メルクストーリア 第1話感想 やさしいファンタジーはいかがですか?

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私、あなたに会えてよかったのですよ。

 先週今週だいぶ忙しくてカフェインに脳が冒されていたりしていつも以上に文章とろとろしていますが、すまんな。

(主観的)あらすじ

 辺境の村で育った癒術士の少年・ユウは今まさに旅立とうとしていました。瓶詰めの小さな女の子・メルクとともに。
 ・・・というか主にメルクの都合でした。彼女は幼いころユウの父親がお土産として持ち帰った不思議な液体から現れたのですが、それ以前の記憶がなく、自分の過去を知りたいと思っていたのでした。その父親も消息が途絶えてずいぶん経ちます。
 そんなわけで、ユウは半ばメルクに引きずられるようにして旅に出ることになったのでした。

 ユウたちが王都の旅具屋で旅支度をしていると、突如おまんじゅうみたいなもちもちのモンスターが現れて、ユウが買おうとしていた“モンスターよけの匂い袋”を持ち去ってしまいました。放っておいたらあの子が衰弱してしまいます。モンスターが苦手なユウにとっては匂い袋なしでの旅は死活問題でもありました。ふたりは慌ててモンスターを追いかけます。
 街近くの森で見つけたそのモンスターは、エニグマという大きくて凶暴そうなモンスターと対峙していました。人里近くのモンスターは通常、癒術士によって心を癒やされ、人間と共存しているものなのですが、彼は運悪く癒やされそびれていたようです。
 もちもちモンスターは街を襲おうとする彼を止めるために匂い袋を欲していたようでした。仲間が人間と敵対してしまうことは、モンスターにとっても悲しいことでした。
 ここは癒術の使い手であるユウの出番。メルクの援護を受けながら、勇気をふりしぼってエニグマと向き合い、みごと彼の心を癒やすことに成功するのでした。

 森のモンスターを癒やしたことを旅具屋の店主から感謝され、心癒やされたそのエニグマからも門出を祝福されて、ユウとメルクは旅立ちます。懐いたのか先ほどのもちもちモンスター・トトもいっしょです。
 どこかへ誰かと出会いに行く冒険の日々がはじまりました。

 小さな女の子(手のひらサイズ)は好きですか? 私は大好きです。
 ほのぼのファンタジーは好きですか? 私は大好きです。
 私と同じフェチズムのかたは是非ともいっしょにこのアニメを観ましょう。割とありふれている設定のようで、何気に貴重なんですよね。特にこういう子がヒロイン格の作品となるとなかなかどうして。
 うん。それだけの理由でこのアニメを観ることにしました。メルクかわいい超かわいい。メルクがわちゃわちゃ飛びまわっているのを眺めているだけで30分よゆーです。意外と作画も脚本もしっかりしているようで僥倖僥倖。

 夜麻みゆきや藤野もやむが活躍していたころのガンガン系マンガは好きですか? 私は大好きです。
 ザールブルグやグラムナート時代のアトリエシリーズは好きですか? 私は大好きです。
 年齢がバレますね。
 ・・・いやまあ、この方々は今も現役なんですけどね。あのころの作風があまりにも好きすぎた。
 私と同じ趣味のかたは是非ともいっしょにこのアニメを観ましょう。第1話を観た感じ、ああいうノリです。きらら系のゆるふわともまた違う、童話みたいなほのぼのとした優しい作風のようです。たぶん。

 何を置いてもまず赤尾でこさんの脚本がとにかく秀逸でした。街中をぷらぷらしながら最低限ほしかった知識だけスルッと流し込まれたこのソツのなさ、さすが!と惚れ惚れしたのですが、どうやらシリーズ構成には参加していないらしく、さて次話からはどうなるか。今話だけで必要な設定解説はざっくり消化し終わったぽいですし、イケるかな? このあたりのソツのなさはさすが赤尾でこさんですね。

 あとBGMがやたら良いです。ストリングス主体の牧歌的なサウンドに、ところどころピアノで涙腺を刺激しにかかってきます。アニメというよりゲーム系の音づくり。2000年前後の中堅どころのRPGぽいというか、それこそ昔のアトリエシリーズみたいな感じで。
 まあよくあるっちゃよくあるんですが、良いものはやはり良い。

 まあね。個人の感想ブログを読みに来る人なんてたいがい視聴済みなはずなので、ここでオススメしてもあんまり意味はないんですけどね。

 良かったよね!!!!!(それならそれで共感のゴリ押し)

あなたがいてくれてよかった

 「成りゆきだとしても、お前さんがひとつの争いを未然に防いだことは確かさ。癒術士がいなけりゃモンスターとは戦うしか道がねえんだからな」
 ユウは旅具屋の店主に感謝されました。

 ぶっちゃけ謙遜ではなく本当に成りゆきでした。
 ユウは基本的にやる気に欠ける少年です。
 旅に出ることになったきっかけはメルクの都合でした。もちもちモンスターを追いかけたのもメルクでした。エニグマを止めようとしていたのはもちもちモンスターでした。エニグマに癒術を使ったのは自分が追い詰められてどうしようもなくなったからでした。
 今回、ユウが自分の意志で主体的に何かを決めたことはひとつもありません。
 元々ユウだって父親が帰って来なくて困っていたのに。匂い袋を取られてショックだったのはユウなのに。エニグマに暴れられて困るのは人間の側なのに。あの場でエニグマをどうにかできたのはユウだけだったのに。

 本当に全部成りゆきでした。
 メルクがいなければ、もちもちモンスターと出会わなければ、あの森に入らなければ、きっとユウは何もしなかったことでしょう。
 「え、癒術ですか!? ――助かった! 早くフランベアを癒してあげてください!」
 「え、え、ええー!? ごめんなさーい!!」

 サーカスでの一件がダメだったように、よほどのきっかけでもないかぎりユウはなかなか行動できません。

 けれど、成りゆきがあって、エニグマの件ではユウは行動しました。
 結果としてユウのおかげでみんなが助かりました。
 「いや、でもあれは成りゆきで・・・」
 であるならば、その功績はやはりユウのものです。たとえあなたがどんなに無気力で、臆病で、自信のない人物だとしても。
 結果としてそれを成し遂げられたあなたはもっと自分を誇っていい。

 それはユウひとりではできなかったことかもしれないけれど、もしかしたらユウ以外の誰かならもっと上手にできたことかもしれないけれど、結果としてその場にはあなたにできることがあって、そしてその場に居合わせることができたのもあなただけでした。
 結果としてあなたはあなたにしかできないことを立派に成し遂げたんです。
 もし今日ここにあなたがいてくれなければみんな大変な目に遭うところでした。
 その偶然の巡り合わせまで含めて、人はあなたに感謝します。あなたがいてくれてよかった、と。

 誰しも自分より優れた人物なんていくらでも思いあたることでしょう。優れた人と比べたら自分がいかにも弱くて情けない人間のように感じられるかもしれません。
 けれど、それでもです。あなたがときに誰かから感謝されうるようなステキな人物であることに、別の誰かの存在なんて関係ありません。
 「モンスターの心を癒やせる癒術士の力はお前にもあるんだぞ」
 この世界には他にも癒術士がいるようですが、それはそれとしてユウだって立派に癒術士です。その事実をあなたはもっと誇っていい。

 ユウはまだ気付いていません。自分がいかにステキな人物であるのかを。
 「私はユウさんと出会う前の記憶が無いみたいなのです。だからいつか旅に出て自分の記憶を取り戻せたら、と思っていたのですよ」
 「わかってるよ。でも、占いとかじゃなくてもっとちゃんと準備してさ・・・」

 なんだかんだ言いつつも、ユウはメルクの旅の目的に付き合ってやる優しい子でした。
 「モンスターが匂い袋なんて咥えていたら、あの大福さんが大変なことになってしまうかもしれないのですよ!」
 「あっ」

 苦手としているモンスターのことまでも思いやれるくらいに心根から善性でした。

 「危なかった。あんまりひとりで突っ込んでいくなよ。瓶が割れたらどうなるかもわからないのに」
 ユウはまだ気付いていません。そんな優しい彼だからこそ、今回の“成りゆき”に巻き込まれたんだということに。
 「助けようとしてくれている、のか? ――あっ!」
 ユウはまだ気付いていません。そんな善性の彼だからこそ、今回の“成りゆき”から逃げずに自分の為すべきことと対峙できたことに。

 全部成りゆきでした。
 メルクがいて、もちもちモンスターと出会って、そういう成りゆきがあってこそユウは人に感謝されるようなことができたのでした。
 けれど今回の成りゆきをつないだのはユウが元々持っていた優しさあってこそで、今回の成りゆきが結果につながったのはユウの心根が元々善性だったからです。
 今回、ユウは何ひとつ自分の意志で主体的に決めたりしていませんでしたが、受動的になら、実は彼はいくつもの判断をしていました。
 全部成りゆきでしたが、その“成りゆき”には今日ここにユウが居合わせたことも含まれます。
 癒術士であり、メルクやもちもちモンスターたちの都合に付き合う優しさがあり、彼らを見捨てては逃げられない程度に善性でもある。そういう、ユウのような人間が今日ここに居合わせなければ、おそらくこの結果にはなりませんでした。

 その偶然の巡り合わせまで含めて、人はあなたに感謝します。あなたがいてくれてよかった、と。
 今日ここに居合わせてくれた人があなたでよかった、と。

 「すごく穏やかな表情に変わったのですよ。ユウさんが癒やしたのですよ」
 あなたが自分をどう評価しようと、事実としてあなたは誰かにとってステキな人です。
 あなたはあなたにしかできないことを立派に成し遂げました。

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