ひそねとまそたん 第5話感想 疑義を申し立てます。

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私は――あんたたちOTFの飼育員とは違う。F-2のパイロットなんだ。

(主観的)あらすじ

 飛行訓練は休止され、Dパイ間の空気は最悪で、ひそねは散々な居心地の悪さを感じていました。安息の地はもはやまそたんの傍のみ。ところが悪いことは重なるもので、次の特別訓練の成績次第ではDパイを解任されることもありうるとのこと。
 その特別訓練とは、DパイとOTFだけで無人島サバイバル生活をするというものでした。とりあえず水と食糧を確保しなければならないのですが、Dパイたちは相変わらずの協調性ゼロ。仕方ないのでひそねはひとりであれこれ動き回るのですが、冷静に考えて自分も大したことはできていない気がします。
 それでもなんだかんだいって各々ポツポツと成果は上げていて、持ち寄るととりあえずの自給体制は確保できていました。なんかまそたんたちも楽しそうだし、ひそねは今しばらくこの生活を続けてみてもいいかなと思いはじめます。唯一、星野と彼女のOTFだけは未だ輪に加わってくれないのだけれど・・・。

 今回はちょっと考察寄りの記事になります。どうにも星野のことが気になるのか、ひそね側の動きがあまり頭に入ってこないもので。私、ああいうキツい人って基本苦手なはずなんですけどね。高身長貧乳と羞恥のフェチとしてはツボなのですが・・・惜しい! 私はショートよりミドルかシニヨン派だ。ついでにいえば外見より性格(メンドクサイ系)重視だ。
 ところであの無人島は大昔にOTFを棲まわせていた隠し砦みたいなものなのでしょうか。千本鳥居の先にあったものが目隠しの岩肌と天然の淡水プールで、まるで8格みたいな設備になっていましたけど。ちなみに千本鳥居とは現世から神様の世界へ願い事を渡すためにつくられるものです。

白い恋人

 「つまり“白い恋人”とは、心に白を、空白を持つ少女のこと」
 「適性テストでしたかな。“自分を好きになれない”、“不完全だと思っている”」
 「ええ。OTFの隣にいることではじめて自分のアイデンティティを見出せる。そんな少女であればこそ、OTFは自らと一体になることを許すのです」

 ああ、そういえばひそねも当初はもっと自己不信っ気が強い子でしたね。最近Dパイとしての過剰な自己効力感によって自信に満ち満ちていますが。
 そもそもこの物語は「自分にしかできない何か」を探すことからはじまったんでしたっけ。

 でも、飯干事務次官の言うことは実際のところどこまでが真実なんでしょうね。
 「考えてもごらんなさい。OTFはパイロットという異物を自らの体内に招き入れ、身体の自由を相手に委ねるのです。これ以上はない屈辱ですよ」
 特にこの部分はどうかなと思うのですよ。それは果たして本当に屈辱的なことだろうか。まそたんはひそねをイヤイヤ(あるいはビジネスライクに)飲み込んでいるのだろうか。
 そりゃ自分の身に置き換えてみたら、他人に好き勝手されるのなんてイヤですよ。ですが、それがもし信頼できるパートナーだったらどうだろうともまた思うのですよ。見たところ搭乗中もまそたんたちにはある程度のコントロール権が確保されているようですし。そんなの、自分の立ち会いのもとでサポート担当者にリモートデスクトップ操作をさせているのとすら大して変わらない気もする。

 まして、初めにDパイを選ぶ権利を持つのはOTF側です。ひそねがDパイになれたのはまそたんに選んでもらえたからです。もちろんそのあとでひそねの方からもまそたんをパートナーとして認知しましたが。
 「でもね、そんな私をフトモモが選んでくれて、すごく嬉しくって」
 「私も、同じです。アケミと離れるのはイヤです」

 どうやら日登美と絹番も似たような経緯だった模様。

 「――だからこそ、OTFはパイロットに求めるのです。身体の自由を手放す代わりに、精神の自由を差し出せと」
 この部分に至っては少なくとも現時点では意味不明。
 そもそもDパイがOTFに乗って飛行するのは、自力で体温調節できないOTFのために内部熱を発散させてやるのが目的です。たしかにその結果としてアイデンティティを獲得してはいますが、それは副次的な利益のはず。誰かの役に立てるという実感があるからこそから「自分にしかできない何か」たりえるのです。その前提がなくては自己承認欲求を充足させることなんてできません。
 軍組織には何か裏の目的があるようですし、もしかしたら人間とOTFとの間に古の盟約とかそういうのもあるのかもしれません。ですが、少なくともひそねたちDパイ自身はそんなこと知らされていないし、そんな大それた取引をしたいと思える動機も存在しないはずです。

空白の充填

 「白い恋人である彼女たちの感情は、いかなるものであってもOTFによって温められ、孵化しなければならない」
 「これぞ瑞祥。白い恋人たちは絆を深めた。それもOTFの存在によって」

 要するにOTFにとことんまで依存させ、それに依る自己肯定感を軛とする(=精神の自由を差し出す)ことを期待しているのでしょうが、さてこちらはどうなることやら。

 とはいえたしかに今のところうまくいってはいます。
 「ねえ、これムリに帰投しなくてもいいんじゃないかな。思いっきり遊んで、お腹が減ったら、そろそろ帰ってもいいよって、飛んでくれるかなあって」
 ひそねたちはまそたんたちを慈しむあまり、自らが思考することを放棄してしまっています。自分嫌い同士が集まったせいもあって集団としての指針がろくでもない方向に進んでしまい、全てを自分のパートナーに丸投げしようとしています。それでなんとかしてもらえると無邪気に信じてしまっています。
 別にまそたんたちの機嫌が原因で飛んでもらえないのだとは限らないのに。万が一その前提が外れていたら、二度とまそたんたちと会えなくなってしまうかもしれないというのに。天命を待つにしても人事を尽くしたあとであるべきです。
 なーんかイヤな楽観がひそねたちを支配してしまっています。

 さて、星野はこのイヤな空気に風穴を開けるのか、それとも迎合してしまうのか。
 ・・・今のところ後者かなー。あの子脆いし。後述しますが、あの子はあの子なりにOTFとの絆を紡いでいますし。
 はてさて、どうなることやら。

 ちなみにフォレストはまそたんへの依存から立ち直りましたよ。今では剛毅な肝っ玉マダムです。
 それでいて今もまそたんのことを気にかけていますし、まそたんの方も彼女のことが大好きなようです。飲み込んではくれないくせに、不思議なことに。
 そりゃね、他者からの承認を前提とした自己肯定感は前提の崩壊に対して脆弱で、その脆さを日々痛感するがゆえに安易な依存にもつながるものですけどね。そこで得た心の強さっていうのは、それでも一生モノなんです。いつかどこかで別の基盤によるアイデンティティの再獲得が行われさえすれば、当時学んだ心の強さはちゃんと生きてきますし、それなりに意義のある想い出として消化できるモノだと思うんですよね。いくら誰かに縋っていたって、自分の成長自体はあくまで自分のモノのはずなんです。
 心の空白を委ねる束縛って、そんなに絶対的なものですかね?

 「いやあ、我々も当惑していましてね。星野空曹長が配属されてからというもの、築城のOTFはずっとFを維持したまま、原因もわからずじまいで」
 「前任者はHを保持できていたと?」
 「とはいえフライトは可能ですから。換えのパイロットもいませんしね」

 そんなわからないものですかね? (と、豪語しておいてハズしたら赤っ恥ですけど / まあ今までもいくつかのアニメで赤っ恥は掻き捨ててきましたし、今さら)
 彼はただ、星野のことをバカみたいに好きなだけなんだと思うのですけども。

 「私は――あんたたちOTFの飼育員とは違う。F-2のパイロットなんだ」
 だって、彼女はそういうことを願う人だから。
 「歩み寄りなんて耳ざわりのいいことを言って、誰かにマウンティングされるのなんてゴメンだ」
 だって、彼女はそういう非生産的なまでに誇り高い人だから。
 「認めていないのはあっちだ! ここぞというときに恥をかかせ――」
 だって、この不器用な恋人はこれでも自分の方からは多少の信頼を置いているつもりで。
 普段のパートナーは一応認めてくれているつもりで。
 そのくせ要求水準だけはいつまでもムヤミに高くて。

 星野がF-2乗りになりたいと思っているから、彼はF-2として振る舞おうとしてくれているんじゃないですかね。
 彼女のためだけに。
 大切なパートナーの願いを叶えてやるためだけに。
 待機中すらも、おそらくは頼まれもしていないうちに、自ら望んで身体の自由を差し出そうとしている。

 彼の態度がそんなふうに見えてならないからですよ。
 飯干事務次官の言うような、机上の論理だけで読み解かれるDパイとOTFとの冷たい関係性に、どうにも胡散臭さを感じてしまうのは。
 彼らは、彼女たちは、もっと信頼とか、愛情とか、そういう陳腐なおとぎ話で使い古されたような暖かいものでお互いを結んでいるんじゃないかと。私にはどうしてもそう思えてならないのです。

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