才です。バトルでは火力担当。

 好きなファッションはロリータ。いかにもって感じですね。アニメオタクがイメージする「ロリ」と違って、現実のロリータファッション好きは我が強い子が多いです。やっぱり着るのにちょっと勇気が必要ですからねー。「これが私らしさだ!」と胸を張れる性格じゃないと。

 そんなわけでやたらと承認欲求が強い子のようです。褒められるの大好き。読モとかアイドルとかのマルチな活動もたぶん承認欲求から来ているんだろうなあ。やたら演技がかったセリフまわしもまわりの目を気にする彼女ならでは。
 そして承認欲求を満たすための努力をちゃんとできる子でもあります。あのふわっふわなトークスキル、並大抵の場数経験じゃない。

 その一方で「ありえない」とか「無理」とか妙にネガティブな言葉がよく出てくるのもこの子の特徴。せっかく才能も努力も持っているんだからもっと胸を張ればいいのにね。
 たぶん、華やかな外面は虚勢なんでしょう。承認欲求が強いのはそのせい。自分を奮い立たせるための自信を自家生産できないから、他人から供給してもらおうってタイプ。
 バトルででっかいキャノンを持っているのはここら辺の性質に由来するものでしょうか。弱い自分をごまかして、ドカンと一発逆転、読モやアイドルとして喝采を集めちゃおうという良くも悪くも思いきりのいい性格。

 「魔法使いまりちゃん」が気にくわないのもそこから来ているんでしょうね。みんなに見せている華やかな姿が本当の自分じゃないと自覚しているから。自分で自分にシンデレラの魔法をかけているのがわかっているから。図星だから。
 私、夢とか空想とか全肯定する性質なので、この子とはたぶんウマが合わないだろうなあ。そういうのを肯定する彼女というのもそれはそれで魅力が半減しそうですし。この子には何があっても虚勢の皮を被って強い自分を演じつづけてもらいたいところ。ウソもつき続ければいつか本当になるといいますから。

綿紬ことこ

 黄色は無条件にあざとかわいいものです。プリキュアが教えてくれました。PARKではスイーツ担当。バトルでは指揮管制担当。

 プレッピーファッションが好きなんだそうです。黄色だもんね。ファッションの趣味どおり、いかにもアニメのお嬢様キャラって感じで人なつっこい子ですね。第1話が会話劇ばっかりだったこともあって、ひとりだけやたらちょこちょこ動き回っていました。カワイイ。

 とはいえこの子の人なつっこさにもどこか演技臭さを感じます。お前ホントはそこまで他人のこと好きじゃねーだろ的な。友達をヨイショしてる自分が好きなだけだろ的な。学校でいじめられてなきゃいいけど。

 クレバーなところをよくアピールしていますが、人なつっこさよりむしろこちらが彼女の本質なんだと思います。
 がんばって友達を褒めてやれば自分を必要としてもらえる。がんばって友達に好き好き言っていれば向こうからも好きって言ってもらえる。この子の立ち回りにはそういう真の意味でのあざとさを感じます。
 悪いことだとは全然思いませんけどね。私はむしろこういう子好きです。たとえ裏に自分を良く見せようとする計算高さがあろうと、みんなと仲よくなろう、みんなにいい気分になってもらおうという親切心は実際そこにあるんですから。

モラトリアム最後の砦

 「ねえ、PARKに戻らない? あのお店は原宿の若者文化だっていう大人もいるけど、PARKは私たちの居場所だから」
 宇宙人襲来のしっちゃかめっちゃかのなか、りとたちは避難ではなく自分たちの居場所に帰ることを選びます。
 そこは彼女たちが彼女たちらしくいられる数少ない場所だから。

 自分らしく生きられない人生にいったい何の意味があるでしょうか。
 死ぬことと自分らしくなくなることにいったいどんな違いがあるでしょうか。

 人間は表現を愛する生き物です。
 人間の歴史はいつも表現とともにありました。
 もし表現するためのあらゆる手段を取りあげられたなら、果たしてそのとき人間は人間でいられるでしょうか。

 りとたちはそういう人間としての本質を直観的に見定め、自分たちを真の意味で生存させてくれる最後の砦に帰ることを選びました。

 自分らしさとは何なのか。表現とは何なのか。
 そういった小難しい哲学めいたことはまだわからないけれど。
 見つめ直すうちに、思っていたのと違う自分らしさが見つかることもあるでしょう。
 何が楽しくて表現していたのかわからなくなる日もあるでしょう。
 それから、自分にとっての友達の意義がひっくり返る日もあるでしょう。
 けれどそれらは、これからを幸せに生きるために誰もが一度は考えなければいけない課題です。

 PARKは期間限定のショップです。
 りとたちもいつか高校生じゃなくなります。

 ここはモラトリアム最後の砦。どんなに居心地がよくてもいつか巣立たなければいけない、小さな小さなゆりかごです。
 ここにいることを許されているうちに少女たちは答えを見つけなければいけません。

 青臭い、思春期の物語が始まります。

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