生徒役:電脳少女シロ、萌実、燦鳥ノム

モフモフの生きもの。めめめとかですか? めめめ入れておきましょうか。あの子、羊ですから。

↓未公開シーンが投稿されているYouTube公式チャンネル↓
↓レジュメがガチなことで知られる私立ガリベン大学↓
出演バーチャルYouTuber
電脳少女シロ
「よく“葉脈”なんて言葉が出てきたね、あなた」
「シロもさ、びっくりだよ。一番わかんないから最初に答えたら当たっちゃうんだもん」
千の黒歴史を持つ幼女。いや、別にアレなアレコレの過去を本人恥じているわけじゃないので“黒”歴史ではないのかもしれない。なんなら現在進行形で量産中かもしれない。ところでその節は例のポエムを吟じていただきありがとうございました。ぶっちゃけ私もいうほど“黒”歴史ではないタイプの人間です。
「いるだけで○○な子」という表現がこれほど似合わない人物もなかなかいないでしょう。いればだいたい何かしています。傍若無人に暴れてみたり、賢く機転の利くトークを繰りひろげてみたり、斜め上にカッ飛んだ名言を連発してみたり、他の共演者を気遣ったり、イジりたおしたり、あるいはゴキゲンにキュイキュイ笑っていたり。ちょくちょくワケワカンナイこともやりたがりますが、そういうときは「シロちゃんの動画は為になるなあ!」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、ああ見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。おかげでいつのまにか人脈の輪がずんどこ広がってきました。タチが悪いったらありゃしない。
萌実
「えっと、16歳の設定です」
「あんま自分で設定って言わないほうがいいです。こっちもそのへんの免疫はできてるから」
実はキズナアイよりも古くから活動してきたバーチャルYouTuber最古参の一角。今年4回目の16歳の誕生日を迎え、とても16歳とは思えないほど堪能なお酒への造詣を蓄えています。長いこと動画専門でやってきたため、実はこういうふうにリアルタイムで共演者とトークするようになったのは今年に入ってからのこと。エイレーンの被害者仲間であるエトラとコンビで四苦八苦しながら着実に経験を重ねています。
めったに名乗りませんが、フルネームは嫁ノ萌実。視聴者のことを旦那様と呼び、サイコに片足突っ込んだ勢いで事あるごとにウェディングベルを鳴らそうと企てます。それ以外は基本的にマジメな性格。インターネットの悪ノリ文化の申し子・エイレーンに正面切ってツッコミ入れられる貴重な人材でもあります。最近はエイレーンが悪ノリする暇もないくらい多忙なため、古女房じみたいたわりを見せることも増えました。
彼女を特徴付ける最大の個性はなんといっても極甘にメルティなハスキーボイスでしょう。「ヘッヘッヘッ」という独特の笑い声も愛らしい。一途に猛アタックを敢行する性格と相まって、声を聞いているだけで甘々な新婚生活を夢想させられます。恋敵はエイレーンくらいのものか。いいえ。冷静になって考えると世界中に50万人くらい「旦那様」がいます。
燦鳥ノム
「ノムちゃんもしお亡くなりになったら棺桶に一緒に入れてもらいたいものとかありますか?」
「私はお水をたくさん入れていただきたいです」
その圧倒的清楚力をカサに隙あらばぶん殴ってくる真の清楚。共演者がいるときは彼らをイジリたおすかたちで発露するのですが、そうじゃないときはスタッフに牙を剥きます。だんだんどこぞの電脳少女じみてきましたが、こちらはスタッフが頑として甘やかさないところが大きな違いでしょうか。
楚々とした佇まい。凜として朗らかな人柄。そして明け方の瑠璃鳥のような爽やかな歌声。まるで清楚という言葉が正しい意味で(!)具現化したかのようなキャラクターです。一方で茶目っ気も相当強く、一切打ち合わせしていないゲームのルール説明を同僚に丸投げしたり、お笑いタレントの持ちネタを強奪して本当にあちこちで披露してみせたりと、数々の武勇伝を持っています。
実は(※ 実はも何も衣装にロゴが入っていますが)大手飲料メーカー・サントリーの公式バーチャルYouTuberだったりします。クラフトボスや特茶などのキャンペーンキャラクターに起用されたり、デカビタCのweb CMに出演したりと、そちらの方面でもなかなかの活躍。気がつけば日本最大の広告賞であるACC TOKYO CREATIVITY AWARDSにおいて、ちゃっかりシルバー賞まで受賞していました。
授業構成おさらい(+ 補足事項)
超難問:パクチーの謎を解明せよ!
パクチーはセリ科のハーブの一種です。近年ではエスニック料理の食材としてすっかり定着していますが、流行りものに疎い人にとってはむしろコリアンダーという呼び名のほうが馴染み深いでしょう。世界中で古くから愛されてきたスパイスであり、日本国内でもカレーやベルギービールの香り付けとして身近に見かけることができます。
新鮮な葉から出る独特のカメムシ臭は人によって極端に好みが分かれ、「食の嗜好は遺伝するのか」という研究テーマの実験素材に用いられるほど。なお、その研究ではパクチーの好き嫌いは有意に遺伝するという結論になったようですが、別の研究では地域の食文化ごとにパクチーを忌避する人の割合が如実に違ってくるという結果も出ており、割とマユツバです。
ちなみに“ハーブ”と“スパイス”という言葉の使い分けは意外とややこしいのであんまり深く考えず慣習に従うのが吉。上記のとおり、パクチーに至ってはハーブ扱いのときもあればスパイス扱いのときもあるわけで。なんなら日本に至ってはどちらでもなく普通に香味野菜と見なされてすらいるわけで。
渡邉泰雄先生は横浜薬科大学の特任教授で、同校の総合健康メディカルセンター長も務めている人物です。普段の研究テーマはガチガチの薬理学。論文の表題からして門外漢には何の研究だか見当もつかないレベル。
その一方で、医食分野、つまり健康食品関連の研究に意欲的なかたでもあります。2010年にエノキタケからダイエットに有用な成分・エノキタケリノール酸を発見、その効率的な摂取方法としてエノキ茶を考案し、普及促進のためメディア出演も多くこなしています。
パクチーについては(一社)パクチーアカデミー協会なる組織を自ら主催し、毎年学術会議も開いています。成分や効能の研究だけでなく、生産者向けに認証制度を持っていたり、食文化としての広報も行っていたりと、まあ、つまるところその手の団体のようですね。
ちなみに私は実家が春夏秋冬問わずカメムシ1日3匹は部屋に侵入してくる環境だったので、トラウマレベルで食わず嫌いです。
トピック1:なんでパクチーは臭いの?
「なんでこれ臭わないんスか?」
「いや、それですね、いろんな畑で違うんです」
食べろと言われて嗅ぎにいく小峠教官はテレビ映えのプロ。
それはさておき、先生によるとパクチーの臭いは葉脈から出ているとのことです。なお、パクチーの根っこや種子はコリアンダーというスパイスとして利用されるのですが、こちらの芳香には葉っぱと違ってカメムシ臭がほとんど含まれません。
つまり、パクチーの臭い成分は葉っぱで合成されているのではなく、それでいて根っこなど別部位で合成されているわけでもなく、すなわち土壌に元々ある成分を吸い上げているということになります。だから畑が大事なんですね。
なお、具体的にどういう畑だとパクチーの臭いが違ってくるのかの話は今回の授業に出てきませんし、ネットにも情報が出ていないのでよくわかりません。パクチーアカデミー協会の学術会議でそういう研究が報告されているのかもしれませんね。
さて本題。
「パクチーはその匂いで触れたもの全てを虜にしようとしていて、ある意味マーキングをしようとしているんだと思いますね」
電脳少女シロの回答。
カメムシのニオイを出している時点で当然逆です。ところでカメムシのニオイでマーキングするとは恐ろしいこと考えるねおヌシ。アリンコもバッタもトンボも周辺一帯の生態系全部カメムシ味!
「虫さんに食べられないように『ボクは有害だぞー!』って香りを発しているのではないでしょうか」
「萌実も同じで、他を寄せつけない! ソーシャルディスタンス! な感じの意味合いかなって思ってます」
燦鳥ノム、萌実、正解。むしろそれ以外何があるんだと大喜利に悩むレベル。
キーワードは「リナロール」「デセナール」「ヘキセナール」「ノネナール」。順に行ってみましょう。
リナロールはスズランに多く含まれる芳香成分です。スズランといえば毒草やんけ!と、ツッコミが入りそうですが、リナロール自体は別に警戒を促すような香りではありません。他にラベンダーや、アールグレイ紅茶の香料であるベルガモットにも多く含まれています。
デセナールはカメムシの体液に含まれるニオイ成分です。ただし主要な成分というわけではないのでそこは勘違いしないでください。まあどっちにしろカメムシっぽいニオイはするんですが。
ヘキセナールもカメムシのニオイ成分です。こちらは本当に主要成分ですね。もちろんクサいです。
そして最後にノネナール。
「ノネナール知ってるぞ。ノネナールはねえ、シロのお爺ちゃんのニオイ」
よく覚えていましたね。ノネナール、正確には2-ノネナールは加齢臭の主要成分です。過去2回教壇に立っている関根先生の体臭の授業で出てきました。
「ノネナールはね、ハヤシライスを食べても加齢臭」
・・・第66話はそれこそ体臭とカレーの授業との抱き合わせだったんだよなあ。
「虫からは自分の身を守れたけどさ、人間からは守れなかったね」
まあ、こんな感じでパクチーは不快臭を放散することで捕食者から身を守っているわけですが、人間はそういう異臭や異味を乗り越えてクセのある食材として味わってしまうので、残念でしたという感じです。
聞くところによると人間に限らず雑食性の動物は食嗜好が多様化しやすいらしく、たとえばサルやカラスなんかも普通に考えたら不快だろうと思うような味のエサを好き好んで食べる個体がちょくちょく出てくるようですね。
ちなみにスパイスとしてのコリアンダー(乾燥させた種子など)には下3つの不快臭成分はあまり含まれていません。リナロール中心の爽やかで甘い香りです。コリアンダーとパクチーが同じ植物だからといって警戒する必要はないので、その点はご安心を。
トピック2-a:いつ頃からパクチーは食べられてる?
「人類の誕生とともに」
燦鳥ノムの回答は実はおおむね正解。
パクチーというか、コリアンダーは少なくとも紀元前1500年前には利用されていました。あくまでコリアンダーとしての利用がメインであって、葉っぱをムシャムシャ食べていたという記録は聞いたことがありませんが、少なくとも毒がないことは知られていたはずなので貧しい家なんかだと結構食べていたかもしれませんね。(想像)
「いや、さすがに人類が誕生してすぐパクチー食べようとは思わないから――」
どうでしょう? コリアンダーの語源は南京虫(カメムシの仲間)から来ているという説もあります。人間は古くからコリアンダーをスパイスとして利用してきたわけですが、コリアンダーを採取するからにはその草本がクサいということは当然認識していたはずです。それでも構わずコリアンダーを採取してきた。
・・・やっぱり人間は悪食なのでは?
「シロは明治時代以降かなって思ってて、日本鎖国してるよねって話は学んできたので、開国して外国の文化が入るのは明治より絶対後になるはず」
電脳少女シロのこの回答に関してははっきりと不正解です。
パクチー(コリアンダー)は世界中で古くから利用されてきたものなので、鎖国した程度で完全にせき止められるものではありません。日本にはそもそも鎖国が始まるはるか前の10世紀頃にポルトガルからスパイスとして入ってきて、コエンドロと呼ばれていました。また、鎖国中にも中国野菜の香菜(シャンツァイ)として流通があったようです。
トピック2-b:パクチーの変わった使い方は?
パクチーは紀元前1500年前から世界中で愛されてきました。特に古代エジプト文明は名産地として知られており、現地ではもちろん様々な利用がありました。その変わった使いかたとは何でしょうか?
「たぶん体によさそうだから、お肌にもいいと思うから、お肌にすり込んで美容法として使ってた」
萌実の回答。
実際、パクチー(コリアンダー)の精油を使ったフェイスパックが現代でも市販されています。少なくとも17世紀にはフランスで美容液にも利用されていたようです。
「古代エジプトって着飾ってるイメージがありますので、お化粧に使ったのではないでしょうか」
燦鳥ノムの回答。
精油があるということは、香水としての利用もあるということです。アダルティで刺激的なイメージを纏いたいときによく使われます。一部では媚薬としての効能を信じられていたこともあるみたいですね。
「除霊! 葉っぱ、ホワイトセージとかって、まとめて背中ぶっ叩いて除霊とか浄化に使うイメージがあって、そういうのに使えそう」
電脳少女シロの回答。
どっちかというと黒魔術によく使われていたようです。・・・ほら、媚薬なので。
キーワードは「デオドラント効果」。つまり防臭ですね。香り高いスパイスなのでこれもまた当然。
エジプトでは副葬品としてパクチーを棺に入れる習慣がありました。ツタンカーメン王のピラミッドからも出土されたといいます。
パクチーというか、本当はコリアンダーシードなんですけどね。番組中に出てきたイメージアニメーションは間違いです。渡邉先生、コリアンダーの歴史をパクチーと混同させて説明しているので番組スタッフが勘違いするのもしゃーない。クレオパトラが食べていたのも葉っぱではなく種のほうです。幸せの“スパイス”と呼ばれていたという逸話からこっそり察しましょう。
「萌実ちゃんどうですか? 何か棺桶に入れてほしいものありますか?」
「えー、何だろう。でも食べものは腐っちゃうからー・・・。モフモフに包まれたいので、ぬいぐるみとか、後はモフモフな生きもの」
「モフモフの生きもの。めめめとかですか? めめめ入れておきましょうか。あの子、羊ですから」
話題はバーチャルYouTuberたちが希望する副葬品の話に。
小峠教官、つくづくめめめ大好きだな!
実際、小峠教官のLOVEを抜きにしても、もこ田めめめ最大の強みはこういうところなんでしょうけどね。キャラクターがはっきりしているので覚えてもらいやすい。イジってもらいやすい。全裸に獅子舞姿という見た目のインパクトだけでネタを見たことがない視聴者にすら何となく認知されていた某焼肉屋芸人みたいなものです。
トピックex:先生に聞いてみよう!
「食べる場合、オススメの食べかたを教えてほしい!」
渡邉先生は半ばポジショントークをしているので頑なに補足しようとしませんが、パクチーは本来ムシャムシャ食べるようなものではありません。本場タイでもパクチーはパセリのような彩りとして添えるだけ、あるいは葱のように少量を薬味として食べる程度のものです。
料理に山盛り載せたり、サラダにして食べたりしているのは日本くらいのもの。あとはせいぜい中国の一部地域で野菜扱いになっているくらいです。
まあ、多量に食べたところで害があるわけじゃないので別にいいんですが。
パクチーがニガテな人でも大量に食べることができる料理法として、チヂミとお好み焼き、それからいなり寿司が紹介されました。このやたらフォトジェニックなレシピはパクチーアカデミー協会の会報で詳しく紹介されているようです。
パクチーのニオイ成分は揮発性なので、加熱すれば無理なく食べられるという寸法です。
ちなみにネット上では現在パクチーがものすごいスーパーフードであるかのように、その栄養成分の素晴らしさをさかんに喧伝されまくっているわけですが、その内訳を詳しく見てみると、主だったところはビタミンCやA、それから葉酸などとなっています。加熱すると損なわれる成分ですね。
ですがご安心を。そもそもパクチーに含まれるそれら主要栄養成分の量は、どれもこれもホウレンソウに負けています。栄養が目当てならパクチーじゃなくてホウレンソウを食っとけ。もしかしたら今後渡邉先生がパクチーだけに含まれる革新的な栄養成分を発見してくれるかもしれませんが、少なくとも今のところはホウレンソウ食っとけとしか言いようがありません。
パクチーはあくまでハーブであり、スパイスであり、すなわち嗜好品です。
まあ、おいしく食べるのが一番ですね。
「とにかく食えってことですよね。とやかく言わずにさ、食えよ、パクチー」
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