トロピカル~ジュ!プリキュア 第35話感想 逃げてもいいし、もう一度がんばってもいいよ。

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どうしよう・・・。私、また失敗しちゃうかも・・・。

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「わくわくハロウィン! 負けるな、まなつ!」

活躍したひと

まなつ

 やる気全開トロピカ娘。いつも先陣切って活躍している印象があるが、普段なら周りに何か忠告されたら素直に耳を傾けるタイプ。今回は時間的余裕がなかったため強行して大失敗、そのままドツボにはまってしまった。

トロピカってたもの

ハロウィン

 日本ほどではないが、世界的にも徐々に認知度が上がってきているらしいアメリカのイベント。だいたいどこの国でも大っぴらにコスプレできる日くらいのゆるっとした認識らしい。そんなわけで元々何のためのお祭りだったのかはマジで気にしなくていい。
 起源である北欧では特産のカブでジャック・オー・ランタンをつくっていたくらいだから、あおぞら市でパイナップルを使うのもそれほどおかしなことではないはず。

友達の意見

 いうまでもなくとても大事なもの。ただ、ヘコんでいるときにはときどき劇薬。自分に自信があるときとそうじゃないときでは重みが違って聞こえるため、優柔不断に陥ってかえって身動きが取れなくなることもある。周りの意見を聞くときは「何が大事かは自分で決める!」の精神も同じくらい大切。

うまくいかなかったこと

 1回目のヤラネーダ出現の際にまなつが対応を大きく間違ってしまい、自信を失ってしまったことで、2回目のときに萎縮して何もできなくなってしまった。

やりきれたワケ

 ローラたちの繰り返しの呼びかけによってなんとか勇気を絞り出し、失敗を取り戻す活躍ができたことで自信を取り戻した。

 大学生当時、教育実習に行ってまず感じたことが、とにかく生徒みんな失敗を嫌がって積極的に授業参加してくれないということでした。
 本当に全然挙手してくれないんですよね。教師からするとすごくやりにくい。どうにか手を挙げさせたくて簡単な質問をしてみるものの、どこのクラスでも1人か2人くらいだけは積極的な生徒がいるものなので、みんなその子任せでどっちみち手を挙げてくれません。
 そのくせこっちから指名してあげると大抵はちゃんと正しい答えを言ってくれるんです。ものっすごい自信なさそうな声色なんですけど。
 なかには指名してもなお「わかりません」の一言だけで回答したがらない子も少なからずいました。あとでノートをチェックすると明らかに授業内容を理解しているはずなんですけども。
 というか、教師だって授業についてけてない子に難しい質問なんか最初からぶつけません。基本的には「この質問ならこの子は正解できるだろう」って当たりをつけたうえで授業設計するものです。生徒に恥をかかせて萎縮させても教師が得することは何ひとつないわけですから。大学でもそういうふうに指導されていました。

 今話はまなつが失敗を経験するお話です。失敗というのは恐ろしいものです。ただ成功したとき得られていたはずの結果が手に入らないというだけでなく、恥ずかしい思いもするし、周りからの信用も損なってしまいます。友達から変な目で見られてしまうのは誰だってイヤです。できることなら失敗なんて人生で一度たりとも経験したくないものです。
 けれど、現実には確実に成功するとは言いきれない難しい問題に挑むべき瞬間が訪れるもの。たくさん、毎日のように、やってくるものです。そういうときに縮こまって、挑戦することそのものを諦めてしまったとき、何が起こるか。
 まあ、恥はかかないで済むかもしれませんけどね。それ以外で失うものは、失敗した場合と何も変わらないわけですよ。

アイタタタ・・・

 「どうしよう。私がやる気パワーカムバックを――」
 「なんで私を待ってくれなかったのよ」
 「だって。早くやっつけないとメチャクチャにされちゃいそうだったから」
 「やる気パワーカムバックは私しかできないの!」
 「ご、ごめん・・・」

 一応、まなつたちのプリキュアとしての使命はやる気パワーを取り戻すことにあります。モノを守るのはその次に優先されるべきことであって、今回まなつがやらかしたことはその優先順位を履き違えてしまったこと、というふうにも見ることができるでしょう。別に誰かの住居や公共物じゃないイベント用のハリボテ、しかもまなつが個人的に楽しみにしていたイベントなので、なおさら私情で判断を誤ってしまったんだという罪の意識がチクチクしてしまいます。

 奪われたやる気パワーは何かきっかけがあれば自然回復可能でもあるようですが、まなつみたいな子ならともかく、普通の人はそうそうすぐには回復しないというのもわかります。取り返しがつかない、というほどではないでしょうが、被害甚大。
 過去には「力がある者にも責任があるのである。皆を守る責任が」(『スタートゥインクルプリキュア』第31話)そういうふうに責任論をぶつ人もいました。今回の件はまなつが失敗しなければ起きなかった問題です。自分以外にも影響が大きい事業仕事に携わっていると、こういうとき自分がしてしまったことの重みに押しつぶされそうになってしまいます。

 「このままじゃハロウィンパーティの会場が! 早くやっつけなきゃ! ・・・わーっ!! 魔法使いの家が壊されちゃう! あ、そうだ! こうなったら私が――!」

 実際のところ、まなつの判断にそこまでの大きな過失があったでしょうか?
 ローラにしかやる気パワーカムバックができないなんてこと、あの場に居合わせたみんな知りませんでした。前例のないことだから慎重になるべきだという意見は出ましたが、確実に失敗するとわかっていたわけでもありませんでした。事は一刻を争う事態でした。ハロウィンパーティを楽しみにしていたのはまなつだけではありません。会場が壊されたら壊されたで、きっとガッカリした人はたくさんいたでしょう。
 あのときのまなつには、前例のないことであっても挑戦すべき価値があるように思えていました。だから勇気を出して挑戦して、結果、判断が間違っていたことを後から知らされることになりました。

 まなつじゃなくとも、きっと彼女と同じ立場なら同じ選択をしただろう人はたくさんいることでしょう。
 だいたい、まなつみたいな普通の中学生がこんな重い重責を負わされていること自体がおかしいんです。こういうのは本来、もっと大人で、もっと責任ある立場の人が果たすべき役割です。プリキュアには国連事務総長や総理大臣あたりが変身するべきです。

 ――なんて言い訳は意味を持ちません。

 まなつは自分の意志でプリキュアをやっています。やる気パワーが戻らないときどうなってしまうのかも理解していました。そのうえで、今回、自分でリスクある選択を行いました。

 「ど、どうしよう・・・」

 たとえ私がどんなに御託を並べてみたところで、まなつ自身が責任を感じているなら、その責任はまなつのものです。
 これが第三者から執拗に責め立てられているといった場面であれば私はその理不尽さに怒り、まなつを庇うでしょうが、今回はそうじゃありません。今、責任を負うべき立場だと感じているのはまなつ自身です。
 辛くても、痛くても、泣きそうになっても、だったらその責任を果たすべきだったのはまなつ以外の誰でもありません。これはまなつが起こした失態で、まなつが招いた惨状です。たとえその両肩に載せきれない重責、自分の力では挽回することが不可能な絶望的債務だったとしても。

 「――やる気だ! やる気だよ! ――やる気があれば! ――一緒にがんばろうよ!!」

 必死に祈ります。勝算のない抵抗を続けます。
 人事を尽くして天命を待つ。もはやそれしかできません。
 コメディタッチに描かれてはいますが、自分がまなつの立場だったらと思うと胃がキュンときます。社会人視聴者には特にお辛い。全然笑いごとに見えない。

 「みんなの言うとおりだよね・・・。私、焦っちゃって。――もう! バカバカバカ! 私のバカー!!」

 さっきから脂汗が止まることのないまなつの嘆きが、たった今までまなつを責めていたはずのローラからも言葉を失わせます。

 「――ううん。それだけじゃない。これまでうまくいってたのは、みんながいつも助けてくれたから。なのにみんなの意見を聞かなかったから・・・。私ってなんて、なんて、おバカさんー!!」

 この責任はまなつのものです。
 他の人は反省を促したり助言したりといったことくらいはしてあげられますが、まなつが感じている重責を一緒に負ってあげることだけは、どうしたってしてあげられません。

退路はある

 「どうしよう・・・。私、また失敗しちゃうかも・・・」

 まなつらしからぬ弱音ですが、ある意味ではとてもまなつらしい。

 まなつはこれで意外と民主的なリーダーです。どんどん新しいことを提案して、ぐいぐいみんなを引っぱっていきますが、同時に何か意見があればしっかり聞いて、みんなの議論を促そうとする子でもあります。これまでずっとそういうふうにしてトロピカる部を運営してきました。
 「これまでうまくいってたのはみんながいつも助けてくれたから」「今回失敗しちゃったのはみんなの意見を聞かなかったから」 そのとおりです。いつものまなつならあすかたちの言葉をもっと真剣に受け止めていたはずでした。いつもみたいにローラの到着を待って、ローラに任せるべきことを任せていたら、こんなことにはなっていませんでした。
 おバカさん。今日のまなつは全然まなつらしくありませんでした。気持ちはわかるけれども。

 「しっかりしなさい! 前しか見てないのがまなつの取り柄じゃなかったの!?」
 「でも私、それで失敗して、みんなが・・・」

 さて、ここからまなつはどうするべきでしょうか?

 私だったら2つの可能性を思いつきます。
 たぶん、まなつも気付いているんだと思います。だからこそ立ち直れない。いつもの調子に戻れない。

 「このまま何もしないつもり!? 今、一番大事なことは!?」

 そう。何もしない。
 この状況からまなつにできることなんてそう多くはありません。それでも立ち上がるか、もしくは、このまま全部投げ出してしまうかです。

 普段のまなつを知っているローラからすれば選択肢はひとつきりしかないように思えるでしょう。だったらウダウダ言ってないで早く立ち直るべきだと。
 でも違うんです。
 一見追い詰められてしまっているようで、ちゃんと退路はあります。大抵の場合、「逃げる」という選択肢は最後の最後まで残されています。
 その“もうひとつの可能性”が脳裏をちらつくから、こういうとき、人はなかなか立ち直ることができないんです。

 今回、『トロピカル~ジュ!プリキュア』の物語においてとても大事なことが語られています。この視点抜きに「やる気だ、やる気だ」と叫んでも説得力がありません。

 諦めるのだってひとつの道です。
 言い訳したっていい。
 もう何もしたくないってうつむくのも。
 やりたくないって。
 せめて後まわしにしたいって。

 その選択はきっと、許されます。

 だって、この責任を負うべきなのは今回たったひとり。まなつだけなんですから。
 まなつがそれでいいと思うのであれば、それでいいんです。
 他の誰にもこれを否定する権利はありません。

 「『大事なこと』・・・。あっ」

 言われましたよね。

 「しつこいやつだな。自分と人魚のどっちが大事なんだよ。自分だろ」(第1話)

 そしてあなたは言い返しましたよね。

 「何が大事かは自分で決める! 今大事なのは! 大事なのは――!!」(第1話)

 逃げるという選択すらも、きっと許されます。
 だってあなたは、他人が勝手に選択を決めつけるということに対して、はっきり否定する意志を示したのですから。
 あなたが責任から逃げるという選択をするのなら、どうぞ逃げればいい。
 いくらでも「やらない」って言って引きこもって、いくらでも後まわしにしたらいい。
 責任を持っているのはあなたなんだから、あなたにはそういう権利だってある。

 「今――。それは、みんなのハロウィンを守ること!」

 でも、もしその選択が自分らしくないと思えるのなら、あなたはもう逃げられない。

 負けるな、まなつ!

ふたつの道

 「こうなったら――。こんな攻撃全部はね返してやる!」
 「待て、サマー!」
 「ちゃんと考えないとやられちゃうわ!」
 「えっ・・・。また、私、失敗を・・・?」

 本来のまなつはよく周りの意見を聞く子です。
 トロピカる部はみんなたいがい個性的なメンバーばかり揃っていて、視点も発想も様々。生徒会長選挙のマニフェストをつくるのに「海のなかで学校生活をしたい」だの「オシャレを許可する校則に変えたい」だの「図書館の本を増やしたい」だの、まるで統一感のない提案をぽこぽこ出してくる子たちです。
 そんななかでトロピカる部がちゃんと毎回ひとつのチームにまとまってイベントを成功させてきたのは、まぎれもなくまなつのリーダーシップのおかげ。

 迷うでしょう?
 周りの意見を聞くと。自分の考えを否定されたり、全然違うことを言われたりすると。
 これまでのまなつはそれでもうまくやれていました。みんなの意見を聞いたうえで、それはそれとしてまなつにもしっかりやりたいことがあったからです。

 「待った、待った。私、人に教えられるほど上手くないんだって」
 「あすか先輩。トロピカる部は“今、一番大事なこと”をやる部でしょ。だから私、お弁当をつくってお母さんを助けたいの! お願い、あすか先輩!」
(第8話)

 どうしてもやりたいことがあれば、まなつからもプッシュして、精一杯頼み込むようなこともしてきたからです。

 周りの意見を聞くのは大事なことです。だけど、それが正しく力を発揮するのは自分に明確な意志がある場合において。少しくらい周りに何か言われたからってすぐに自分の意見を丸ごと撤回してしまうような子は話しあいに向きません。
 だから今回、自分への信頼が揺らいだまなつは簡単に迷ってしまいます。必要以上に振りまわされてしまいます。せっかく立ち直ったのにまた動けなくなってしまいます。
 逆を言うと、普段のまなつは本当にすごいことをやれていたんです。何気なく。当たり前のように。

 「サマー、見て!」
 「うん!」
 「このリングを――」
 「切れるかも!」
 「サマー! ヤラネーダをこっちに誘導して!」

 「みんなの言うとおり、下がりつつ誘導するか、それともこのまままっすぐ進むか。ふたつにひとつ! ここは・・・!」

 夏海まなつとはつまりどういう子だったか。
 意志の強い子です。自分で決めたことへの責任から逃げない程度には。
 そして、柔軟な子でもあります。多様な意見を聞いて、まとめて、みんなが喜ぶ方向へ引っぱっていけるくらいに。

 ここで惑わずきちんと選択できるまっすぐさがまなつらしさ。

 まなつには得意の魔法があります。メイクの魔法。お母さんからもらった口紅を塗ると、なんだか勇気が湧いてくる。
 今日は失敗の日でした。ものすごくヘコんで、みんなに申し訳なくて、自分のことが信じられなくもなりました。
 けれどそんなのまなつらしくありません。こうして彼女はまた、今日も精一杯トロピカっていきます。

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